転生
時は、西暦2050年。第三次世界大戦が勃発。核爆弾・・etsの影響により、世界は大破。人類に残された道は、破滅のみと思われた。
しかし、その道を変える者達が現れた。それが『異能者』だ。『異能者』達は、様々な力(魔法、超能力・・ets)を使い世界を安定化した。
だが、『異能者』達の力は世代を重ねる毎に強くなり、また、『異能者』の数が爆発的に増えた。そうなると当然、悪と言われる『異能者』が現れ始める。
そこからは、簡単だった。悪と善が戦い、様々な勢力が生まれては消え、『異能者』達の泥沼の戦いの歴史が始まった。
そして、西暦2150年。
世界は、2つの勢力に別れていた。旧アメリカを中心とする超巨大組織『天使の楽園』、旧日本を中心とする少数精鋭組織『死の国』。2つの勢力は、永き間均衡を保っていた。
しかし、その均衡が崩れた。『天使の楽園』に、恐るべき『異能者』が現れたのだ。それを機に、『天使の楽園』は『死の国』を攻撃、壊滅に成功。『死の国』は組織のトップである一人を抜いて、一人残らず死亡。
そして、『死の国』壊滅から一ヶ月後ついに、『天使の楽園』は『死の国』元トップを発見。現在進行で戦闘を繰り広げていた。
「らああぁぁぁっっ!!」
叫び声と共に男が、正拳突きを繰り出す。男が正拳突きを繰り出した方向は、まるで、横型の台風の様な突風が襲い、そこに居た人間を一人残らず肉片に変える。
(チィッ!数が多すぎる!)
この男の能力は単純明快、超次元的身体能力だった。
―――ダダダダダダダダダダダダダ!
強烈な火薬の破裂音と共に、金属の弾が銃から発射される。音速をも越える弾丸を前に、男は回避行動を取る。しかし、圧倒的数の前では完全に回避出来ず、何発もの弾丸が身体に当たる。
「ぐっ!ぐぅぅ!」
通常なら弾丸程度の硬度では男の身体を、いや、皮膚程度すら貫通出来ないが、この弾丸は太陽系最硬金属レトフレドを使った弾丸だった為、男の身体を貫けた。
「・・・ッ。ナメんじゃねぇ!!」
「ブフッ・・・ハァ・・フゥハァフゥ。くそ・・・まだ、未だだ。まだ・・動ける。」
「相変わらずの精神力だな、業。」
その空間に突如現れた男は、感心と驚愕が入り交じった顔で、喋る。
「竜牙・・テメェ・・・ゴブッ・・。」
「しかし、まぁ、内の戦闘員ほぼ全てを殺すとは、よく殺ってくれたもんだな。」
業と呼ばれた男と業に話し掛ける男の周りは、夥しい血と数えきれ無い程の死体が広がっていた。その光景は、まさに、死屍累々だった。
「だが、見返りは充分だな。」
業に話し掛ける男は、満足そうに頷く。
逸れもその筈。業は数えきれ無い程の人間を殺したが、その代償として、左腕・右足・左腹部等を無し、殆んど人間とは思えない外見をしていた。
「ハァ・・何故・・・何故お前が・・出てくる?」
「上がお前をしっかりと、殺せって言うもんだからね。」
そう言いながら、男は手をかざし、魔術を発動させる。男の手に魔術特有の光る術式が現れる。
「んじゃ、去らばだ。―――『滅炎』。」
(ここで、終わりかよ。結局、復讐果たせ無かった。あぁ、俺は何処まで行っても弱いままか・・・。)
最後に業は、自分を焼き尽くす炎を静かに見ていた。
――デフロアンド・神界――
「創造神様!このままで良いのですか!?」
「良いも悪いも、俺達には何も出来だろう。」
「しかし!幾らこの世界が〈神順闘争会〉開催地だとしても、一人の神に転生者3人を送られ、直接的に運命を変えられた者が居るのですよ!!」
「仕方の無い事さ。俺達がどう足掻こうと、あの神を止められはし無い。・・・俺達は、只経緯と結果を見守るだけさ。」
「・・ッ!」
――?――
そこは、何一つの光源無き、暗き空間だった。しかし、その空間には、椅子や机を始めとした様々な物が置いてあった。
そして、その空間に二人の生物が、鎮座していた。
「で、どうなった?」
