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無限なる世界  作者: 終焉の王
デフロアンド~始まりの村~編
8/18

実力(3歳)

 ゴウ達が、川に着き、数時間の時が流れていた。


「ねぇねぇ~、ゴウ~。さっきから、何やってるの~?」


「あ?釣りだ。」


「・・・釣り?」


「ん?・・ああ、そうだったな。釣りっつう(もん)が無かったな。・・・ほれ、持ってみろ。」


「えっ?う、うん。」


 ゴウに釣竿を差し出され、戸惑いながら釣竿を受け取る、アンリー。


「そのままで居ろよ。」


「うん。」



「・・・あっ!」


 (しばら)くすると、アンリーが持つ釣竿が大きくしなる。


「ゴ、ゴウッ!?どどっ、どうするのっ!?」


「落ち着け。」


 そう言うとゴウは、アンリーの後ろに回り、釣竿を握るアンリーの手の上に、自分の手を重ねる。


「ッッ!?ゴッ、ゴウッ!?・・・ッ!?」


「いいか?俺が合図したら全力で棒を引っ張れ。」


「えっ?うっ、うんっっ!!」


「・・・・今だ。引っ張れっ。」


「えいっ!!」


 ゴウの合図と同時に、アンリーは、釣竿を力の限り引っ張る。


「・・・おお、獲れた。」


「フュー。結構な大物じゃないか。」


 ゴウの言う通り、アンリーが釣り上げた魚は、三歳児が釣り上げたにしては、大きかった。


「ん?アンリー?」


 何の反応も無いアンリーに、ゴウが不思議に思い、問い掛けながら、アンリーを見る。


「・・・しまった。」


 ゴウは、アンリーの状態を見ると後悔の言葉を漏らす。

 アンリーは、ゴウに手を重ねられた事で顔を真っ赤にして、固まっていた。


「・・・羨ましい。」


 ミーセの呟きは、ゴウに聴こえ無かったが、スキル「空間把握(エリア・グラスプ)」を持つゴウは、ミーセの口の動きで、把握していた。


「はぁ・・。ん?昼か。お前等、獲った魚焼いて昼飯にするか?」


「うん!お魚食べる!」


「・・・食べる。」


「じゃ、薪取ってくるから、じっとしてろよ。」


 ゴウは、森に向かって歩き出す。


(・・・甘いな。)




「此ぐらいで良いか。」


 ゴウは、集めた薪を持ちアンリー達が居る川に向かおうとしていた。


「・・・ ャーッ」

 その時、何かの叫び声が響く。その声は、聞き間違えと言える程の小さな悲鳴だったが、ゴウは聞き逃さ無かった。


「ッ!?くそっ!!」


 小さな悲鳴を聞いたゴウは、薪を投げ捨て、川に向かって走り出した。




 ゴウが、アンリー達が居る川に着くと、アンリー達は、十四体の灰色の狼と一体の二回り程大きい狼に囲まれていた。


「グルルゥ・・。」


「・・・あぁ・・。」


(【灰狼(グレー・ウルフ)】ッッ!?・・・ハグレかっ!しかも、彼奴(あいつ)は・・・。)


名前: 種族:灰狼の長グレーウルフ・リーダー変異種(ミュータント)) LV:14

常時発動型能力(パッシブスキル)

敏捷強化(アジラティ・ブースト)LV1 統率(リードラー)LV2 嗅覚強化(シンシー・ブースト)LV2

任意発動型能力(アクティブスキル)

噛み付き(バイズ)LV1 突進(ラッシーテ)LV1

特殊固有能力スペシャル・ユニークスキル

固有能力(ユニークスキル)

・主:ゴウ・レスタント


(やはり「(リーダー)」。その上、変異種(ミュータント)か・・。)


 その時、ゴウは嗤っていた。それは、絶望の淵に立たされた自分を嘲笑する嗤いでは無く、未知の領域に巡り逢ったと言う歓喜の嗤いだった。


「・・おいっ!」


 ゴウは、【灰狼の長グレーウルフ・リーダー変異種(ミュータント))】達の注意を引くために(わざ)と大声を出す。


「ゴウ!・・あぁ・・ゴゥ!」


「・・・ゴウ!」


 ゴウの声に、川に居た者の注意が注がれる。ゴウの声を聞いた、アンリーは泣きながら、ミーセは泣きそうになりながら、ゴウの名前を呼ぶ。


「テメェ等の相手は俺だ!!掛かってきやがれ犬っころ供!」


 ゴウの言葉を理解出来ずとも、本能でバカにされていると悟った【灰狼の長グレーウルフ・リーダー変異種(ミュータント))】達は、対象をアンリー達からゴウに変え、ゴウを中心とした円形の陣形を造る。


