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無限なる世界  作者: 終焉の王
デフロアンド~始まりの村~編
14/18

色々考えて、自嘲は辞めました。

(・・これは・・・あの時と同じだ。死の感覚。)


「・・クソッ・・・何かっ・・何か、無いのかっ・・・っっ。」


 ゴウは、(おのれ)がもうどうにもならない事に、一部では理解しながらも、折れずに、この状況を打開する方法を思考する。


「クソッ、駄目だっ。魔力もスキルも使えない!」


〔――そ――――慌て――〕


「ッッ!?誰だっ!?」


 ゴウしか居ない空間に、突如として、声が響く。

 いや、空間に響いたのでは無く、ゴウの頭の中で響いていた。


(・・?・・・この声、何処かで聴いた事が・・?)


 そして、ゴウは、思い付く、この声を何処(どこ)かで聴いた事が有ると言う事に。


「ッッッッ!?」


 ゴウが、何処(どこ)で聴いた声か思考を巡らせていると、ゴウの眼の前に人影が現れる。


「なあっ!?俺っっ!?」


 その人影は、ゴウと瓜二(うりふた)つの姿だった。


(ッ!!影真似者(ドッペルゲンガー)の類いかっっ!)


 ゴウは、直ぐに冷静さを取り戻すと、拳による攻撃を繰り出そうとする。


 そして、気付く。先程まで、何の不自由無く動かせた身体が、動かせない事に。


「ッッ!?クソったれっ!」


 そう叫ぶゴウの眼には、自分に手を伸ばす、自分の姿が映っていた。





「うああぁぁぁぁぁぁん!?ゴヴッッ!ゴヴッッッ!!!何でっ!?何でっ!?うあああぁぁぁ!!」


 アンリーの泣き声が、瓦礫の山と成った村に木霊する。いや、アンリーの泣き声だけではない。地下壕から脱出した村人達やヘル達。更に、リンの泣き声が木霊していた。


「・・・グズッ・・何でっ?・・何でっ?ゴヴ!?」


 ミーセが、泣きながらゴウの死体を激しく揺らす。


 その時、揺らされた反動で、ゴウの服の中に仕舞われていた手帳の様な物が飛び出る。


「・・・ッッ!?な・・何これ・・・!?」


 そう驚愕するミーセの目線の先では、手帳が激しく発光していた。


 そして、光が(うごめ)き出し、人の形に変わり出す。


「こ、こ・・これは・・・?」


「一体何が・・・・・?」


 その奇抜さに、ミーセ以外の者達の意識も、全て光に移される。


『あ、ああ、テスト、テスト。・・俺を認識している者達、聴こえているか?』


 そして、光が弱まると、ゴウと瓜二(うりふた)つの、いや、ゴウが成長したら、こうなるであろう姿が現れる。


『先に言っとくが、これは単なる映像、受け答えはしないので、宜しく。・・・取り敢えず、いきなりだが、本題に入らせてもらう。』


「・・・本題?」


 (あま)りの異常さに、泣き止んだミーセが、思わずと言う風に呟く。


『これが発動したと言う事は、ゴウは、死んだんだろう?』


 次の瞬間、辺り一体を怒気が支配する。


「・・・それが、本題?」


 怒気の生産者、リンが殺気を凝れでもかと言う程込めた、言葉を発する。


『―――だが、それは、間違いだ。』


「「「「「「「「・・・・・・・・。」」」」」」」」


 数十秒の間、リンだけでは無く、アンリー達も固まる。


『もう一度言う。・・ゴウは、死んでいない。』


「・・・は、はは。・・・冗談言わないで頂戴っっ!!・・・ゴウは・・・・ゴウは!死んで締まったのっ!!・・・・私は・・・ゴウを、守れなかったのぉ・・・ううぅぅ。」


『ああ、すまん。正確には、新たに生まれ変わるのだ。』


「「「「「「「「・・・・・・・・。」」」」」」」」


