夢の始まり
ふわっと頬を心地良い風を感じ意識が覚醒した
(ここは…?)
今の現状が理解出来ずパニックになりそうになる
何故なら辺りを見渡すと草原が広がっている
眼下には見慣れない町並みが
遠くには巨大な蜘蛛が動いている
「なんだこれは…?」
(漫画とかで見たような異世界転生か?
いや、でもそんな事は現実で起こるはずがない
なんだこのファンタジーな世界)
考えてると蜘蛛がこちらに向かって走り出していた
ワシャワシャワシャワシャ
「あっ」
間抜けな声を出している時にはもう遅かった
蜘蛛が直ぐ近くをで現実では有り得ない鎌を掲げて
攻撃をしようとしていた
(え、俺は死ぬのか?)
この危機的状況を打破する術はない
ある訳が無かった
大蜘蛛の鎌が振り下ろさる瞬間
「お兄ちゃん!」
誰かが叫んだ
聞いたことがない声で
その瞬間、爆発音が聞こえた
大蜘蛛が消し飛んでいた
(何が起きたんだ?)
それを理解するより早く声の主が
抱き着いてきた
「お兄ちゃん!」
頭の中が疑問で埋め尽くされた
俺には妹なんていない
そしてなにより
「昨日の…小さい女の子か…?」
少女はむっとした表情で質問に答えた
「小さくないよ!
お兄ちゃん絶対小学生とかだと思ったでしょ!」
「違うのか?」
見た目的に小学生だと思ってしまっていたが
どうやら違うらしい
「いや、それよりもこの状況は…?」
そう質問すると少女は少し表情に影を指して答えた
「ここはね…
カンナの夢の中…なのかな?
気付いたらこの世界の中で一人ぼっちだったの」
「そして何となくわかるんだけど
現実世界のカンナはまだ目も覚ましてないの
お兄ちゃんがなんでこの世界にいるのかはわかんないけどね」
と申し訳なさそうに、でも少し嬉しそうに
にぱっと笑っている
(確にこんな世界で一人なら不安だろうな)
等と考えているとカンナが青いステッキを
クルクル回して遊び出した
「さっきの爆発は君が?」
「うん。
でも咄嗟に出てただけでやり方もわからなかった
今やってみようと思っても何も起こらないの
拾い物だからかな?」
「それとカンナのことはカンナって呼んでいいよ
いつまでも君とかだとちょっと寂しいかも」
「それはわかったとしてな
なんで俺がお兄ちゃんになってるんだ?」
呼ばれ方に疑問を感じてそう放った
返ってきた返答は現実で世界でのトラックの事故が
原因というか要因だった
「お兄ちゃんは私を助けてくれようとしたから…
だからお兄ちゃんみたいな人が私の兄だったら
いいな…なんて思ってて…
ごめんなさい…嫌なら呼び方変えるね?」
わかりやすいくらいに落ち込んで少し俯いた
カンナの綺麗な白い髪をワシャワシャと撫でて笑った
「呼び方くらい好きにしたらいい」
そう言うとカンナは笑みを浮かべて抱きついてきた
「えへへ…ありがとう」
「とりあえず陽が落ちてきているな
宿とか探し始めるか」
カンナはまた表情を変えた
(表情ころころ変わるやつだな…)
「あ、あのね!
実は…お金がありません!!」
潔くカンナが告白した
今のこの状況でお金がないって事は野宿を連想
してしまう
「ここはカンナの夢の中だろ…?
こう…念じたら出て来ないのか…?」
「そんなに都合良くなかったよ…」
そう言葉を返された瞬間
俺達のファンタジーな夢の中での野宿が決定した
陽がすっかりと落ちてしまっている
流石にカンナを野宿させる訳にはいかないと思いつつも打開策はない
とりあえず町の中を探索しようと考えた
(モンスター彷徨いてる外よりはマシだろうしな)
「カンナ、とりあえず町に行こう
ここよりは安全だろう
俺なんて丸腰だ。ここにいたら命が幾つあっても
心無いしな」
「今から最重要なのは情報とお金だ
情報と常識がなきゃ生きていけないだろうし
お金がなきゃきついだろ」
カンナは納得したように頷き一緒について来る
そして町に着いた
一言で表すならやっぱり異世界だ
建物の構築もそうだが浮いているものまである
「綺麗な場所だね…」
カンナに同意するように、そうだな…と答えた
壮観だった
広がる世界に無限の可能性すら感じる
さっきまで大蜘蛛に襲われてこの世界に対する
恐怖と不安まで募らせていたのにだ
「さて、どっから何をどうやって情報を
集めるかな…
本とかなら女神とか神が流れ的なのを
掴ませてくれるがここにはいないしな」
そう言ってちらっとカンナの方を見た
こっちの視線に気付いたカンナは何も言わない
俺の判断に委ねるみたいだ
「お兄ちゃん…」
少し不安そうな顔でこちらを覗き込んでくる
(そんな顔されるとなぁ…)
勇気を出して通り過ぎる住人に声をかけた
結果からいうとこの町で今日は泊まれそうにない
っていうのもこれまた簡単な話でお金がないからだ
お金を手に入れる方法は大まかに三つある
物と物の等価交換または金品での交換
働く
指定モンスターの討伐等だ
だがここで既全ての候補が消え去ることに気づく
等価交換はこの世界での物を持ち合わせてない俺らは交換材料がない
働くにしても、どこから来たかすらわからないやつを
雇う物好きがいない
指定モンスターの討伐は誰でも出来るが俺達には武器も何もが存在しない
唯一カンナのステッキがあるが使い方がわからない
「まぁ、あれだカンナ」
「ん?」
「今日は野宿だ…」
「えぇーーーー!」
夜の町並みにカンナの声だけが響いた
そして町のすぐ側で野宿をした