成果
『・・・!***・・***!・・・**。』
「チッ!こんな時にっ。・・黙りやがれっ!」
「ガルウゥ?」
「・・・いや、何でも無い。・・急ごう。」
「ヴッオッン!」
現状、ゴウは、村の現状把握の為に村近くに隠れ、村を観察していた。
「くそっ。間に合わなかったか・・・!」
ゴウの目に広がるのは、殆んど、いや、全くの原形を残していない村だった。
(見張りが居るって事は、地下は見つかって無いと言う事か。・・・・だが可笑しい。此奴等に、この短時間で村を此処まで、破壊する事は出来無い。・・となると、可能性は、三つ。一つ目は、此奴等が、それほど高位の魔導具を持っていたか。だが、そんな事をしても利益が無いし、持ってるとも思えない。二つ目は、少数の奴が逸脱した実力者が居るか。三つ目は、此奴等が但の捨て駒か。・・・チッ、考えても拉致が明かない。取り合えず、吐かすか。)
「・・チッ!クソッたれがっ!何で俺達が、こんな処で見張りなんかしてんだよっ。」
見るからに盗賊と言う格好をした、見張りの内の一人が、愚痴を洩らす。
「そんな荒れんなよ。依頼主は、ちゃんと俺達にも分けてくれるって頭が言ってただろうがよ。」
盗賊の愚痴に、1人の見張りの盗賊が、答える。
「ケッ!大体何なんだよっ、あの野郎。俺達より強い癖に、態々こんな小さな村襲わせやがって。」
「まあ、そう言うなって。今回の依頼料――グッバァ!?」
盗賊の言葉は、最後まで続かなかった。何故なら、金属で出来た矢が、盗賊の頭に突き刺さり、貫通したからだ。
「「「「ッッッ!!??」」」」
一瞬遅れで、盗賊の頭から脳漿が飛び出、周りの盗賊達を汚す。
「お、おい!しっかりしろっ!おい!」
漸く、我に還った盗賊達は、急いで矢が突き刺さる盗賊の安否を確認する。
「駄目だっ。死んで―――」
今度は、盗賊の安否を確認した盗賊に、矢が突き刺さる。
「に、にに、逃げろーー!!!」
一人の盗賊の悲鳴を皮切りに、盗賊達はバラバラに、逃げ出す。
(無駄だ。)
通常なら矢が届く距離では無いのだが、ゴウは風属性系統魔法を応用し、飛距離を爆発的に延ばしていたので、矢は全て盗賊達の急所に的中していた。
(一体・・・森に逃げたか。)
「はぁはぁはぁはぁ!!な、何なんだよ!?アレ!?」
この男は、盗賊達の情報を得る為にゴウが逃がした、盗賊だ。
「はぁはぁはぁはぁ・・・。フゥハァフゥハァ。こ、此処なら、大丈夫だ。」
男は、確証の無い事を自分に言い聞かせる様に、呟く。
「へ?・・・お、お前っ、だ、誰だ!?」
男は、驚く。何時の間にか自分の前に現れた、その体格に不釣り合いな大剣を持つ子供に。
「やはり、大剣は慣れんな。切断面が汚い。」
「え?」
そこで、漸く盗賊は気付く、自分の腕がやけに軽い事に。男は、自分の腕を見る。そして、自分の右腕が、肩から切断されている事に気付く。
「ギャガガガガギギギギギギアアアアアアアアぁぁぁぁぁ!!!腕がっ!腕がぁ!!」
「うるせぇよ。」
腕が切断された痛みで絶叫を上げる盗賊に、ゴウは無慈悲に大剣を振り上げ、一気に左腕を切断する。
「ギギギギギガガカアガガガガアアアァァァアァァァァアアア!!!!!」
「だから、うるせえよ。」
そう言い、ゴウは、再度大剣を振り上げる。
「まがが、まっあああがっ!待っでっ!!ぐれえええぇぇ!!」
「じぁ、てめぇ等の事について吐いて貰おうか。」
「わががっだっ!!じゃべるがらラアァァ!!」
「‘巌溶かす悪炎の盗賊団’か・・。規模的には低級、団長の『奇剣バボド』と言う奴はランクC、総合的には中級、か。・・弱い癖に仰々しい名前だな。」
「ビイグッ・・グブエェッ・・・ガザァ。」
ゴウに両腕を切断され、失血死を防ぐ為「白魔法」で止血をさせられた盗賊は、恐怖の余り狂乱しながら意味の無い言葉を叫び続ける。
「じゃ、死ね。」
その言葉と同時に、ゴウは大剣を横凪ぎにする。次の瞬間、盗賊の頭部が吹き飛ぶ。
ゴウは、その頭部を掴むと、一気にかぶり付く。
(不味くも無いが、旨くもないな。)
暫くの間、ゴウの咀嚼音が辺り一体に響く。
(此で、全部だな。・・・中級だけ有って、不釣り合いな武具が多かったな。)
盗賊を全て喰らったゴウは、盗賊の装備を回収していた。
〔アンリー、ミーセ、聴こえるか?〕
ゴウは、アンリーとミーセに連絡を取る為に、「眷属支配」の『念話』を発動する。
〔聴こえるよ~。〕
〔・・・どうかした?〕
〔村が、盗賊に襲われた。〕
〔えっ!?〕
〔ッ!?・・・皆は?〕
〔大丈夫だ、地下に逃げてる。・・盗賊の大部分は殺したが、数人森に入った。そいつ等を、狩れ。〕
〔うんっ!分かったっ!!〕
〔・・・了解。〕
〔そいつ等は格下だか、対人経験はお前等より上だ。侮るなよ。〕
〔了解っ!〕
〔・・・大丈夫。村を襲った奴なんて、冥府に送るから。〕
〔そうか。・・後、1人だけ、刃波打剣の使い手が居る。そいつには、手を出すな。〕
〔分かったっ。〕
〔了解。〕
(此で大体は大丈夫だ。・・・だが、気になる。何故、態々盗賊に村の襲撃を依頼する奴が居るんだ?)