「・・グルル。」


「グルルゥ。」


 此処(ここ)で直ぐ様襲わないのは、やはり、低級の魔物とは言え序列社会で出来ている狼ならではだろう。


「ガアアアルルルッ!!」


 その内、ゴウは大した獲物では無いと判断した【灰狼の長グレーウルフ・リーダー変異種(ミュータント))】が、攻撃の合図を挙げる。

 しかし、【灰狼の長グレーウルフ・リーダー変異種(ミュータント))】は後に後悔する。自分達は、手を出してはいけ無い相手に手を出してしまったと。


「ガアアァァッ!」


 【灰狼の長グレーウルフ・リーダー変異種(ミュータント))】の合図を受け取った【灰狼(グレーウルフ)】の1体がゴウに襲い掛かる。

 しかし、【灰狼(グレー・ウルフ)】の牙がゴウに突き刺さる事は無かった。


「『敵殺す炎の球(フレイム・ボール)』ッ!」


 何故ならば、ゴウがスキル「黒魔法(ブラック・マジック)」を発動し、魔法を展開したからだ。


「ガヤヤアアァァッ!!」


 スキル「黒魔法(ブラック・マジック)」LV1火属性系統魔法『敵殺す炎の球(フレイム・ボール)』を諸に喰らった【灰狼(グレー・ウルフ)】は、断末魔を挙げると同時に死に絶える。

 ()の魔法は「黒魔法(ブラック・マジック)」LV1で展開した魔法だった。しかし、元のスキル「黒魔法(くろまほう)」LV1火属性系統魔法『敵燃やす火の球(フャイヤー・ボール)』を改良した魔法だったので、【灰狼(グレー・ウルフ)】を一撃で殺したのだ。


「ヴォゴアアァ!?」


 ゴウが魔法を展開し仲間を一撃で殺した事実に、【灰狼の長グレーウルフ・リーダー変異種(ミュータント))】達は驚き、一瞬動きが止まる。

 その一瞬の隙を見逃す程、ゴウは甘く無かった。スキル「黒魔法(ブラック・マジック)」LV2風属性系統魔法『遮断する風の壁(ウインド・ウォール)』を応用し、ゴウ達とアンリー達の間に真空の壁を造り出し、(おの)の声に大量の魔力を乗せ、咆えた。


「ウオオオォォォッ!!」


 声に大量の魔力を乗せた事で、威圧系スキルを使用した時と同じ状態に成り、【灰狼の長グレーウルフ・リーダー変異種(ミュータント))】達は状態異常(バッドステータス)〔恐怖〕・〔竦み〕に成る。

 しかし、ゴウの攻撃は此れでは終わら無かった。

「『敵穿つ石の弾(ストーン・バレット)』ッ。」

 スキル「黒魔法(ブラック・マジック)」LV1土属性系統魔法『敵穿つ石の弾(ストーン・バレット)』は、通常石を魔力で飛ばすだけだが、ゴウは風属性系統魔法を応用して、速度が通常以上に成る様にしていた。


「ギャンッ!?」


「ギャ!?」


「ガガッ!?」


 『敵穿つ石の弾(ストーン・バレット)』は、迷う事無く、【灰狼(グレー・ウルフ)】の頭部に命中。1体残らず頭部を貫通し、計14体の【灰狼(グレーウルフ)】を射殺した。

 しかし、【灰狼の長グレーウルフ・リーダー変異種(ミュータント))】のみはいち早く、状態異常(バッドステータス)をレジスト。高い敏捷を活かし、『敵穿つ石の弾(ストーン・バレット)』を躱していた。


「ガルゥ・・・。」


「ほう。此れを躱すか。【灰狼(グレー・ウルフ)】と言えど、群れの「(おさ)」と言う訳か。・・だが、終わりだ。」


 その言葉と同時に【灰狼の長グレーウルフ・リーダー変異種(ミュータント))】は、突如として地に伏せる。


「グ・・ルゥ・・・?」


「即効性の神経毒だ。「黒魔法(ブラック・マジック)」は、直接的な攻撃しか一般的に無っていないが、毒の作製法を知っていれば毒も生成出来る。まっ、負けて死ぬお前には、関係無い話か。・・けどな、お前を此処で殺すのは惜しい。だから、お前を俺の眷属する。」


