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True Love in a Dream

作者: 西河 玲梓

この物語は、以前他サイトで掲載した作品です。


実際に高校生くらいまで年に1,2度見ていた夢を小説にしてみようと試みた作品です。

この作品を読んで、ちょっと切なく甘い恋心を思い出してみてください。

――あなたには忘れられない人は居ますか?初恋の人は覚えていますか?

 これは初恋の人を忘れられず、その頃の思いを大切にしつづけた一人の少女の物語である――



 あの人に始めて出会ったのは小学校の低学年の頃だった。 多分2年生の夏頃だったと思う。

 その人を初めて見たときの印象は「ハーフみたいな顔だな」と思い、凄く興味が湧いた。 しかも同じクラスだったし家も近かった。なにより、彼も親が離婚して母親に引き取られてここに引っ越してきたのだという。なんだか親近感も沸き、すぐに友達になれた。

 同じ子供会の班だったため毎日一緒に登下校をし、よく一緒に遊んだ。 お互いの家に遊びに行ったりもしていた。

 時々私に興味をもっと持って欲しくて帽子を隠してみたり、最新のゲームを買ったからと家に招いて一緒にそのゲームをしたりもしていた。

 近くに住む男の子の友達とみんなで一緒に近所の公園で蹴り野球や木登りとかして遊んだりもした。

 彼の誕生日には喜んでもらいたくて手作りのプレゼントもあげたり、バレンタインデーにはお小遣いでチョコを買って自分でラッピングして渡したりもした。


 一緒に居るだけで凄く楽しかった。凄く嬉しかった。


 でも、その日々は長くは続かなかった。 それは5年生になった矢先の出来事だった。 彼の母親が再婚することになったのだ。 しかも再婚相手の都合で東京に引っ越すことになったのだ。

 まだ小学校で生まれ育ったこの土地しか知らない私にとって、ものすごく遠い存在になってしまうと感じた。 私のことを忘れないで欲しくて、その頃流行りの曲やメッセージを吹き込んだカセットテープを作り、引越しの前日、彼の家の郵便ポストにこっそり入れた。

「君と居ると凄く楽しかった。 ずっと忘れないで欲しい。」

そんなメッセージだったと思う。


 それから数週間後、引越し先から封書が届いた。 彼からだった。

 中には、私が送ったテープが入ってた。

「持っていて欲しかったのに・・・・・・」

 改めて聞くと凄く恥ずかしい内容だった。ウラ面に切り替わると彼の声が聞こえてきた。

『メッセージありがとう』

 久々に聞く彼の声だった。

『俺も楽しかったよ』

 凄く嬉しかった。 ちゃんと聞いてくれたんだ。

 でも、そのあとの言葉は凄くショッキングな内容だった。

『俺が居るだけで楽しかったって・・・・・・・俺はおもちゃか?』

「違う! そんなつもりで言ったんじゃないよ!」

 テープから聞こえたのそ言葉に思わず答えてしまった。 そのあとは、彼が気に入ったのであろう曲がずっと続いていた。

 何度も何度も繰り返し聞いた。

 彼の声を忘れないように・・・・・・彼のことを忘れないように・・・・・・


 その後、何度か彼から送られて来た封書の裏に書いてあった住所に手紙を送ったが、一度も返事は返ってこなかった。

「嫌われちゃったのかな・・・・・・」


 彼に届かなかった手紙のように私の思いも届かなかったようだ。 いつの間にか流れた涙と共に思い知った初めての失恋を受け入れることが出来なかった。



<夢現>


 あれから2年の時が過ぎ中学生になったある日、彼の夢を見た。 いつも一緒に遊んでいた公園で遊んでいたり、当時住んでいた私の家で遊んだりしていた。 あの頃のままの姿で楽しかった思い出を夢に見ただけだった。


 しかし、その後から夢の様子が変わっていった。


 数週間後、また彼の夢を見た。

 小高い丘の上の洋風の一軒家に彼は住んでいて、私は彼に会うためにその家に向かって歩いていた。 家が見えてくると、その家の前で彼が私に向かって手を振っていた。 私は彼に向かって手を振り返した。

