相違
サブタイの相違は、ゆっきーと近衛君+たつみんと近衛君の親友観の二点です。
その俺の言葉に、沈黙が周囲の空気を支配した。
それを破ったのは、近衛。
俺に両頬を叩かれ、瞬間目を見張ったものの、すぐににっと笑みを浮かべた。
それを見て、やはり俺は思う。
ああ、これが近衛だ、と。
「――――――――ボクが悪い? ボクのなにが? 当然、教えてくれるんだよね? ねえ、辰巳?」
「じゃあ逆に聞くが、おまえのどこが悪くないと言える?」
質問に、そう質問で返す。
「んー? ボクに心当たりはないけど……、辰巳には、あるんだね?」
「……俺のことで言えば、どうして何年も音沙汰もなかったのに、また突然現れてそんなあっさり親友だなんて言える?」
この問いに近衛はこてりと首を傾げてみせた。
「んー? 昔ボク言ったことあると思うけど。親友っていうのはどれだけ会ってなかろうと久々顔をあわせたらさっきまで一緒にいたかのような関係でありたいって」
「どこにいるのかも、なにをしているのかも、そもそも無事でいるのかも知らせることもしないでか」
己のことを親友とまで言ってのけた人間が突然消えた。
理由も、別れの挨拶の一言もなく。
心配しないわけがない。
そして。
そうなって初めて相手が「どこの誰であるか」を知らなかった事実を知った。
住まいも、連絡先も、なにも知らない。
愕然とした。
いつか自然にわかる時がくるだろう。
そう思っていたが、それは怠慢だったのか。
しかし、時間は逆には溯らない。
自分にはどうすることもできなかった。
それはいつまでも抜けない棘のように心に引っかかっていた。
「おまえは、身勝手だ」
そして、突然現れた近衛は時間を感じさせない態で俺に接してきた。
その、昔通りの飄々とした様子で。
いっそ、近衛らしくて気が抜けたが、どこか心にしこりが残っていた。
なにか、俺に言うべきことはないのか、と。
恐らく、「悪かった」とその言葉ひとつであっさりそれは解けたかもしれない。
そうしたら、俺も「まったく不義理な奴だ」と受け流すことができたのかもしれない。
しかし、実際には近衛からはそのような謝罪はおろか弁明も説明もなく、俺は身動きをすることもできなかった。
「おまえの言う親友とは、おまえにとって都合がいいというだけの存在のことか?」
もし、そうであるなら。
「おまえの言う親友には、俺はなれない」
近衛の目が、丸く開かれた。
そして。
その口が言葉を紡ごうとして、なにも発せられずに閉じるのを見た。
口も頭もよくまわる近衛にしては、珍しい反応だった。
それほど、俺が言った言葉が意外だったのか。
ふっと息を吐き、俺は思考を入れ替える。
「まあ、それはそれとして……」
つい積もり積もった鬱憤から怨念めいた俺自身のことを言ってしまったが、ここで解決すべきは幸広のこと。
根底は一緒かもしれないが。
ただ、解決すべき落としどころは違うだろうから。
近衛と幸広の多々ある類似点。
それは、幸広が意図して模倣した近衛の言動にあるなら納得できる。
だけど。
俺自身感じ、思ったこと。
近衛と幸広の類似点。
ただ、それ以上に異なる……。
「おまえと幸広は全然違うだろ」
近衛君的にはたつみんに「親友じゃない」言われガーン状態だが、たつみんは「それはそれで」とあっさり流してる(実際はあっさりってわけてもないけど、脳内モノローグは他者には聞えないからね)。
たつみん罪づくりな男です。




