親友
お待たせした上、短くてすみません。
それから、俺と近衛の邂逅は何度も続いた。
待ち合わせをしているわけでもないのに、ばったりと出会うのだ。
そんな時、いつも近衛は「やあ、また会ったね」と笑って手を振った。
そして、偶然出くわしたその後は、しばし一緒に時を過ごすのが慣例となっていた。
俺は近衛にどこに住んでいるのか、学校はどこなのか、ここらによく現れるのは何故なのか、何度か尋ねてみたこともある。
しかし、近衛の返事はいつも決まっていて。
「んー? な・い・しょ」
そう言って人を喰ったような笑みを浮かべるだけであった。
また、俺が「近衛君」と呼んでと言われたのをスルーして、「近衛」と呼んでも何の特別な反応も示さない。
俺のプライベートのことを近衛が尋ねるわけでもない。
近衛は、そんな奴だった。
だけど、近衛のことを何も知らないかと言えば、そうではない。
いわゆる一身上に関することについては近衛の口はかたかったが、近衛は自分の感じた思いはよく口に乗せて俺に語った。
近衛は、周りの景色、季節の変化を楽しみ。
最近読んだ面白い本の話をし。
世界の謎に疑問を抱き。
時には怪談話に興じてみたり。
たまたま見かけた人の愉快な行動を語ってみたり。
かと思えば、哲学の話や政治経済の話。
法の盲点や世界紛争の話題。
真面目な話が続いたかと思えば、お笑いや動物やスポーツや。
近衛が取り上げる話のネタはとりとめがなく、中には当時の俺ではまったくわからないものも多かったけれど。
近衛は本当に変わっていて、ころころと興味対象がぐるぐる変化する万華鏡のような、そんな奴だったけれど。
それでも、近衛の横は何だか居心地が良い気がして。
いつの間にか、近衛と過ごす日々が当たり前のことになり。
気がつけば、あっという間に月日は過ぎ去っていた。
たつみん回想回続行です。