 そこで目が覚めた。

 いつもとは違う雰囲気の夢だった。


 次に見たのはそれからまた数週間後だった。


 久しぶりに間近に見た彼は私と同じように成長していた。

「久しぶり。元気だった?」

 優しい笑顔と久しぶりに聞いた声は小学校の頃のままだった。

「元気だったよ。」

 他愛ない会話を交わしながらその日の夢は終わった。

 少し成長した彼は私より少し背が高くなっていた。 整っていた顔立ちもますます精錬された感じで、予想通りのイケメンに成長していた。


 またそれから数週間後、彼が夢に現れた。

 その日は同じ部活の男子を好きになり振られた日だった。

「どうしたの? なんだか悲しそうだね」

 心配そうに彼は私の顔を覗き込んだ。

「今日ね・・・・・・好きな人に振られたの」

「そうだったのか。それでそんなに悲しそうだったんだね」

 私の頭をくしゃくしゃと撫でて彼は私に笑いかけた。

「大丈夫。君にはもっと良い人が現れるよ」

「うん・・・・・・」

 泣きそうな私を優しくなだめてくれる彼は、私の頭を撫でながら優しく微笑んでいた。


 目が覚めると涙を流していることに気付いた。


 現実世界では学校では一人で居ることが多くなりイジメの対象になりつつあった。 そして家では、両親が離婚して一軒家の暮らしから2LDKのアパート暮らしになり、私を育てるために親は働きに出ていて留守番する日が多くなった。 その為に私は常に一人の時間を過ごす事が多くなった。 そのせいか、少しづつ・・・・・・・そう少しづつ夢の世界へ逃げるようになっていった。


「今日はどうしたの?やけに早く来たね」

「早く会いたくて・・・・・・少し早く寝ただけだよ」

「そうか・・・・・・」

 彼の少し悲しそうな表情をしていた事にその時の私は気付けなかった。

 ただただ彼に会いたくて、彼との時間が待ち遠しくて、起きている時間が苦痛になってきていた。 起きてる時は、少しでも彼の事を思い出すかのように授業中も休み時間も自分の席に座ったままずっと彼の似顔を描いていた。

