表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/194

第10話  転生2日目1-6

 

 ガレットが部屋を出た後に、すぐに自分達も実験室に移動することにした。


 どうやら自分の実験室になる場所は、新設された隣の研究棟になるらしく、しばらくアメリアと話しながら進むことになった。



「それでは、これからキミの実験室になる部屋に案内しようか。ゴールドクラスの錬金術師君!」


「やめてくださいって、それより良かったんですか?いきなり現れた俺を、ゴールドクラスに推薦なんかしてしまって」


「う~ん。他のギルドはどうなっているのか知らないが、うちは完全実力主義だからね。実力のあるものは評価されるし、逆は淘汰されていく。厳しくはあるけど私は気に入っているよ。


 でないと、私みたいな小娘がゴールドクラスにはいられないからね。それにもし、何かいちゃもん付けてきたら、実力でねじ伏せてしまえばいいのさ。特に錬金術は研究が停滞してしまったら終わりだからね、先の見えない者に邪魔をされている時間は、我々研究者にはないのだよ。


 もしそんな暇な時間があるんだったら、一つでも多く技術を磨いていた方が合理的というものだ。まぁ、それが分からないクソ爺達も王都には確かに存在するがね。少なくてもここ“イグオール錬金ギルド”にはそんな暇人は存在しないさ」


「そうですか、確かに考えることをやめた研究者はただの人になってしまいますしね」


「人ならまだマシさ。たまにモンスターみたいな奴もいるからね。仮にもギルドマスターが実力を認めてゴールドクラスにしたんだ、誇りに思って邁進すればいいのさ。


 っと、通り過ぎるところだった。ここがキミの実験室になる部屋だね。一階だが、なかなか落ち着いていていい場所だろ。私も密かに狙っていたんだが、今回はキミに譲るとしよう」



 案内された実験室には真新しい実験道具や、特殊な素材や薬剤をしまっておける保管庫などが置かれていた。隣には仮眠室と倉庫まで付いている。また、新築特有の匂いもしているのでここが作られてからそれほど時間が経っていないことが伺えた。



「どうだい、いい場所だろ?今月完成したばかりの建物で、機材も新品に交換したばかりなのだよ。まだ、誰がどの部屋を使うか決まっていないから、キミが一番乗りになるね。ちなみに、隣の実験室は私になる予定だから気楽に訪れて来てくれたまえ」


「あれ?でもアメリアさんは先ほどの部屋が、ご自分の実験室ではなかったんですか?」


「あぁ、それはね。もともと来週から向こうの実験室は、ギルドの運営関係に使われるようになるから私達研究者はお引越しする予定だったのさ。


 こちらの方が新しくて静かだから、落ち着いて研究ができるしね。それと私は今日、自分の実験室の扉が何者かに粉砕されてしまったからね。一足先にというわけさ。丁度小間使い候補が二人ほど確保できたからね。今日の午後を使って引っ越す予定さ」



 (あぁ、お仕置きってこれのことだったのかと、知らなくてもよかった事実が明らかとなったな)



「それでは部屋の使い方について説明するね。とは言っても、キミはまだギルドカードが届いてないから、隣の私の実験室で説明しよう。付いてきてくれたまえ」



 いったん自分の実験室に荷物を置いてからアメリアの後ろに付いて行く。といっても部屋を出てすぐ隣が彼女の部屋だったので、そこまで時間は掛かりはしないのだが。



「まず、このギルドカードを扉の横にあるこの魔導具に当てて登録をする。よし、これでこの部屋の所有権が私のものとなった。


 次からはこのカードを当てて鍵を解除しながら室内に入るようになるってわけさ。ちなみに、登録者以外を中に入れる場合は、部屋の所有者の許可がないと開かない仕組みになっているらしいよ。たしか室内にいる時に『アンロック』って言えば鍵が開くはずだ。


 これは研究成果や高価な素材の紛失を防ぐ目的だね。まぁ、鍵のすごいやつと思ってくれればいいよ。それと助手に合鍵を持たせる場合は、部屋の所有者と一緒にギルドカードを当てて登録すれば可能だよ。


 それと中の人間に話しかける場合はこの魔導具に手をかざして、話しかければ聞こえるようになるんだってさ。この魔導具、少し前に遺跡から発見された物を、解析して使えるようにしたらしいんだけど、便利なものを古代人達は使っていたんだね。しかもこれ入退室の記録まで付いてるんだってさ。


