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無限なる世界  作者: 終焉の王
デフロアンド~始まりの村~編
12/18

成果

『・・・!***・・***!・・・**。』


「チッ!こんな時にっ。・・黙りやがれっ!」


「ガルウゥ?」


「・・・いや、何でも無い。・・急ごう。」


「ヴッオッン!」




 現状、ゴウは、村の現状把握の為に村近くに隠れ、村を観察していた。


「くそっ。間に合わなかったか・・・!」


 ゴウの目に広がるのは、殆んど、いや、全くの原形を残していない村だった。


(見張りが居るって事は、地下は見つかって無いと言う事か。・・・・だが可笑(おか)しい。此奴等(こいつら)に、この短時間で村を此処(ここ)まで、破壊する事は出来無い。・・となると、可能性は、三つ。一つ目は、此奴等(こいつら)が、それほど高位の魔導具(アーティファクト)を持っていたか。だが、そんな事をしても利益が無いし、持ってるとも思えない。二つ目は、少数の奴が逸脱した実力者が居るか。三つ目は、此奴等(こいつら)が但の捨て駒か。・・・チッ、考えても拉致が明かない。取り合えず、吐かすか。)




「・・チッ!クソッたれがっ!何で俺達が、こんな処で見張りなんかしてんだよっ。」


 見るからに盗賊と言う格好をした、見張りの内の一人が、愚痴を洩らす。


「そんな荒れんなよ。依頼主は、ちゃんと俺達にも分けてくれるって頭が言ってただろうがよ。」


 盗賊の愚痴に、1人の見張りの盗賊が、答える。


「ケッ!大体何なんだよっ、あの野郎。俺達より強い癖に、態々(わざわざ)こんな小さな村襲わせやがって。」


「まあ、そう言うなって。今回の依頼料――グッバァ!?」


 盗賊の言葉は、最後まで続かなかった。何故なら、金属で出来た矢が、盗賊の頭に突き刺さり、貫通したからだ。


「「「「ッッッ!!??」」」」


 一瞬遅れで、盗賊の頭から脳漿(のうしょう)が飛び出、周りの盗賊達を汚す。


「お、おい!しっかりしろっ!おい!」


 (ようや)く、我に還った盗賊達は、急いで矢が突き刺さる盗賊の安否を確認する。


「駄目だっ。死んで―――」


 今度は、盗賊の安否を確認した盗賊に、矢が突き刺さる。


「に、にに、逃げろーー!!!」


 一人の盗賊の悲鳴を皮切りに、盗賊達はバラバラに、逃げ出す。


(無駄だ。)


 通常なら矢が届く距離では無いのだが、ゴウは風属性系統魔法を応用し、飛距離を爆発的に延ばしていたので、矢は全て盗賊達の急所に的中していた。


(一体・・・森に逃げたか。)




