昔話:とある【神聖焔界を支配する真祖吸血鬼】の話・壱
さあ、始まりました。昔話シリーズ。このシリーズは、作者でもこの先重要かそうでないか、解らない過去の話です。基本的に、昔話シリーズは、一人称でかきます。
因みに、昔話シリーズの発端は、閑話で一人称をかこうとしたら、新事実が多すぎて、閑話にならなった、作者の腕の無さが原因です。
追記、始めての一人称ですので、拙すぎると思いますが、どうか楽しまれると幸いです。
私の名は、ランチェル。種族は“真祖吸血鬼”の一角【神聖焔界を支配する真祖吸血鬼】。因みに、歳は、大体五十歳ぐらいよ。
そして、此処は、四つの大陸の中央に位置する大陸、ザォットキポーウ大陸。
別名、神の降臨場。この大陸が神の降臨場何て言われてる訳は、この大陸に居るモノ全てが、とっても強いモノだからよ。どのモノも、最低でも、SSSランクの強さを持っているわ。SSSランクと言えば、私の種族の強さと同じよ。
まっ、同じSSSランクと言っても、上下関係は在るけどね。
あっ、ついでに言うとね、さっきから、この大陸に居るモノを‘モノ’って、言ってるのには、訳が在るのよ。この大陸には、人間とか魔物とかでも無い生物や無機物が居るから、モノって言ってるの。此れって、結構珍しいのよ?だって、人工合成生物だって、魔石を使うもの。
フッフッフ~ンッ。今日は、天気良いなぁ~。こんな日は、何か良い事ありそうっ。
と、思ったら、早速良い事発見!
超貴重な薬草、特効草を見つけたわ!
この草はね、加工次第で、特定の種族の様々な病気に効く薬に成るから、とっても重宝するの。
ふふふっ、両手一杯の特効草が、獲れたわ。早速、帰って薬にしなきゃ!
「きゃっ!?」
っ!何此の揺れ!?
「ランチェルッ!あれ程言ったじゃろうがっ!寝床から出るなとっっ!!」
一瞬、誰の声か迷ったけど、直ぐに合点がいったわ。
大地を大きく揺るがす程の揺れ、圧倒的気配、辺り一面を覆い尽くす影、絳煌と輝く巨大な物体、まるで伝説の剣の様な気配を振り撒く鋭利な物体、紅の穴。
そして、極めつけは、裕に三千メートルを越える大きさを誇る、巨大な龍。
其処には、私の育ての親、ドラファムさんが居たわ。
「聴いておるのかっ!ランチェルッッ!」
ドラファムさんから、発せられる怒気に染まった野太い声を聴いて、我に帰ったわ。
「でもっ、ほらっ!」
私は、両手一杯の特効草を見せた。
「此れだけの特効草が在れば、ゴデエレさんの病気に効くでしょっ!」
「うぬっ!?うぬぬぬっ!しかしな!」
「どうどう、ゴデエレよ、そう叱るでない。」
私の反論に、ゴデエレさんが納得せず、説教をしようとした時、聴き覚えのある声が、聴こえて来たわ。
「むっ、盟友か。口出しをするで無い。此れは、吾輩とランチェルの問題じゃ。」
私達が、視線を声がした方向に向けると、其処には、ゴデエレさんと違い圧倒的な気配では無く、隠れた力強さを持つと言うべき気配を纏う人が居たわ。
「何を言う。口を出してこそ、盟友じゃろうが。其れにな、ランチェルは、お前の身体を心配して、寝床を飛び出したんじゃろう。なっ、ランチェル?」
「はい!」
ふふっ、流石にゴデエレさんもヨヌオムさんに言われれば、引き下がるわね。
「うぬぬぬ、うぬぬぬっ。・・・ぬうぅ、解った。今回は、許そう。」
「やったっ!」
「しかし!今後は、勝手に出歩くのを禁止するぞ!」
「ははっ。全く、ゴデエレは、過保護じゃのう。」
「くっ、言い過ぎじゃぞ!」
ふふっ、相変わらず仲良いな~。
「ぐうっ・・ガハッ・・・ヌウゥッ・・・。」
ゴデエレさんに外出禁止を言い渡されてから約三年後。
到頭ゴデエレさんの病気は、全身を侵食し、後数時間で死んでも可笑しく無い状態だった。