その空間に居る二人の内、男の方が、先に口を開く。
「全て予定通りよ。全部、ゼツが想定した通り。・・ふふっ。やっぱりゼツは、凄いね。」
「お前が、頑張ってくれたからさ。リン。」
そう言いながら、ゼツと呼ばれた男は、リンと呼ばれた女の頭を撫でる。
「ふふっ。有り難う。」
「ど~ん。」
「キャッ!」
次の瞬間、リンは、後ろからの衝撃で吹き飛ぶ。
「リンさんだけ狡いです。私も頑張りました。・・・だから、褒め――頭撫で撫でしてください。」
リンを後ろから突き飛ばした少女は、次は自分とばかりに頭を突き出す。
「・・あぁ。よく頑張ってくれたな、ルミ。」
ルミと呼ばれた少女は、表情にこそ出さ無かったが、その雰囲気は満足気だった。
「ちょっとっ!何するのよっ!?」
「私も頑張りました。だから、撫で撫でされる権利が在ります。」
「だからって、突き飛ばす事無いでしょっっ!!」
「・・・ぷぃ。」
ルミは、リンから顔を背ける様にゼツの胸部に顔を埋める。
「ちょっとっ!?」
「まぁまぁ、二人とも止めろ。・・で、あっちの神連中はどうなっている?」
「う~。・・・今のところ静視の姿勢よ。やっぱり、ゼツを畏れているみたい。」
「そうか。」
「・・・そんな事より、今日は私の番です。速く行きましょう。」
ルミはそう言いながら、ゼツの腕を強く引っ張る。
「ちょっと待て。まだ、速いだろう。」
「・・・私とするのが嫌なんですか?」
ルミは、今にも泣きそうな表情を造り、ゼツに問う。
「別に嫌って訳じゃない。只、ルミが、疲れてると思ってな。」
「私は、大丈夫です。ですから、速く始めましょう。」
「ああ、解った。」
「ちょっとっ!!さっきから何無視してるのよ!?・・それより、ゼツ、するのが二人とは決まって無いから、私も混ぜて。」
「嫌です。」
ゼツが、口を開く前に、ルミが即答する。
「なっ!貴方にそんな権利無いでしょうがっ!」
「知らないんですか?当番の人が、そう言うのを決められるんですよ。」
「はぁ?そんな条約聞いたら事無いわよ。」
「そんな事知りません。それに、関係有りません。」
「なっ!あ――」
「あ~、分かった!分かった!!二人とも相手してやるから、先行ってろ。」
「「・・・むぅ。」」
二人は、不満の表情をしながら、その空間から消える。
「・・・で、何時まで隠れて居るつもりだ?」
ゼツの目線の先には何も無かったが、突如として、全身黒尽くめの服を着た者が現れる。
「・・チッ。」
「やはり、原初暗黒や始まりの闇等じゃ無いな。・・初悪原初の闇。全てのモノを殺し、無へと還す力。」
「何が目的だ?」
「ん?」
「何故・・何故、彼奴を転生させる?・・・いや、そもそも、彼奴が死ぬように仕向けたのはお前だな?」
「目的も何も、只、同じ初悪原初の闇を持つ者として、強く成って欲しいだけさ。」
「同じ?ハッ!巫山戯た事を言いやがる。お前は、既に上の領域に上がってるだろうが。」
「まぁ、そうだが。・・おっと、そろそろ時間の様だな。」
「あ?何の――」
黒尽くめの者の言葉は続かない。一瞬よりも速く、ゼツが黒尽くめの者の頭を掴み、魔法を発動させたからだ。魔法を喰らった黒尽くめの者は、声も挙げる事も出来ず気絶する。
「今は、眠れ。そして、強く成れ。我の後継者よ。」
(・・・?何なんだよ、この震動。俺は、眠いんだよ。止めてくれ。)
「****。*******。」
(・・・ッッ!?なっ、何だこれっ!?)
業は、酷く混乱していた。何故なら、自分が死んだと思い、意識が覚醒したら身体の自由が効かず、自分の身体が持ち上げられていたからだ。
(まさか!?・・・まさか、異世界転生って奴なのか?・・・兎に角、状況把握が大切だ。状況把握を把握しよう。)
業は、状況把握を始めようと心に決め眠りに就く。最後にこう思いながら。
(赤ん坊ってなんて不憫なんだ。)