「はぁはぁはぁはぁ!!な、何なんだよ!?アレ!?」


 この男は、盗賊達の情報を得る為にゴウが逃がした、盗賊だ。


「はぁはぁはぁはぁ・・・。フゥハァフゥハァ。こ、此処なら、大丈夫だ。」


 男は、確証の無い事を自分に言い聞かせる様に、呟く。


「へ?・・・お、お前っ、だ、誰だ!?」


 男は、驚く。何時の間にか自分の前に現れた、その体格に不釣り合いな大剣を持つ子供に。


「やはり、大剣は慣れんな。切断面が汚い。」


「え?」


 そこで、(ようや)く盗賊は気付く、自分の腕がやけに軽い事に。男は、自分の腕を見る。そして、自分の右腕が、肩から切断されている事に気付く。


「ギャガガガガギギギギギギアアアアアアアアぁぁぁぁぁ!!!腕がっ!腕がぁ!!」


「うるせぇよ。」


 腕が切断された痛みで絶叫を上げる盗賊に、ゴウは無慈悲に大剣を振り上げ、一気に左腕を切断する。


「ギギギギギガガカアガガガガアアアァァァアァァァァアアア!!!!!」


「だから、うるせえよ。」


 そう言い、ゴウは、再度大剣を振り上げる。


「まがが、まっあああがっ!待っでっ!!ぐれえええぇぇ!!」


「じぁ、てめぇ等の事について吐いて貰おうか。」


「わががっだっ!!じゃべるがらラアァァ!!」




「‘巌溶かす悪炎の盗賊団ガーレズラ・オーラバズ’か・・。規模的には低級、団長の『奇剣(アーゾーバ)バボド』と言う奴はランクC、総合的には中級、か。・・弱い癖に仰々しい名前だな。」


「ビイグッ・・グブエェッ・・・ガザァ。」


 ゴウに両腕を切断され、失血死を防ぐ為「白魔法(ホワイト・マジック)」で止血をさせられた盗賊は、恐怖の余り狂乱しながら意味の無い言葉を叫び続ける。


「じゃ、死ね。」


 その言葉と同時に、ゴウは大剣を横凪ぎにする。次の瞬間、盗賊の頭部が吹き飛ぶ。

 ゴウは、その頭部を掴むと、一気にかぶり付く。


(不味くも無いが、旨くもないな。)


 (しばら)くの間、ゴウの咀嚼音(そしゃくおん)が辺り一体に響く。


(これ)で、全部だな。・・・中級だけ有って、不釣り合いな武具が多かったな。)


 盗賊を全て喰らったゴウは、盗賊の装備を回収していた。


〔アンリー、ミーセ、聴こえるか?〕


 ゴウは、アンリーとミーセに連絡を取る為に、「眷属支配マーベウェイ・コンマート」の『念話』を発動する。


〔聴こえるよ~。〕


〔・・・どうかした?〕


〔村が、盗賊に襲われた。〕


〔えっ!?〕


〔ッ!?・・・皆は?〕


〔大丈夫だ、地下に逃げてる。・・盗賊の大部分は殺したが、数人森に入った。そいつ等を、狩れ。〕


〔うんっ!分かったっ!!〕


〔・・・了解。〕


〔そいつ等は格下だか、対人経験はお前等より上だ。侮るなよ。〕


〔了解っ!〕


〔・・・大丈夫。村を襲った奴なんて、冥府に送るから。〕


〔そうか。・・後、1人だけ、刃波打剣(フランベルジェ)の使い手が居る。そいつには、手を出すな。〕


〔分かったっ。〕


〔了解。〕


(これ)で大体は大丈夫だ。・・・だが、気になる。何故、態々盗賊に村の襲撃を依頼する奴が居るんだ?)




「あぁ~っ。疲れたぞっ!お前等っ!」


「そ、そんな事言われたって、どうしようも無いですよ。頭。」


「チッ!大体、こんなだだっ広い森を全部探せる訳ねえだろうがっ!」


「だから、どうしようも無いですって、頭。依頼主が、そう言うんですから。」


「あのくそ野郎がっ!」


「いや、頭。頭が、連れてきたんじゃないっすか。」


「ああぁ!?五月蝿えぞ!お前等!」


「へいっへいっ。」


「チッ・・・ぅうん?」


そこで、盗賊頭は気付く。微かな、風切り音に。


「おい、チャブ!右にずれろ。」


「へ?へ、へい。」


 チャブと呼ばれた男は、右にずれる意味が分かずとも、盗賊頭の実力を知っているので、直ぐ様、に右にずれる。


「なっ!?」


「何だっ!?こりやぁ!?」


「ああぁ?見りゃぁ、分かるだろうが。投擲小刀(スローイングナイフ)だろ。」


 チャブと呼ばれた盗賊が、右にずれると同時に、チャブが立っていた場所に一振りの投擲小刀(スローイングナイフ)が突き刺さる。


投擲小刀(スローイングナイフ)!?何も聞こえなかったっすよ!!?」


「それに「索敵(スカウス)」に反応無かったですよ!?」


「・・どうやらこの依頼、一筋縄では行かなそうだな。」


(・・この小刀(ナイフ)鋼鉄製だか、中々の物だ。それに、刃全体に小さな窪みが有る。恐らく、毒だな。)


