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放課後の誘い

いよいよラススパートへ。

しかし進行は非常にスロー。

「辰巳、辰巳、たーつみ」

 

 教室のドアの所から聞こえたそんな声に振り返ってみれば、近衛がにこにこと笑いながらちょいちょいと手招きをしていた。


「…………なに」


 近衛に会うのは、突然目の前に現れ再会してから一週間ぶりのことだ。


 今までなにをしていたのか、姿を見せなかったのに今更なんだ、というもやもやした気持ちを抱えながら、俺は近衛に近づいた。

  

「んー、辰巳、今日の放課後暇? 予定はない? とゆーか確認済だからおっけだよね」


 確認済ってどこで、誰に。


 つか確認しておいて返事を聞く前に断定するなら質問の意味は。


 そしてそもそもなにがオッケーなんだ。


 つっこみどころ満載な近衛の問いかけに、俺は眉をしかめた。


 そんな俺に、近衛はこてりと首を傾げてみせた。


「んー? いったい何がおっけかだって? 辰巳、ボクだからいいけど、きちんと声に出さないと一見さんにはまずわからないからね? コミュニケーションの第一は対話だよ?」


 ほっとけ。


 つかなんの用だ。


「んー、早く話を進めろって? せっかちはよくないよ。短気は損気と言うだろう? 少しは親友であるボクとの他愛もない会話を楽しもうという心はないのかい?」


「……」


「はいはい、わかったよ。じゃあ本題に入るからね。辰巳、今日の放課後、ボクに付き合って一緒に行って欲しいところがあるんだよ」


「……どこに?」


「幸広雪路のところ」


 思いもかけない名前に、俺は目を丸くした。


 幸広は、近衛が現れたのとは入れ違いになるように体調不良が原因で学校を休んでいる。


 もう一週間と、少しそれが長いのが気にはなっていたが、風邪でも拗らせたかと思っていた。


 この場で近衛の口から聞くことになる名前だとは思わなかった。


「何で……」


 おまえが?


 そして、俺を?


 言葉にしなかった俺の質問を、やはり近衛は正確につかんだようで、にっと笑みを浮かべた。


「な・い・しょ……なーんて、嘘だよ、ちょっとしたジョークだよ。そんな睨まないでよ、辰巳」


「近衛……」


「うん、まあ、後でわかるから。……ね、辰巳。放課後、付き合ってくれるよね?」


「……あ」


「よろしくてよ」


「もちろんです!」


 俺の返事に被せるようにしたその声に視線を向けると、そこには御加賀見と萌田が立っていた。


「んーん? お嬢様にもえちゃん? 君達は別に誘ってないんだけど。関係ないし」


「関係など、大アリですわ!」


 御加賀見は腕を組みながら言い切った。


「近衛はわたくしの部下ですし、幸広会計はわたくしの学校の生徒であり生徒会の役員でありクラスメイトですもの。それにわたくしの辰巳が関係していることであれば、わたくしも関係あるに決まっているでしょう?」


 いや、近衛や幸広のとこの理由は別として、最後の理屈はわからんし。


「わ、わたしも関係あります!」


 負けじと萌田も声を張り上げた。


「ゆ、ゆゆゆゆ幸広君は、わ、わたしだって、お、お友達です。こんなにお休みしてて、し、心配なんです! だ、だからわたしも連れて行ってください!」


 そう言う萌田の顔をそのまま卒倒するんじゃないかと思えるほど真っ赤だった。


 大丈夫か萌田。

 

 しかしその萌田の言い分は御加賀見の理由よりよほどわかりやすい。


「んー」


 近衛はぽりぽりと頭をかくと、まあいいか、と頷いて言った。






「じゃあ、今日の放課後に。よろしく」


  

次回はゆっきー宅へ。

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