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来訪者 2

最終話まで着々と近づいてきております。

 気がついたら朝だった。


 どうやら爆睡していたようだ。


 まあ最も簡単な現実逃避は夢の世界へ旅立つことだからな。


 ……泥のように眠っていて夢を見た記憶はいまいちないが。


 しかし今日は学校があるからもう起きなくてはいかん。


 サボりてえ……。



 ふああああと大欠伸をしながら階段を下りていくと、いつものように朝食の用意をしている祐史から「おはよう、兄さん」と声をかけられた。


 ああ、と応えて用意された朝食を頂く。


 今朝のメニューはオニオングラタンスープに、レタスとトマトの自家製ドレッシングをかけたサラダ。それにキッシュとフルーツのヨーグルトソースがけ。


 食後にはロイヤルミルクティー。


 どれも文句なしにうまい。


 もう祐史は料理人になるのをおすすめする、マジで。


 祐史が朝食の後片付けをしている傍で、ぼんやりとテレビのニュースを見ていたら呼び鈴が鳴った。


 御加賀美が迎えにくる時間にしてはまだ早い。


 こんな時間に誰だろうかと首を傾げる。


 食器を洗う手を止め玄関に向かおうとする祐史に、俺が出ると言って立ち上がった。


「はい?」 


 そう言いながら玄関のドアを開けると、そこにはにこやかな笑みを浮かべた近衛が立っていた。


「…………近衛?」


「やあ、辰巳。おはよう」


 近衛は俺にそう言うと、片手をひらひらと振った。


 しかし気になるのは、もう片方の手にがしりと抱え込まれた御加賀見弟、恭弥の姿だった。


「雅紀お兄ちゃんー! この人さらいから助けてー!」


 半泣きの恭弥は、どうにか近衛の腕から逃れようともごもごしながら俺に向かってそう叫んだ。


 いや、助けてと言われましても……。


「ははは、人さらいとは物騒だよね。ボクは正式に君の教育係に指名されたんだけど。あまりに聞き分け悪いと…………」


 近衛は笑みを浮かべたまま、恭弥の耳元に口を近づけるとごにょごにょとなにかを囁いた。


 途端、恭弥の動きがぴたりと止まり、真っ青な顔になり、ガクガクブルブルと震えだした。


「うん、これで静かになった」


 いや、静かになったっておまえ、なに言ったんだなにを。


「辰巳、ボクね、この子の教育……再教育を請け負ったんだ」


 再教育、と言い直したところに、なにやら悪意を感じるのが俺だけか。


「でね」


 近衛は続けて言った。






「だから辰巳。また、しばらくお別れだよ」 


次回もよろしくお願いします。

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