「う~ん、やっぱり避けるね。」


 次の瞬間、その空間に少女の物と思われる声が響く。

「・・・うん。格上には、効かない。」


 先の声の返答と思われる声と同時に、二人の少女が森の茂みから現れる。


「「「「「は?」」」」」


 普段なら、この様な森深くに居る事の無い少女達が居る事と、少女達が投擲小刀(スローイングナイフ)を投げたと思える会話をしている事に、盗賊頭を抜いた盗賊全員が固まる。


「おいおい、一筋縄じゃ行かねぇだろうが、こいつぁ、行かなすぎだろ。」


(・・強いな。ランク的に言えば、Dって(とこ)か。・・・こいつらじゃぁ、相手にならんな。)


 盗賊頭は、現実を有りの(まま)に受け止め、少女達の実力を探る。


「盗賊さん達、こんにちは。」


 一人の少女が、笑みを浮かべながら挨拶をする。その笑顔は、元が美少女と言える顔だったので、見惚れる様な笑顔だった。


「そして、さよなら。」


 しかし、次の瞬間少女は豹変し、絶対零度の無表情と冷酷な殺気をその顔に宿す。


「・・・『響く雷轟の閃光(イラン・ブラス・ラキ)』・・!」


 だが、先に動いたのは、もう1人の少女だった。

 スキル「黒魔法(ブラック・マジック)」LV3雷属性系統魔法『響く雷轟の閃光(イラン・ブラス・ラキ)』。

 雷を生成・操作できる魔法だ。更に、LV3以上の魔法は状態異常(バットステータス)発生率が5%以下から40%以上になり、この魔法は〔感電〕や〔麻痺〕等の状態異常(バットステータス)を発生させる。


 次の瞬間、盗賊達を『響く雷轟の閃光(イラン・ブラス・ラキ)』の雷が貫く。


「ッ!!・・チッ!」


盗賊頭は、逸速く反応し、避ける。しかし―――


「ぐぐうぅっ!・・ンググ・・!」


 完全には避けれず、状態異常(バットステータス)〔麻痺〕が発生し、身体が硬直する。


(・・〔麻痺〕・・かっ。)


 盗賊頭は、動かない身体を無理矢理動かし、回復薬(ポーション)を取り出し嚥下する。通常なら、それぞれの状態異常(バットステータス)に合った薬を飲むのだが、盗賊頭は〔麻痺〕が発生したと言っても、通常の〔麻痺〕より劣るので、回復薬(ポーション)でも状態異常(バットステータス)が治るのだ。


「ぐぅ・・があぁ。・・・チッ。全滅かよ。」


 盗賊頭は、〔麻痺〕を治すと周りを見渡し、『響く雷轟の閃光(イラン・ブラス・ラキ)』を喰らった盗賊達が全員即死したのを確認する。


「・・・避けられた?」


「やっぱり、ゴウが強いって言うだけ在るね。」


「ハアッ!?・・よく言うぜっ!いくら格下だとしても、無詠唱で此だけの数を1つの魔法で殺す奴等がよぉ!?」


「・・・変。」


「ああぁ?」


「貴方、強いけど、ランクCってとこでしょ?・・リンさんに聞いた話だと、ランクBクラスじゃ無いと、そんなに慎重じゃ無い筈だけど。」


「カァッ!枠に収まらん奴なんて、幾らでも居るわ。・・・まぁ、そうだな。強いて言えば、テメェらより、異常な奴等を山程見てきたからなぁ。自然とそうなるんだよぉ。」


「・・・あっそ。」


「じゃ、お喋りは此くらいにして、終わらせようか。」


「ああっ!そうしよう。今後の計画を立てなきゃいけねぇからなっ!」




「・・・居ないな。」


 アンリー達に連絡をしたゴウは、ヘル達を森に放ち盗賊達を探させ、自身も森を散策していた。


「ん?・・居たな。・・・っ。」


(何だ、こいつ?ランクB以上の実力に、神官の様な格好、更に装備の全てが、聖・神聖属性系の属性を備えてる。)


