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第38話1-2

 

 後のことをガレット達に任せて、ナタクとアキナはウィルの店がある中央大通りまで二人して戻ってきた。ちなみに、破れて血の付いてしまったシャツなのだが、どうやらエンチャントの効果で直せるギリギリの範疇だったらしく、気が付いた時には切れた跡や血のりも綺麗さっぱり消えていた。自分で施しといてなんだが、本当に規格外の性能の服である。


 まだ日没までは時間があるため、街の外へと出かけている冒険者達はともかく、木工ギルドの親方が寄越してくれた職人達は店へ来てくれているはずなので、戻って簡単な打ち合わせを済ませてしまおうと思う。


 噴水近くを歩いていると、最近よく見慣れた小柄で銀髪の少女が店の前で可愛らしい瞳を大きく広げて、辺りを警戒している姿が見て取れた。どうやら、アテナはもう街に帰って指名依頼を受けてきてくれたようである。



「アテナさんこんにちは。さっそく来てくれたんですね、警備ご苦労様です」


「・・・・あっ、ナタクにアッキーだ。うちのにゃんこに聞いて急いで来たよ。リリィ達が襲われたんだって?」


「そうなんですよ、酷い話ですよね!」


「詳しい話は、みんな揃ってからお話しますね。ゴッツさん達はまだ来ていませんか?」


「・・・・今日は、ソロで狩りをしてたから私は会ってないよ?てか、あの内容だったら宿屋で直接依頼してくれれば格安で請けたのに。しかも割り増し料金まで付けてくれてたし、ナタクって本当はかなりのお金持ち?」


「色々稼がせてはもらってますけど、今の俺なんてまだまだですよ」


「あははっ、あれだけ荒稼ぎしていてまだまだって・・・・・先生、冗談ですよね?」


「昔は今の何十倍も稼いでましたからね。そんなことよりアテナさん、木工ギルドから職人さん達って来ましたか?」


「何十倍って、えぇ・・・・」


「・・・・木工ギルドのドワーフなら、店の中でリリィのパパとお話してるよ。あの人もナタクが呼んだの?」


「ちょっと用事を済ませる前に頼んでおいたんですよ。それでは中に入って簡単な打ち合わせをしてきますね。ゴッツさん達が来てくれたら、護衛と警備の打ち合わせもしますので、その時は声をかけてください」


「・・・・わかった。それじゃ、それまで周辺警戒を続行してるね」



 そう言って、アテナはまた警戒任務に戻っていった。というか、警察官の敬礼のようなポーズで周辺を監視するその姿は、元々の年齢よりもかなり幼く見えることもあり、なにやら愛嬌があってとても微笑ましく見えていた。


 というか、道を行き交う人々や自分の隣にいたアキナまでも同じように感じたのか、中には足を止めてまで彼女を見守る人が現れているように見えるのは、果たして気のせいであろうか?


 ただ、これだけ注目されていれば正面きって悪さを仕掛けることなんて出来ないだろうから、自分は先に中に入って打ち合わせを済ませてしまおう。それに幼く見えるだけであって、彼女も立派な実力者であるのだから、任せておいて平気なはずだ。



 店内に入ると、先ほど店を出た時よりも部屋が綺麗に片づけられており、木工職人のドワーフと見られる男性とウィルが空いているテーブルでお茶を飲みながら、なにやら話をしていた。



 (というか、あの方は親方の弟さんじゃないですか!親方も随分腕のいい職人さんを寄越してくれましたね)



「ゾラムさんが来てくれたんですね、お疲れ様です」


「おぉ、漸く来たか。待ちくたびれたぞ!」


「ナタクさんお帰りなさい。職人さんを手配してくれてありがとうございました」


「いえいえ。それで、ゾラムさんの見立てだと修理にはどれくらい掛かりそうでしたか?」


「ドア枠まで傷んでおったからそこも張り替える必要があるのと、扉自体は直すより新しい物に交換した方が早くて安く済みそうだな。それと壊れたテーブルは直せるが、イスは作った方がいいと思うぞ。全部でこれくらい掛かりそうだがどうする?これで良ければ明日にでも工事を開始して、二日ぐらいで直してやるよ」


