親友 3
気がつけば半月。更新遅れてすみません。
あれは、御加賀見が俺の家の周囲の土地を買収し始めた頃だったか。
いつものように顔をみせた近衛は、どこか難しい顔をしていた。
なにか気にかかることがある、というような態だった。
いつもにこにこと笑みを浮かべている近衛にしては珍しい。
なにかあったのか、と問う俺に、近衛は少し小首を傾げて言った。
「うーん、…………ないしょ?」
なんだそりゃ。
呆れる俺に、近衛はますます首を傾げてみせた。
「というか、なんというか、ボクだけの問題でもなくて……、うーん、んー? いや、まあいいじゃないか。あ、そんなことよりボクこの前初めて辰巳の弟を見たよ。あんまり似てないね?」
あいかわらず肝心なことは口にしない上、いきなり話題が飛ぶ奴だ。
「そうか?」
というか初めて見たのか。
俺とは約束もなしに、こんなに頻繁に顔を合わすのに。
「うん、外見はまったく。内面も違うよね、きっと」
「なんでそう思う?」
「うーん? なんとなく? 辰巳の弟のことは見かけただけで実際に知ってるわけじゃないし。でもボク人を見る目はけっこうあると思うんだよね」
そう言うと、近衛はにやっと笑ってみせた。
「そうか?」
「そうだよ。だから、ボクは辰巳と親友になったんじゃないか」
だからいつ親友になったのか。
そんな俺の心のツッコミはスルーで近衛は続けた。
「その場限りの友達なんていらないんだよね。せっかくつくるなら一生モノがいいよね、やっぱり。たとえ、しばらく顔をあわせることがなかったとしても、久しぶりに会ったらなにごともなかったように普通に話が出来る、そんな関係がいい。辰巳となら、そんな関係が築けると思うんだ」
「……そうか?」
「そうだよ? ボクは人を見る目はあるつもりだからね」
そう言って笑う近衛に、俺は軽く溜め息をついた。
勝手に決められて、勝手になられた親友。
親友と言いながら、己のことは何も話さない近衛。
親友と言いながら、俺のこともあまり尋ねることもしない近衛。
……だけど、悪い気分じゃない。
一生モノだと言うのなら、それこそ時間はたくさんあるのだろうし。
今はまだ、このままでいいか。
そう、その時は思った。
ふと腕時計を見た近衛は声をあげた。
「あ、もう帰らなきゃだな。じゃあ辰巳、今日はこれで。またね」
「ああ」
そう言ってその日、笑顔で手を振る近衛と別れた。
それから、近衛が俺に前に姿を見せることはなかった。
たつみん回想回終了です。




