親友 2
だいぶ続いてるたつみん回想回。
最初に書こうと思ったのはこの回のこの末尾のセリフだけだったんですが。
「ここでなぞなぞです。友達と親友の違いはなにかな?」
ある日、近衛がそんな質問をしてきた。
その質問は唐突だったが、近衛の言動は基本大体が唐突なものばかりだった。
「友達、と、親友、の違い?」
「うん」
問い返した俺に、近衛はにこにこと笑いながら頷いた。
友達、と親友か。
親友は、親しい友、だよな。
普通に仲の良い奴が友達で、その中で一番仲の良い奴が親友、か?
そんな当たり前の答えでいいのか?
「ん? わかんない? 簡単なことだと思うけど」
「…………」
簡単なことなら、やっぱりこれでいいのか?
「たーつーみー?」
「普通に仲良いのが友達で、友達の中で特別な一番が親友だろ」
「んー? それが辰巳の解答?」
「ああ」
すると、近衛はにっと笑みを浮かべ、両手で大きくバッテンの形を作って言った。
「はっずれー」
あ?
違う?
「じゃあ正解なんなんだ」
「単数と複数だよ」
「…………は?」
「だから、単数と複数。友達は複数、親友は単数。複数とはふたつ以上、単数はいち」
「…………」
「あれ? わかんないかな。じゃあ親友を複数で示せば親友達。はいこれ正解、わかった?」
「……ひっかけ問題だったのか」
その言葉の意味ではなく、その漢字そのものの。
疲れたように言う俺に、近衛はいつもの人を喰ったような笑みで言った。
「まあ、なぞなぞとは大体こんなものだけどね。でも、辰巳の言ってることももっともだと思うよ? だけど、強いて言えば、mostやbestよりonlyやspecialのが望ましいかな」
「…………?」
「ん? わかんないかな?」
「……どういう意味だ?」
「んー、ないしょ? ……ってほどでもないんだけど……」
近衛は顎に手を当てると、首を傾げて見せた。
「まあ、じゃあヒントだね。ボクにとっての辰巳ってことさ」
「……ますますわからん」
「あれー? おかしいなー」
そう言って、また近衛は笑った。
近衛は俺とは反対にいつも笑みを浮かべている奴だったが、その腹の中はまったくと言って読めなかった。
近衛の抱えている事情もまったくといって知らなかった。
だから、この時も、本当はどう思っていたのかなんてわからない。
だから、俺は近衛の真実なんて知らない。
ただ、近衛はこの時こう言った。
確かに言ったのだ。
どこか、眩しそうな笑みを浮かべながら。
「ボクにとっての親友は、辰巳ってことだよ」
回想回はあと1、2回で終了、予定。