 彼はいつも私に微笑みかけてくれた。 いつも話を聞いてくれた。 いつも楽しい時間を共有してくれた。 それだけで十分だった。 それが私の全てになっていた。


 そして私は現実世界を単なる生きるための世界に変え、夢の世界を生活の中心に考えるようになっていった。


<夢と恋心>


 高校受験が始まってからは親の勧めで県立の高校に入るための受験勉強の日々が続き、彼の事を考える時間が減っていった。

 時々彼が夢に現れはしたが、微笑みかけ「頑張れ」と言うだけで話かけようとするといつも目が覚めてしまった。


 そのおかげか勉強に集中することが出来、そして希望通りの県立高校に合格することが出来た。

 合格が決まった日は、彼がお祝いをしてくれた。

「頑張ったね。おめでとう」

「ありがとう。でも会えないのは寂しかったよ」

 私は彼に抱きついた。 すると彼は優しく抱きしめてくれた。 そしてそっと額にキスをした。

「頑張ったご褒美」

 驚く私に彼はちょっと意地悪そうな表情を浮かべウインクした。

「本当によく頑張ったね」

 今度は優しく私の両肩を持ち私を反転させそっと背中を押した。

「さあ、新しい道を歩いて行くんだ。 本当の君の人生を切り開くために」

「本当の私?」

 振り向こうとすると彼はそれを静止し、ゆくりと私の肩に顔を乗せまっすぐ私の目線の先に指を指した。

「そう、君の道だよ・・・・・・ほら、道は続いている。 現実世界へ、君の歩むべき道だよ。」

 彼の指の先を見ると遠くに光が見えた。

「でも、私は・・・・・・」

 振り返ろうとした瞬間目が覚めた。 耳には彼の最後の言葉がこだましていた。

「現実世界へ・・・・・・」


 高校生活が始まってからは、彼の夢を見る回数が劇的に減っていった。 その代わり、現実世界で新しい生活をしていくうちに好きな人が出来ていた。

 その人は、口数は少ないもののさりげなくサポートしてくれたり、色々と優しく教えてくれた。

 始めは仲の良い友達としての日々を過ごしていた。 そのうちその人の事がもっと知りたくなっていった。


「それはきっとその人の事好きなんだよ」

 数日ぶりに現れた彼に、その人の事を相談するとこう言われた。

「そうなのかな・・・・・・」

「よかったじゃん。好きな人が出来て少しは楽しめてるんじゃない?」

 微笑む彼の顔を見て少し寂しさを感じていた。

 私は彼に会える時間が少なくなるのは嫌だったのに対して、彼は私が現実世界で楽しんでくれることを望んでいるようだった。


 その日からは彼の夢を見る回数がどんどん減っていき、2年生になる頃にはほとんど見なくなっていた。

 見ても会話はなく、ただ遠くに微笑む彼が佇むだけの夢だった。

 そのうち現実世界が忙しくなり、彼の事を考えることはなくなっていった。 



 高校時代は人を好きになったり、後輩の世話をしたりと、中学時代と違ってかなり充実した生活を送ったせいだろうか・・・・・・

 高校を卒業するまで、あの日以来彼の夢は殆ど見なくなっていた。

 高校卒業式の夜、久々に現れた彼は一言「卒業おめでとう」と言っただけだった。


 あれから何年の月日がたっただろうか・・・・・・

 私は彼の存在すら忘れていたが、好きになった人に酷い裏切りに合い、親友に裏切られ、親が急に他界してしまったり、孤独になり家に引篭るようになっていった。

 そんな時、再び彼が現れた。

「どうしたの?そんな悲しそうな顔をして・・・・・・」

 再び現れた彼はまたあの頃と同じように私と同じくらいの年格好に成長していた。

「・・・・・・・不思議ね・・・・・・・」

「何が不思議なんだい?」

「貴方だけは変わらずにいるなんて・・・・・・やっぱり私には貴方しか居ないのかも・・・・・・・」

 彼は不思議そうに私の顔を覗き込んできた。

「変なことを言うね」

「僕はいつも君の中で君を見てきたよ」

 彼は私の後ろから抱きしめながらそっと囁いた。

「僕はずっと君だけを見続けてきたんだよ。今までも、そして、これからも・・・・・・・」

 私は彼のその腕の力に体を委ねていた。

 そしてその日、彼と一緒にベッドに横になって初めて大人のキスをした。

 その日から彼と一緒に居ることが多くなり、私は夢に囚われていった。

 そして完全に夢から覚めることを拒否し始めた。


「もう離れたくない」

 ベッドの中で彼にしがみついた。

「君がそう望むのなら・・・・・・」

 彼はそう言うとそっと両瞼にキスをした。

 私はそのまま眠りについた。


 目が覚めると、隣には柔らかい微笑みを浮かべた彼がいた。

「おはよう、お寝坊さん」

 そう言うと軽く私の額を小突いた。

「おはよう」

 私は普通に返事を返したが、ふと我に返って隣にいる人物をもう一度見た。

「え?なんで?あなたが居るの?」

「君が望んだでしょ?戻りたくないって」

 そう、彼が私の瞼にキスをしたとき、私は心から彼と居る事を望んだのだった。

「あれはおまじないだったんだけど、君が本当に望んで居たから、それが現実になったんだよ」

 優しく微笑む彼を見て、夢ではないのかと自分のほっぺたを叩いてみた。

「痛い・・・・・・じゃあ本当に願いが叶ったのね」

「そうだよ。僕たちはずっと一緒だよ」

「嬉しい!やっとあなたとずっと一緒に居れるのね」

 目に涙を浮かべ彼に抱きついた。

 彼は優しく抱きしめて返した。


 こうして私は真実の愛を手に入れた。

 そう、夢の世界の住人になったのだ。

 今となってはその選択が本当によかったのかどうかなんてどうでもいい話・・・・・・私には永遠に続く愛を手に入れたのだから・・・・・・

途中でネタ切れというか、執筆意欲が切れてしまってなんだか尻切れトンボのような終わり方をさせてしまい、あまり納得していない作品の一つです(汗)

今後、意欲が湧いたら再構成して書き直そうと考えてます。

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