 それとマスターキーは、ギルドマスターが管理してるから。もしギルドカード無くしたりしたらちゃんと報告するように」


「分かりました。しかし随分と良い魔導具が配備されてますね。これだけでもかなりお金がかかってそうですけど」


「あぁ、それは魔導具の解析を担当して使えるようにしたのが、うちのギルドマスターだからだよ。あの人は魔導具の解析やそれを使えるようにするのが専門だからね。その技術を自分のギルドに転用したってわけ。実はかなり有名な人なんだよ、自慢のばあちゃんさ!」



 『成程、それで各部屋にこんな凄い魔導具が設置されているのか』と感心しながら室内に置いてある錬金道具の話を一通り受けた後、自分の実験室へ帰ることにした。



「それと、キミのギルドカードは後でミーシャに謝らせついでに届けさせるから受け取ってよ。たぶん夕方近くになると思うから、それまでは存分に錬成作業に励んでくれたまえ。ちなみに、私はこれからちょっと遅めの昼食ついでに出かけてくるが、君も一緒に行くかい?」


「大変魅力的ですが、ちょっと実験室の設備を早く触ってみたいので遠慮しますね。昼食はパンとパリムの実がありますので、今日はそれで済ませてしまいます」


「それは残念、デートは振られてしまったか。では、私は行くとするよ。引越しもあるからそれほど長く外には出れないしね。それではまたねぇ」


「はい、色々ありがとうございました」



 部屋を後にしようとしたら「あぁ、それとこれは昇格祝いだ使ってくれ」と小さめの魔石が結構入った革袋を手渡された。そういえば魔石は確保していなかったので、有り難く頂戴することにする。再度お礼を言ってから、自分の実験室へと戻って来た。



 戻ってさっそく錬成を始めるための準備に取り掛かる。備品のチェックをしてみると錬成陣を描く道具やポーションを詰める空の薬瓶なども揃っているので、やっと背負い籠やインベントリに大量に保管されている素材達を練成してあげることができそうである。



 先ほどこちらの棟に移動する際に、販売エリアの横を通り抜けたので、軽くラインナップを確認しておいたのだが、等級外~等級4のポーションが殆どだったので、たぶんこの辺りが売れ筋なのであろう。等級4以上のポーションは棚には見えなかったので、たぶん奥に保管されていそうであった。



 値段は


 等級外が 約大銅貨3~8枚

 等級5が 約銀貨1~3枚

 等級4が 約銀貨7枚~金貨1枚



 これくらいの価格で売られていた。まだこちらの貨幣価値が分からないのでなんとも言えないが、どうやら



 銅貨  10枚で大銅貨1枚

 大銅貨 10枚で銀貨1枚

 銀貨  10枚で金貨1枚



 になるようだ。この辺は後で誰かに聞いて確認してみた方が良いかもしれない。貨幣を使ってる感じだと銅貨1枚が100円くらいだとは思うのだが・・・・。後、使ったことはないが値段標識を見る限り、銅貨の下に鉄貨もあるみたいである。



「ただ、まだ転生者であることは隠しておきたいんですよね。これからどんなトラブルに巻き込まれるかわからないし、今はまだ、フィジカルを“上げる気がない”から下手したら死ぬ可能性だってあるし、できるだけに慎重にいきたいかな。まぁ製造業では自重する気はありませんが」



 取り敢えず、“サブ職業”の“錬金術師”のレベル上げとスキルを覚える事を目標にガンガン錬成をしていくことにする。今回は数をこなしたいから等級外から作っていくつもりだが、せっかくなので全て高品質品を狙っていくことにした。



 こういう時、狙って高品質を作れる“マニュアル錬成”は非常に便利だ。しかも、高品質で作製できるとボーナス経験値が×1.5~×1.7になるので非常に旨みもある。


 まずは等級外の『治癒のポーション』『スタミナポーション』『毒消しのポーション』『麻痺耐性ポーション』を作っていくことにする。材料からいって各30本くらいは作れそうなので机の上に材料を出して準備をしていく。


 これが終わる頃には等級5クラスを普通に作れるくらいには上がっているはずなので、そこまでにいくつかほしいスキルを覚えれば御の字である。


 まずは各ポーション用の錬成陣を用意していく。さすがに等級外のポーションの錬成陣だけあって、そこまで複雑なものではない。ものの数分で描き終えると、早速材料と小さめな魔石を陣の上に並べて錬成を開始する。