 再度、固まるリン達。


「・・・ッッッ!?・・・生まれ変わる・・?」


 一人だけ、復活したリンが呟く。


『俺の力によってな。』


「じゃ・・・・じゃ、じゃあ、ゴウは、死なないって、事?」


「・・・や・・やったーっっ!!」


「良がっだーーっっ!!!」


「ほんと、ぐずっ・・本当に、っしっくっ・・良かった。」


「うんっ!うんうんっ!良かったっ!」


 映像に映る人物の発言で、リン達は歓喜に包まれる。


『ゴホンッ。・・俺が、こんな事したのは、ゴウが生まれ変わる事を伝える為じゃ無い。』


 映像の人物は、態とらしい咳払いをすると、この映像を準備した理由を語り始める。


『こんな事をしたのは、お前等に警告(・・)する為だ。』


「・・警告・・・?」


『ゴウは、生まれ変わると同時に、新たな力を手に入れる。知ってると思うが、強大な力は力を引き寄せる。良くも悪くもだ。・・・だから、強大な力を得たゴウには、強者が引き寄せられるだろう。』


「・・・それが、どうしたの?」


『ゴウが負けるとわ言わん。何せ、これ迄以上に、成長力が高まるのだからな。だが、その時、お前等は、ゴウの邪魔に成るだろう。』


「「「「「「「「・・・・・・・・ッ。」」」」」」」」


 リンとヘル達を除いた、全員が黙り混む。否定出来ないのだ。自分達が、ゴウの邪魔に成らないと。


『そして・・・・もしかしたら、誰かが、死ぬかもしれん。そうなったら、ゴウは間違いなく、―――。・・・それに、お前等も死にたく無いだろう?』


「・・・あ・・か・・・・だ・・・・。」


『だから――――』


「貴方に関係無いっっ!!ゴウはっ!」


 映像の音が、聴こえない程の大声を、アンリーが出す。


「ゴウは、私達を護るって言ってくれた。だから、貴方が誰で在ろうと、関係無い。口を出さないで。」


 今度は、静かに、しかし、真剣な表情で、凄まじい気迫を乗せて、言葉を発する。


『―――――と、言ったって、無駄だろうがな。』


「ッ・・・!?」


『だから、言ったろう?警告(・・)と。どうせ、今の俺に強制力は、無いからな。』


「・・・警告・・。」


『最後に、下の手帳に色々書いてある。ゴウにも伝えるが、一応お前等にも伝えて置く。・・・ゴウを、頼む。』


 映像の人物は、そう言うと頭を下げた。


「あっ・・ちょっ、ちょっとっ!」


 リンの制止も虚しく、映像は徐々に消えていった。

その後、リン達は、只立ち尽くすしか無かった。





 時は、ゴウが(おのれ)の姿をした者と対峙(たいじ)した時まで、(さかのぼ)る。


「安心しろ。・・と、言っても無駄か。」


 ゴウの性格を熟知している者は、一応声を掛けるが、直ぐ様、自分で否定する。


「まっ、良い。取り敢えず、動くな。」


 そう言いながら、ゴウの姿をした者は、ゴウの頭に触れる。


「ッッッ!?」


「分かると思うが、これは(・・・)、全て事実だ。」


「・・これは・・・・情報が、流れて来る・・?」


 今、ゴウの姿をした者は、ゴウの脳内に直接情報を流し込んでいた。その為、ゴウの脳内では、膨大な量の情報が処理され、目の前の者に対する警戒の思考が、無くなっていた。


「・・・・・・・。・・兄・・貴・・・・?」


 やっと情報の処理が、終わりかけたゴウから、言葉が()れる。


「んな大層なもんじゃねぇよ。・・いいか、ゴウ。これからお前は、怪物、いや、化けもんと殺り合わなきゃいけねぇ。・・・だからこそ、もっと強く成れ。そして・・『最強の王』に成って、今度こそ、幸せに成れ。・・・・それが、俺の幸せでも有るからな。」