「ゴデエレさんっ!しっかりしてっ!!」
「ラン・・っ・・・ランチェル。」
「何!?ここに居るよっ!!」
「盟友を、盟友呼ぶんじゃ。」
「ヨヌオムさんを!?解った!今すぐ、呼んでくるっ!」
「ハァッ、ハァッ、ッウ。フゥッ、フゥッ。」
私は、力の限り走った。様々な強者達の跋扈する、この大陸を。
強者達の異変に気付かずに。
「ハァッハァッ!フゥッフゥッ。ハァッハァッ!」
ヨヌオムさんの棲家に急行して、急いで事情を説明して、ゴデエレさんの処に戻る時には、もう私の体力は、底を突いて、私達の棲家に着いた途端、座り込んでしまったわ。
「ゴデエレ!」
「お、ぉ、・・盟友よ。来てく、グウゥッ。」
「ああ、来たぞ。」
「ランチェルの前の代の話、したな?・・ぐっ、ランチェル、は、意思を、継いでいる。あぐ、ぅ。吾輩の最後の頼みじゃ。・・・ランチェルを・・観てやってくれ。」
「―――ッッッ!?そんなっ!?うっ、嘘でしょっ!?ねえっ!嘘でしょっ!?嘘って言ってよおぉっっ!!」
私は、衝撃の剰りゴデエレさんの身体を激しく揺らしてしまった。
「ランチェル、ランチェルッ、ランチェルッ!ランチェルッッ!!」
ヨヌオムさんが、私の名前を何度も呼んだわ。
でも、私は止まらなかった。
「落ち着けっ。もう無駄だ。」
ヨヌオムさんは、私の肩を掴み、首を横に振りながら、諭すように語り掛けてきたわ。
「嫌っ!嫌っ!!嫌だよぉっ!!」
「ラン―――ッッ、クッ。」
ゴデエレさんが、苦痛とは違う悔しむ様な声を上げた。
「おやおや、感動のお別れですか?」
突如として聴こえてくる声。その声は、何故か、とっても耳障りで、私の感情を瞬く間に激怒状態にした。
何時もならそんな塵、直ぐ掃除するんだけど、今回は出来なかった。
「すまぬ、ランチェル。・・・元気で居てくれ。」
何故なら、私は、結界に閉じ込められたから。
「ッッッ!?ゴデエレさんっ!?何してるのっ!?これを解いてっ!!」
声が出る限り叫んだ。でも、この結界は、魔法と複合されてるみたいで、私の声は全て遮断されていた。
「良いのか?」
「ああ、長居しても、ランチェルが悲しむだけじゃ。」
遮断されてたのは、私の声だけじゃなくて、外からの音も遮断されていた。でも、二人の口の動きで、二人が会話してるのが解った。
その時、ゴデエレは、多分、さっきと打って変わって、普段の頑強で威厳ある声を出しているんだと思う。
でも、ゴデエレさんの病気を知っている私は、そんなの只の虚勢って、解ってた。だから、余計に声を張り上げて、結界を全力で攻撃し続けた。
けど、ゴデエレさんの協力な結界には、薄っすらとすら、傷を付けれなかった。
「・・・。ゴデエレよ、お前の願い、聞き入れた。・・・・思い切り暴れて来い。」
っああ!何言ってるか解らない!こんなことなら読唇術覚えるべきだったっ!
「感謝する、盟友よ。スウウゥ――――」
ッ!龍之息吹ッ!?駄目っ!!そんな身体でっ!
「ははっ。私も嘗められたものですね。―――アルフゼユヲム、ツヌゲルャザナタ、パバヂマアガサ、ヤナワミナバ。」
ッッッ!?何此の力・・ッッ!?凄いなんて次元じゃ無いっ!!
ゴデエレさんの結界を越えて此れだけ感知できるなんて・・・し、信じられない。
「ギイイイィィアアアアアアァァァァッッッ!!!」
ッッ!?今度は何!?
あっ、あれはっ、【蠱毒喰合獸巨人】ッッッ!?
何で此処にっ!?生息地は西の端の筈っっ!!
「アアアアアギギギギギイイイイアアアァァ!!!」
駄目っ!このままじゃ装填中のゴデエレさんがっっっ!!!
「おいおい、俺が、ゴデエレの最後を邪魔させると思っているのか?」
すっ、凄いっっ!!