「あぁ~っ。疲れたぞっ!お前等っ!」
「そ、そんな事言われたって、どうしようも無いですよ。頭。」
「チッ!大体、こんなだだっ広い森を全部探せる訳ねえだろうがっ!」
「だから、どうしようも無いですって、頭。依頼主が、そう言うんですから。」
「あのくそ野郎がっ!」
「いや、頭。頭が、連れてきたんじゃないっすか。」
「ああぁ!?五月蝿えぞ!お前等!」
「へいっへいっ。」
「チッ・・・ぅうん?」
そこで、盗賊頭は気付く。微かな、風切り音に。
「おい、チャブ!右にずれろ。」
「へ?へ、へい。」
チャブと呼ばれた男は、右にずれる意味が分かずとも、盗賊頭の実力を知っているので、直ぐ様、に右にずれる。
「なっ!?」
「何だっ!?こりやぁ!?」
「ああぁ?見りゃぁ、分かるだろうが。投擲小刀だろ。」
チャブと呼ばれた盗賊が、右にずれると同時に、チャブが立っていた場所に一振りの投擲小刀が突き刺さる。
「投擲小刀!?何も聞こえなかったっすよ!!?」
「それに「索敵」に反応無かったですよ!?」
「・・どうやらこの依頼、一筋縄では行かなそうだな。」
(・・この小刀鋼鉄製だか、中々の物だ。それに、刃全体に小さな窪みが有る。恐らく、毒だな。)
「う~ん、やっぱり避けるね。」
次の瞬間、その空間に少女の物と思われる声が響く。
「・・・うん。格上には、効かない。」
先の声の返答と思われる声と同時に、二人の少女が森の茂みから現れる。
「「「「「は?」」」」」
普段なら、この様な森深くに居る事の無い少女達が居る事と、少女達が投擲小刀を投げたと思える会話をしている事に、盗賊頭を抜いた盗賊全員が固まる。
「おいおい、一筋縄じゃ行かねぇだろうが、こいつぁ、行かなすぎだろ。」
(・・強いな。ランク的に言えば、Dって処か。・・・こいつらじゃぁ、相手にならんな。)
盗賊頭は、現実を有りの侭に受け止め、少女達の実力を探る。
「盗賊さん達、こんにちは。」
一人の少女が、笑みを浮かべながら挨拶をする。その笑顔は、元が美少女と言える顔だったので、見惚れる様な笑顔だった。
「そして、さよなら。」
しかし、次の瞬間少女は豹変し、絶対零度の無表情と冷酷な殺気をその顔に宿す。
「・・・『響く雷轟の閃光』・・!」
だが、先に動いたのは、もう1人の少女だった。
スキル「黒魔法」LV3雷属性系統魔法『響く雷轟の閃光』。
雷を生成・操作できる魔法だ。更に、LV3以上の魔法は状態異常発生率が5%以下から40%以上になり、この魔法は〔感電〕や〔麻痺〕等の状態異常を発生させる。
次の瞬間、盗賊達を『響く雷轟の閃光』の雷が貫く。
「ッ!!・・チッ!」
盗賊頭は、逸速く反応し、避ける。しかし―――
「ぐぐうぅっ!・・ンググ・・!」
完全には避けれず、状態異常〔麻痺〕が発生し、身体が硬直する。
(・・〔麻痺〕・・かっ。)
盗賊頭は、動かない身体を無理矢理動かし、回復薬を取り出し嚥下する。通常なら、それぞれの状態異常に合った薬を飲むのだが、盗賊頭は〔麻痺〕が発生したと言っても、通常の〔麻痺〕より劣るので、回復薬でも状態異常が治るのだ。
「ぐぅ・・があぁ。・・・チッ。全滅かよ。」
盗賊頭は、〔麻痺〕を治すと周りを見渡し、『響く雷轟の閃光』を喰らった盗賊達が全員即死したのを確認する。
「・・・避けられた?」
「やっぱり、ゴウが強いって言うだけ在るね。」