「なるほど・・・って、ゾラムさんがやってくれるなら安過ぎますよ。追加でこれだけ払うので、代わりに一日で直すとかどうですか?」


「ったく、お前って奴は職人を見て使うのがほんと上手いな。解った、それで請けてやるよ!」


「よかった、交渉成立ですね」


「あのぉ、ナタクさん。今うちにはそこまで出せる余裕が・・・・」


「あぁ、心配しなくて大丈夫ですよ。立て替えておきます。それに、請求は向こうのオーナーに突きつけるつもりですので、気にしないでください」


「しかし。はたして、あいつが素直に払うかどうか・・・・」


「そちらもちゃんと考えているので、心配なさらず。それに、これからウィルさんには二度とお金で困らないくらい稼いでもらう予定なので、覚悟していてくださいね」


「あはは・・・・本当に凄い人がオーナーになってくれたんですね。私にできることであれば全力で働かせてもらいますので、どうぞよろしくお願いします」


「しっかし、お前は何でまたそんなに急ぎの仕事を出したんだ?まぁ、請け負ったからにはきっちりやらせてもらうが、お前の腕があればこれくらい自分で直せるだろ?」


「明日はちょっと大事な用事があって、色々忙しいんですよ。それにウィルさんにもお願いがあるのですが、明日の夜に数人ここにお客様を招待したいので、その方達に料理を作ってもらえませんか?」


「それは構いませんが、何を作りましょうか?」


「その辺については、後で詳しくお話させてもらいますね。どうしても使って欲しい食材があるので。それと、今日の夜にアーネストさんともう一人にも声を掛けているので、一緒に料理研究をしませんか?」


「出かける前に言っていたやつですね。こちらこそ、よろしくお願いします」


「よかった。事前にちゃんと確認を取っていなかったので、断られたらどうしようかと思ってヒヤヒヤしていましたよ。それとですね、調理ギルドにも先ほど話を付けてきましたので、後でそちらも詳しくお伝えしますね。犯人も一応判明して確保はできていますので」


「っえ、もう犯人捕まえたんですか!?」


「はい、ただ込み入った話になるので、詳しくはまた後で。そんな訳で、ゾラムさん明日の夜までに修理お願いしますね」


「どんな訳かはしらねぇが、まぁ夜までなら余裕で終わらしといてやるよ。任せておけ!」


「ありがとうございます、ゾラムさんが請け負ってくれて助かりました」


「いいってことよ。それにこっちもお前のおかげで、職人連中を無駄に遊ばせておかなくて済んでる分、だいぶ助かっているかんな!がっはは!!」



「そんじゃな!」と言ってゾラムは笑いながら木工ギルドへ帰っていった。やはりあそこのギルドには、職人気質で気のいい人物がとても多いようだ。



「ナタクさん、あの人って木工ギルドのゾラム・ガイスラーさんですよね?」


「えぇ、そうです。口は少し悪いですが、凄く良い仕事をなさる職人さんですね。親方もいい人を寄越してくれて助かりました。他の職人さんだったら一日で直すのはかなり難しいと思いますからね」


「あ、あははは・・・・


(私の記憶に間違いがなければ、木工ギルドナンバー2のとても有名な職人さんなんですが、あのお方!そんな人とあんなに親しげって、ナタクさんはいったい何者なんですか!?)」



 さてと、修理の件と今日の夜の勉強会の方も何とかなりそうで助かりましたね。後はゴッツさん達が来るまで、先ほど起こった事件の経緯をウィルさんに伝えながら待つとしますか。それにジョンさんが来るまでにある程度、ギルドへの誤解も解いておかなくてはいけませんし。


 それにしても、何でウィルさんはゾラムさんの事を知っていたんですかね?




警戒中であります!!(*゜∇゜)ゞ


「「何あれ可愛い!」」( ̄□ ̄;)!!


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