 途中で品を変えながら順調に錬成を繰り返しているといくつかのスキルを覚えることができた。


 スキル

 『抽出』Lv1

 対象から任意の物質を取り出す。


 『添加』Lv1

 対象に任意の物質を注入する。


 『撹拌』Lv1

 対象の内の均一化を図る。



 特に『抽出』のスキルは非常に便利なので早い段階で覚えることができて本当によかった。このスキルは他の“サブ職業”にも大活躍するのでレベル上げをかねてどんどん使って上げていく。できれば後は『活性化』のスキルを覚えたいのだが、これは動物系の材料を使わないと覚えることができないので、今日覚えることは難しいであろう。


 最後の120本目の錬成を終えて一息つく。そういえば昼食を食べ損ねていたことを思い出し、マルパンを一つ齧りながら次は何を作ろうかと考えていると、部屋の扉の方からチャイムが鳴り響いた。



 どうやら、まだ登録が完了していないので会話はできないようだ。丁度休憩中だし、あまり待たせてもアレなので足早にドアへと近づき扉を開けると、そこには今朝受付で対応してくれた可愛らしい少女が申し訳なさそうな顔で立っていた。


 あの時は注意深く観察はしていなかったためそこまで記憶に残ってはいなかったが、これだけ間近で見ると非常に顔立ちが整っていて可愛らしい。


 薄い桃色の髪をセミロングに流し、片側を軽く編みこんでいる。小さな顔立ちにもかかわらず零れ落ちそうな大きな眼は、赤い瞳を涙で潤ませて今にも泣き出してしまいそうな顔をしていた。


 背丈はナタクの胸辺りまでしかなく、ギルド職員の制服に包まれた身体つきは年相応以上の発育をしているが、どうしても先ほどまで近くで特大果実を目の当りにしていたせいか、小さく感じてしまうのが申し訳ない。



 (メロンじゃなくてりんごかな?)



 そんなアホな事を考えていたせいで間が空いてしまい、慌てて声をかけようとしたら少女に勢いよく頭を下げて謝られてしまった。



「この度は私の不手際でご迷惑をお掛けして、大変申し訳ございませんでした。ギルドの受付として職務を全うせずに、誤った情報を与えてしまったこと、深く反省しております。また、ナタク様には受ける必要のない試験を薦めてしまい、そのために貴重なお時間を消費させてしまって、本当に申し訳ありませんでした」



 (う~ん、なんか同世代の女性を泣かせがら謝らせてる男の図ってやばくないかな?なんかものすごく謝られてるけど、この子そんなに悪いことしてないよね?あっ、後ろでアメリアさんが必死に笑いを堪えてるのが、すご~く気になる)



「あの、まったく怒ってないですしテストも楽しかったので問題ありませんよ。それに、おかげで腕を認められてゴールドクラスにもなれましたし、さらに自分の実験室まで貰えたので、むしろ感謝したいくらいです。


 あと、後ろでアメリアさん笑い堪えてるので、何吹き込まれたか知りませんが、きっといたずらだと思いますよ?」



 後ろのアメリアの状況を教えてあげると、少女は勢いよく顔を上げて振り返ったところで、アメリアの我慢の限界を迎えたのか、大声で笑い始めた。



「あっははははは、いや~すごい謝罪の応酬だったね。すばらしいお辞儀の角度だったし、見てて必死なのが伝わる模範的な謝罪だったと思うよ。ぷぷぷ♪」


「あ~め~り~あ~さん!!“また”騙しましたね!!!余計な時間を使わされてものすごい怒っていて、『錬金ギルドを訴えてやる』って言ってた・・・て言・・て私がど・・け不安になっ・・・・ふぇぇぇんよかったよぉぅぅ」


「いやぁ、ごめんごめん。私も、つい“ちゃっかり”誤った情報を与えてしまったね!」


「ふぇぇぇん、今“ちゃっかり”って言った!!!またからかわれた!!あめりあさんのばぁかぁぁ!!!」


「ほらほら、美少女を優しく慰めてあげる絶好のチャンスだよ、ナイト君!“故意”のビックチャンスってやつさ!」


「この状況で俺にどうしろと!ってか今“恋”の字、絶対違いましたよね!わざとだよね!!」



 その後30分程ひと悶着あったのだが、正直あまり思い出したくない。とにかくアメリアを敵に回すと大変恐ろしいことがよく分かる出来事であった。

アメリアさ~ん!ヾ(。>﹏<。)ノ


あっはっはは~♪@=ヽ(*゜∀゜)ノ


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