「ハアッ!?・・よく言うぜっ!いくら格下だとしても、無詠唱で此だけの数を1つの魔法で殺す奴等がよぉ!?」
「・・・変。」
「ああぁ?」
「貴方、強いけど、ランクCってとこでしょ?・・リンさんに聞いた話だと、ランクBクラスじゃ無いと、そんなに慎重じゃ無い筈だけど。」
「カァッ!枠に収まらん奴なんて、幾らでも居るわ。・・・まぁ、そうだな。強いて言えば、テメェらより、異常な奴等を山程見てきたからなぁ。自然とそうなるんだよぉ。」
「・・・あっそ。」
「じゃ、お喋りは此くらいにして、終わらせようか。」
「ああっ!そうしよう。今後の計画を立てなきゃいけねぇからなっ!」
「・・・居ないな。」
アンリー達に連絡をしたゴウは、ヘル達を森に放ち盗賊達を探させ、自身も森を散策していた。
「ん?・・居たな。・・・っ。」
(何だ、こいつ?ランクB以上の実力に、神官の様な格好、更に装備の全てが、聖・神聖属性系の属性を備えてる。)
「まさか・・母さんを狩りに来たのか?・・・・なら、一層生かす訳にはいかねぇな。」
「シイィッ!『刺突』ッ!!」
アンリーは、力み声と同時に両手に持つ短剣で、スキル「短剣技」LV1『刺突』を放つ。
「速いっ!・・だが、甘いっ!」
盗賊頭は、左腕の短剣を右に躱し、右腕の短剣を祝白銀製の刃波打剣の刃を使い、強制的にアンリーの右腕を右に弾く。
そして、刃波打剣をアンリーの首目掛け、横凪ぎにする。
「・・・『俊足なる電気の撃』ッ!」
スキル「黒魔法」LV3雷属性系統魔法『俊足なる電気の撃』。
『響く雷轟の閃光』の下位互換ながら、威力を落とし、速度を上げた魔法だ。
「お・・・速いっ!」
盗賊頭は一瞬、仲間を巻き添えにするのかと、思考を回すが、ミーセを見ると既に退避しており、魔法の効果範囲から出ていた。
((〈・・・〉避けれないっ!))
「知ってるかぁ!?祝白銀は、優秀な魔力伝導を誇るんだぜ!!」
盗賊頭は、『俊足なる電気の撃』を避けられないと悟ると、刃波打剣に大量の魔力を込め、『俊足なる電気の撃』に刃波打剣を当てる。
「ッ!?自暴自棄に成ったのっ!?」
「・・・違うっ!」
「ウウウウアァァァッ!」
盗賊頭は、そのまま刃波打剣を地面に突き刺す。
「フウゥゥ。・・・・ハァハァッ・・きっつ!」
「・・・ッッ!・・一時的な避雷針にしたみたい。」
「ウソッ!?・・避雷針何て、直ぐ出来るの!?」
「・・・ゴウが、経験が在れば、出来るって言ってた。」
「え~!?それじゃ、ミーセの雷効かないじゃんっ!」
「なっ・・・馬鹿なっ・・・!」
ミーセとアンリーが話していると、盗賊頭が突如不可解な声を出す。
「ん?・・後ろ?」
盗賊頭の視線が、自分達出はなく、自分達の後ろと気付いた二人は、後ろを向く。
「あっ!ヘル~ッ!」
「・・・【冥府・・【冥・・・【冥府狼】ッッ・・・ッ・・ッ!!??」
「・・・ヘルを見て、固まったみたい。」
「な、なな、何で、【冥府狼】がっっ・・・!」
「ヴォォオッン!」
「ん~?何々。ヘルに、任せろって?え~!?やだよっ!折角、ゴウに特訓の成果見せれるのにっ!!」
「・・・アンリー。ゴウが、そう言ってる。」
「ええぇぇっ!・・ぶううぅぅっ!」
盗賊頭をヘルに渡すのを嫌がっていたアンリーだが、ゴウに言われ、撫すくれながら、ヘルに盗賊頭を渡した。
その後、先程の戦闘が嘘の様に、盗賊頭はヘルに簡単に敗れ、アンリーの経験値を稼ぐ為アンリーに止めを刺された。