こ、此れがヨヌオムさんの力。
その力は、視認できる程濃く、物理的破壊を持つ程強力だったわ。
ヨヌオムさんの力は、爆発的に広がり、その余波だけで、空間が歪み、大地が割れ、大地が揺れ、大地の破片がヨヌオムさんを中心として円状に狂い飛び散っていた。
「ギキキキギギイイイイイイィィィッッッ!!!」
―――ッッッ。けど、【蠱毒喰合獸巨人】は、その力に対抗して、力を放出したわ。
此れが、EXランク最上位の力・・・・。
この世界の最上位に位置し、神にも匹敵する力・・・・・・。
そして・・・・私が越えなければいけない力。
「ははっ。まるで【角壊直爆奔岌】だな。」
次の瞬間、【蠱毒喰合獸巨人】の身体、いえ、周りの空間に亀裂が走った。
「死に晒せ。」
「イイイィィィギギギキキアアァァァァッッ!!!」
雄叫びとも断末魔とも思える叫び声を挙げる【蠱毒喰合獸巨人】。
流石は、EXランク最上位。身体を幾重にも分解され、血の豪雨を降らせながらも、部位一つ一つが蠢き、自身を再生させようと足掻いたわ。
けど、突如として、発生した超重力無次元に吸い込まれる。
「なっ、馬鹿なっ!?」
「へぇ。今の感触、何かしらの魔法で強化していたみたいだな。あっ、気を付けた方が良いぞ。」
「クッ。調子に乗る――グウッギアアアァァァアアッッ!!!」
「調子に乗るな?其れは、此方の言葉だ。」
ゴデエレさんっ!?
何でっ!?装填中じゃ―――!そうか!あれは幻っ!
凄いっ!全然解らなかった!
「ふんっ!神王級かと案じたが、単なる上級神か。」
ゴデエレさんは、噛み千切った塵の腕を呑み込んだ。
「ギガァッ、ぎ、貴様等アァッ!!コロオオスウウゥッッ!!!」
ッッ!?何此奴!?身体が在り得ない程膨張してるっ!?
「グギイイイダガアアァァ!!ゴロズウウウゥッッ!!ゴロオオオズウウウウゥゥッッッ!!!」
「おいおい。まじか。」
ッッ。四千、いえ、五千メートルは有る!
まさか、巨神の系統っっ!?
「ランチェルッ、此処は、危険だ!離れるぞっ。」
ヨヌオムさんが、結界を破って、私の腕に触れた。
「駄目っ!!逃げてっ!!今のゴデエレさんじゃ勝てないっっ!!!お願いっ!逃げてっ!!」
必死に抵抗したけど、ヨヌオムさんに敵う筈も無く、ヨヌオムさんが、造った空間の亀裂に連れ込まれた。
「グルルウウオオオオオォォォッッッ!!!」
――――私が、最後に見たのは、腕を降り下ろす塵の姿と、微笑んでいるゴデエレさんの姿だった・・・・・。
「ウグッ・・・ギュ・・ウ・・・ウッウッ・・・ァッ。」
「泣くんでは有りません!漢が、最後まで、自分の意志を貫き通したんです!。格好良いじゃありせんか!」
「でっ・・・グゥ・・でもっ・・・でもぉ・・ウゥッ。」
「ファアナ。今は、泣かせておけ。」
「しかし!」
「ファアナ、生物はな、時として泣いた方が良いときも在るんだ。問題はな、その後。その後、どう行動するかだ。」
「その後・・・どう行動するか・・?」
「そうだ。だから、説教するのは、後にしてやれ。」
「・・・はい、承知いたしました。」
「落ち着いたか?」
「・・・はい。」
「そうか。・・で、お前は、此れからどうするのだ?正直に言って、今のお前じゃこの大陸で、絶対に生きられないぞ。」
「・・・はい、解ってます。」
「しっかっりなさいっっ!!貴女は“真祖吸血鬼”最強の【神聖焔界を支配する真祖吸血鬼】でしょう!ならば、其れに見合う風格を就けなさい!!」
「・・・・ぃ。」
「っ?何ですか!?」
「・・・ゎ・・・きた・・ぃっ。」
「聴こえませんよ!?」
「・・・私をっ鍛えてくださいっ。」
「もっと大きな声でっ!!」
「私をっ!!グズッ、鍛えてくださいっっ!!!もうっ!何も失わないようにっっ!!私の!未来のっ!王様の役にたてるようにっっ!!私を鍛えてくださいっっっ!!!」
「ああ。勿論だ。其れが、ゴデエレの願いだしな。」
「よく言えました。」
頭に掌の感触を感じて、顔を上に向けると、二人が微笑んでいる姿が見えた。
「うくっ・・・ウウッ・・あ・・・ありがどっ・・・ありっ・・・がどっ・・・。」
「ほら、泣くんではありません。貴女は、何れ“真祖吸血鬼”の種すらも越える者。頑強な精神を持ちなさい。」
「・・・はい・・スッ・・はいっ。」