 そう言いながら、ゴウは地に伏せる【灰狼の長グレーウルフ・リーダー変異種(ミュータント))】に近付き、【灰狼の長グレーウルフ・リーダー(変異種)】に触れるとスキル「眷属支配マーベウェイ・コンマート」を発動させる。


「ヴォ・・・ウォ?」


「・・成功だ。・・・ぬっ!?」


 ゴウが、驚きの声を挙げる。何故ならば、いきなり後ろからアンリーとミーセが抱き付いて来たからだ。


「うええぇぇぇん!!ゴヴ!!ゴウ!恐かったよー!」


「・・・ゴウッ!恐かった!!」


「あ、あぁ。もう、大丈夫だ。」


ゴウは、アンリーなら兎も角、普段無表情なミーセも泣いている事に若干驚きながらも二人を抱き締め(なぐさ)める。



「落ち着いたか?」


「うん。有り難う。」



「・・・うん。それより、その狼は大丈夫なの?」


「あぁ、大丈夫だ。・・そいつは、俺の眷属に成ったからな。」

「ガウッ!

「えっ!?じゃあさ、撫でたりして良いの!?」


「別に言いが・・。」


「本当!?やったっ!」


(そう言えば、娯楽が少なかったな。・・・何時の間にかミーセも混じってやがる。)


「まぁ良い。俺は、剥ぎ取りでもするか。」


 魔物は、強さや種類にも寄るが基本的に豊富な素材が取れる。異形の存在だけに素材は便利で、様々な物に加工され、人間社会を支えている。

 蛇足だが、その有意性故に魔物狩り専用の冒険者と言う職業が在る。


「やはり、魔石・牙・爪・皮くらいしか利用価値無いか・・。喰う分が多くて良いが。」


「魔石?それ何?」


 何時の間にか、ゴウの隣に居たアンリーが、ゴウに問う。


「・・・魔石は、魔物から取れる魔力の石。主に魔道具や魔導具の燃料に成る。」


 問われたゴウが、答えるより速く、ミーセが答える。


「よく知ってたな。」


「へぇ~。」


「・・・フフンッ♪」


 ゴウに、誉められて?普段の無表情が崩れ、小さい笑顔がミーセの顔に映っていた。


「・・剥ぎ取りも終わったし、昼飯にするか。」


「やった~♪」


「・・・でも、狼のご飯はどうするの?」


「別に【灰狼(グレーウルフ)】でいいだろう。」


「・・・良いの?」


 ミーセが、【灰狼の長グレーウルフ・リーダー変異種(ミュータント))】に問う。


「ガウッ!!」


 すると、【灰狼の長グレーウルフ・リーダー変異種(ミュータント))】は、嬉しそうに吠える。

 ミーセは、知らなかったが、魔物は完全な弱肉強食の生物で弱ければ、同族だろうがなんだろうが関係無いのだ。


「えぇ!?ゴウも、その狼食べるの!?」


「あぁ。俺は、スキルの能力で喰えば喰う程、強く成るからな。」


「・・・初耳。」


 ミーセが、少し(とが)める様に言うが―――


「関係無かった(・・・・)ろ。」




 三人は、昼食を終え帰る途中だった。


「ねぇ、ゴウ。御願いが有るの。」


「あ?」


「・・・私達を、鍛えて欲しい。」


「鍛える?」


「うん。さっきさ、私達狼に囲まれたじゃない。」


「あぁ。それがどうした?」


「・・・恐かった。けど、同時に悔しかった。だから、強く成りたい。」


「はぁ?そんなの当たり前だろ。お前等、まだ、三歳だぞ?何も出来なくて、当たり前だ。」


「・・でも。・・でも、もう嫌何だ。」


「・・・但、指を加えて見てるだけ何て嫌だ。」


「・・・ぬぅ。」


「御願い!」


「・・・御願い。」


「・・・はぁ。・・分かった。鍛えてやるよ。只し!俺の特訓は、スパ――厳しいからな。」


「うん!頑張るっ!!」


「・・・頑張る!」


「期待しねぇでおくよ。」

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