 そう言うゴウの姿をした者の顔は、嘆きの感情に満ちていた。

 そして、ゴウの姿をした者が、言葉を言い終わると同時に、ゴウの姿をした者の身体が、光の粒子に分解されて行く。


「・・・・すまねぇ。俺が、もっと強ければ、お前を・・お前を、こんな目に会わせずに、済んだのに。すまねぇ。」


 ゴウの姿をした者は、眼に涙を貯めながら呟く。その姿を見たゴウは―――


「あぁ。そうだな。兄貴(・・)が、ちゃんとしてれば、俺は、こんな事には、成らなかった。」


「すまねぇ、すまねぇなぁ。」


 ゴウの姿をした者は、謝り続ける。


「・・・だがよ。兄貴は、兄貴だ。それに、俺の為に、滅茶苦茶(めちゃくちゃ)頑張ってくれたじゃねぇか。」


「ッッッ!?・・お前は、俺を・・・俺を兄と呼んでくれるのか・・・?・・・・・っっ。」


「当たりめぇだろうが。・・だからよ、ゆっくり休んで(・・・)くれや。」


「・・ああ。・・・有り難う。・・そして、いや・・・・俺は、何時もお前の側に・・居る。」


 その言葉を最後に、ゴウの姿をした者、いや、ゴウの兄は、完全に消えた。


「・・・・・・・。道筋はたった、か。」


 そう言うゴウの顔には、決意の感情で、満ち溢れていた。


(今度こそ・・・今度こそ・・・・今度こそ、必ず、『最強の王』に成る・・・。)


 ゴウが、そう新たに決意していると、ゴウの意識は、段々と薄れていった。





「・・・こんな事が在ったなんて。」


 映像が消えた後、(しばら)く固まって居たリン達だったが、再び復活し、残った手帳を読んでいた。


「・・これの事はゴウには、知らせない方が良いみたいだね。」


「ええ。そうね。」


 手帳を読み終えたリン達は、手帳の存在をゴウに知らせないと言う結論に至る。


「あっ!?ゴウがっっ!?」


 突如として、大声を上げるアンリーに反応し、その言葉を理解すると同時に、ゴウを見るリン達。


「・・ッッ!?・・・はぁ。もう、驚き疲れたよ。」


「・・・もしかして、これが、生まれ変わる?」


 今日何度目か分からない驚愕を挙げるリン達の目の前では、ゴウが黒い(もや)の様な物に、包まれていた。

 そして、段々と(もや)が、晴れていく。


「・・っはぁっ。・・っあぁ、気持ち悪・・・。」


 (もや)に包まれていたゴウは、起き上がると悪態を付く。


「っ・・痛・・・つぅ・・・だる。」


「「「「「「「「ゴウッッッ!!!」」」」」」」」


「うおっっ!?どっ、どうしたんだ!?」


 いきなり叫びながら突進して来るリン達に、ゴウは驚愕を隠せ無かった。


「っよがっっだ!!私、私、ゴウがじんだがど思っだああ!!!」


「?よしよし。」


 アンリーの言葉に疑問を持ちながら、色々と悲惨な事になったゴウは、取り敢えず、アンリーの頭を撫でる。


(・・・あぁ、そう言う事か。)


「えっ?ちょっ!」


 ゴウに、頭を撫でられて居たアンリーは、いきなり強力な力に引っ張られ、驚きの声を挙げる。


「よかったぁ。」


 アンリーを、強力な力で引っ張ったのは、リンだった。


 リンは、安堵の声を挙げながら、力の限り(・・・・)ゴウを、抱き締める。


「・・・ぶぐっ・・ぐ・・・ぇ。」


 ゴウも精一杯の抵抗をするが、元々の膂力が違い過ぎる上に、疲労困憊(ひろうこんぱい)のゴウが敵う筈も無く、リンの豊満な胸で窒息させられる。


「・・?・・・ああ!ご免なさいっ!大丈夫っ!?」


「グッフッ、ゴホッ!・・・ふうー、はあー、ふうー、はあー。だ、大丈夫。ふぅー。」


「ご、ご免ねっ!只でさえ疲れてるのに・・。」


「あら、珍しいわね。貴女が、そんなに成るなんて。」


「「「ッッッ!?」」」


 いきなり響いた見知らぬ声に、ゴウ・ヘル・【黒鋼熊(バスティート・ベアー)亜種(バリアント)(ダーク)・|炎《フレイム

》)】―――ボルグが、驚愕しながら、声の響いた方向を見る。


「貴方が、ゴウね?これから、宜しく。」


 その声の主の麗人は、満面の笑みを浮かべて、言い放った。


あなた(・・・)。」

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