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御加賀見という家

あれ? ちょいとシリアスかも。

 俺は飛び出した御加賀見弟が出て行った方を呆気にとられて見ていたが、御加賀見は気にするふうもなく紅茶を飲んでいた。


「……今のはちょっと、きつい冗談だろ」


 名前を忘れた、はない。


「冗談ではないのですけれど」


 御加賀見は不思議そうに首を傾げた。


「実際ずいぶんと久しぶりに会いましたし、顔をあわせること自体、今までで両の手で足りるくらいですし。そもそもあの子が生まれてから、一緒に家に住んだこともありませんもの。弟と言ってもあまり実感もわきませんわ」


「そりゃどういう……」


「これが、御加賀見家なのですわ」


 御加賀見はそう言って、微笑んだ。


「けれど、名前を見る機会はあります。記録にある名前は覚えます。覚えるのは、家の為に必要なことだから。名前を見かける時、それは例えば、プロジェクトを成功させた時、何かを発案しそれを認められた時、グループの収益に大きく貢献した時。けれど……」


 指を折りながら、御加賀見は首を横に振った。


「あの子の名前を見かけたことはありません。だから、覚えてないのですわ」


「そりゃそーだろ。まだ中坊くらいだろ」


「わたくしは、もっと幼いころからこの家の為貢献していましたわ」


 そう言うと、御加賀見は立ち上がった。


 そしてそのまま窓際まで歩くと、そっとカーテンに手をかけた。


「別に、それはそれで構いませんけれど。だけど、あの子は御加賀見本家の嫡男。このままでは跡は継がせられません。それは、少し困りますわね」


「困る?」


「ええ。このままではわたくしが御加賀見家の跡継ぎですわ。御加賀見の家は実力主義ですもの」


「それが、困るのか?」


「ええ。だって、雅紀の家にお嫁入りできないではありませんか。雅紀は婿には入ってくれませんでしょう?」


「……」


「はは、というか兄さんと千草さんの結婚自体あり得ませんがね」


 乾いた笑みを浮かべると、祐史も立ち上がった。


「さあ、兄さん。もうお暇しましょう。ここにこれ以上いる意味もないでしょう」


「ああ……」


 祐史につられるように俺も立ち上がった。


 そして、窓際に立ったままの御加賀見に、部屋を出る前少し迷いながらも声をかけた。


「御加賀見」


「はい、雅紀」


「それでも、俺は……。家族は家族だ思うから……」


 記録に名前がないから覚えられないなんて、そんな寂しいこと、言うなよ。


 呟くようにそう言った俺に、御加賀見は透明な笑みを浮かべた。


 返事は、なかった。




 もやもやするような気分で御加賀見の家を出た俺に、祐史は苦笑気味に声をかけてきた。


「兄さん。兄さんが気にするようなことじゃないよ。しょせん、その家のことはその家の人にしかわからないものだし」


「……ああ、……ん?」


 御加賀見の門を出た所の隅に、蹲っている人影が見えた。

 

「あれは……」


 祐史も気がついたようだ。


 そこにしゃがみ込んでいたのは……。


「御加賀見、弟……?」


 俺の声に反応して、御加賀見弟は顔を上げた。


 そこには途方に暮れたような色があった。


 どうやら、まだトラブルは終わってはいないようだった。






 ああ、頭痛え…………。

これはコメディーなので、早くシリアスモード抜けたいですね。

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