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ショッピング

今回はお嬢様回になります。

「雅紀、明日のお休み、わたくしに付き合って下さいませ」


「面倒くさいから嫌だ」


「相変わらずの、即答ですわね……」


 週末、明日はだらだら寝て過ごそうと思ってたら、御加賀見からそんな誘いを受けた。


 もちろん、断る。


 が、御加賀見は諦めなかった。


「そうくるとは思っていましたわ。ですが、雅紀、こちらをご覧になって」


 御加賀見はさっと二枚の紙片しへんを取り出して見せた。


「それは……」


「そうですわ。雅紀の好きな監督の映画の試写会の招待券です。かなりのレアチケットのようですわね。日程は明日、ですわ」


「付き合うってそれか?」 


 それなら、話は別だ。見に行ってもいい。


「うふふ、やはりこれの効果は高かったようですわね。ですが、これと付き合ってほしいことはまた別ですの。というより、一緒にこれを見に行った後、ですかしら」


「……付き合ってほしいことって、なんだ?」


 御加賀見はチケットを口元にあてると、にっこりと微笑んだ。


「ショッピング、ですわ」




 翌日、俺と御加賀見は駅で待ち合わせた。


 家が隣なんだしわざわざ外で待ち合わせなくてもと思ったが、御加賀見はなにやら黒いオーラを漂わせつつ、笑顔で言った。


「雅紀があの小姑を抑えられるのでしたら、わたくしはそれでかまいませんわ」


 俺は即座にそれでいいと頷いた。




「お待たせしました、雅紀。なにを着て行こうか迷ってたらあっという間に時間がきてしまって」


 御加賀見は小走りでそう言いながら俺に近寄ってきた。


 周囲の視線をこれでもか、とかき集めながら。


 ああ、すでに帰りてえ……。


 でも映画は見たい、のでしばしの我慢だ。


 御加賀見は春らしい清楚なワンピースを身に纏っていた。


 ずいぶん、着る人間を選びそうな格好だな。


「雅紀、せっかくならもっと素直な評価が欲しいですわ。似合ってる、とか可愛い、とか」



 …………最近なんで俺のまわりの人間はしゃべってもない俺の思考をよんでくるんだ…………。




 結果、試写会の内容は非常に満足のいくものだった。


 そして、昼食を食べた後、俺はその後のお約束・ショッピング付き合っている。



「雅紀、これいかがですか。似合ってます?」


「ああ」


「雅紀、こちらはどうですか。可愛いですか?」


「ああ」


「雅紀、これなんかいかがです? ちょっと背伸びしすぎかしら?」


「ああ」


「雅紀、せめて返事はわたくしを見て答えてほしいですわ。試写会のパンフレットばかり見てないで」


「ああ」


「雅紀、わたくしたち婚約いたしましょう」


「嫌だ」 


「雅紀はつれないですわ」


 ぷうっと御加賀見は膨れた。


 つか婚約はないだろ婚約は。




 その後散々いろいろな場所に連れまわされ、家を出た時は朝だったのに帰りは夕方になっていた。


 疲れた……。



「楽しかったですわ。わたくし、満足です」


 そりゃよかったな。


 手荷物はすべて自宅まで送りつけたので身軽だった。


「つかおまえ、わざわざ買い物行く必要なんかないだろ。デパートの外商が自宅まできたり、オーダーメイドしたりしてんだから」


「あら、それとこれとは別ですわ。女の子ですもの。必要なものをそろえるのではなくて、自分でいろいろ見て選びたいのです。それに、なにより雅紀と一日一緒にいられて、本当に楽しかったですわ」


 御加賀見はさらさらの髪を揺らしながら振り返った。


「最近、わたくしちょっと煮詰まってたのかもしれません。だって、雅紀のそばにはいつも誰かいて、なかなかわたくしとふたりきり、にはなっていただけないのですもの」


 そして、御加賀見は女神の美貌、と謳われる微笑みを浮かべた。


「雅紀、今日は本当にありがとうございます。わたくし、とっても嬉しかったですわ。ですから、また一緒に出かけてくださいませね?」


 そう言われて俺は思った。






 …………女のショッピングに付き合うの、まじ面倒くせえんだけど。





 





次回はたつみん登場なしです。


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