「まさか・・母さんを狩りに来たのか?・・・・なら、一層生かす訳にはいかねぇな。」




「シイィッ!『刺突(スタブ)』ッ!!」


 アンリーは、力み声と同時に両手に持つ短剣(ダガー)で、スキル「短剣技(ダガー・ムーブ)」LV1『刺突(スタブ)』を放つ。


「速いっ!・・だが、甘いっ!」


 盗賊頭は、左腕の短剣(ダガー)を右に躱し、右腕の短剣(ダガー)祝白銀(ミスラル)製の刃波打剣(フランベルジェ)の刃を使い、強制的にアンリーの右腕を右に弾く。

 そして、刃波打剣(フランベルジェ)をアンリーの首目掛け、横凪ぎにする。


「・・・『俊足なる電気の撃(ブーラド・ラグゼント)』ッ!」


 スキル「黒魔法(ブラック・マジック)」LV3雷属性系統魔法『俊足なる電気の撃(ブーラド・ラグゼント)』。

 『響く雷轟の閃光(イラン・ブラス・ラキ)』の下位互換ながら、威力を落とし、速度を上げた魔法だ。


「お・・・速いっ!」


 盗賊頭は一瞬、仲間を巻き添えにするのかと、思考を回すが、ミーセを見ると既に退避しており、魔法の効果範囲から出ていた。


((〈・・・〉避けれないっ!))


「知ってるかぁ!?祝白銀(ミスラル)は、優秀な魔力伝導を誇るんだぜ!!」


 盗賊頭は、『俊足なる電気の撃(ブーラド・ラグゼント)』を避けられないと悟ると、刃波打剣(フランベルジェ)に大量の魔力を込め、『俊足なる電気の撃(ブーラド・ラグゼント)』に刃波打剣(フランベルジェ)を当てる。


「ッ!?自暴自棄に成ったのっ!?」


「・・・違うっ!」


「ウウウウアァァァッ!」


 盗賊頭は、そのまま刃波打剣(フランベルジェ)を地面に突き刺す。


「フウゥゥ。・・・・ハァハァッ・・きっつ!」


「・・・ッッ!・・一時的な避雷針にしたみたい。」


「ウソッ!?・・避雷針何て、直ぐ出来るの!?」


「・・・ゴウが、経験が在れば、出来るって言ってた。」


「え~!?それじゃ、ミーセの雷効かないじゃんっ!」


「なっ・・・馬鹿なっ・・・!」


 ミーセとアンリーが話していると、盗賊頭が突如不可解な声を出す。


「ん?・・後ろ?」


 盗賊頭の視線が、自分達出はなく、自分達の後ろと気付いた二人は、後ろを向く。


「あっ!ヘル~ッ!」


「・・・【冥府(ヘル)・・【()・・・【冥府狼(ヘル・ウルフ)】ッッ・・・ッ・・ッ!!??」


「・・・ヘルを見て、固まったみたい。」


「な、なな、何で、【冥府狼(ヘル・ウルフ)】がっっ・・・!」


「ヴォォオッン!」


「ん~?何々。ヘルに、任せろって?え~!?やだよっ!折角、ゴウに特訓の成果見せれるのにっ!!」


「・・・アンリー。ゴウが、そう言ってる。」


「ええぇぇっ!・・ぶううぅぅっ!」


 盗賊頭をヘルに渡すのを嫌がっていたアンリーだが、ゴウに言われ、撫すくれながら、ヘルに盗賊頭を渡した。


 その後、先程の戦闘が嘘の様に、盗賊頭はヘルに簡単に敗れ、アンリーの経験値を稼ぐ為アンリーに止めを刺された。

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