電車にて 2
シリアスパート2。
テーマパーク編はこれにて終了です。
テーマパークからの帰り、疲れ切った様子で萌田が電車に乗った途端うとうととしだした。
それにつられるように、御加賀見、祐史も夢の中へ。
「……萌田はともかく、御加賀見や祐史までこんな公共の場で寝るなんて、意外だったな」
思わず俺が呟くと、幸広は苦笑した。
「きっと、昨夜楽しみで眠れなかったんだよ、お姫様は。天使ちゃんははしゃぎ過ぎて疲れたんだろうね。弟君は……、遅くまで策略を練ってたのかな?」
「あー……」
あり得る、そう思った。
「お前は眠くないのか?」
「うーん、疲れはしたけど、ここで寝るほどじゃないかな。たつみんは?」
「別に」
昨日は普通に寝たし、今日は疲れるほど騒いでいない。多少いつもより精神的に疲労は感じたが。
「そっか」
幸広は頷くと、しばらくの間口を噤んだ。
俺は、ふっと幸広を見た。
こいつが喋らない、というか、大人しくしてるの珍しいな。
そう思って、ふと俺は幸広のことをあまり知らないことに思い至った。
幸広はよく喋るが、基本自分のことはあまり語らない。
俺が知っていることと言えば、学校近くに幸広名義のマンションを持っていることくらいか。
そんなことを考えていると、また幸広が声をかけてきた。
「……たつみん」
「……なんだ?」
「今日は、楽しかったよね」
「……ああ」
「また、みんなでこんなふうに遊べたらいいね」
「…………ああ」
「あー、いまたつみん、面倒くさーって思ったよね」
「…………」
「まあ、面倒だよねえ、実際」
「……お前でもそう思うのか?」
少し意外に感じて、俺は幸広の顔を見た。
幸広は、いつものように、穏やかな笑みを湛えて俺を見ていた。
いつものように……?
なぜか、なんとも言えない違和感が俺の中を通り過ぎた。
「……ふふ」
が、それは幸広が口を開いたことにより、明確な形を作る前に霧散した。
「ねえ、たつみん」
「……なんだ」
「いつか、僕の話を聞いてくれるかな?」
「……今も聞いてるだろ」
「そうじゃなくて、そうじゃない話を、さ」
「……」
幸広は目を閉じて、囁くように言った。
「……いつか、きっと……」
「…………ああ」
俺は、そう返事を返すことしかできなかった。
それっきり、目的地に着くまでの間一言も話すことはなく、ガタン、ゴトンと電車の作り出す音だけが周囲を包んでいた。
なにかが変わっていく、そんな予感がした。
いつもありがとうございます。
お知らせですが、「まわりの奴らは俺を好きすぎる」は1~2ヶ月お休みさせて頂きます。
理由はネタ切れ、ではなく話の展開検討の為、です。
ネタ自体は、ゆっきーのバック・お姫様の弟・たつみんにとっての〇〇、等あるのですが、話の持っていき方で蹴躓きました。
別のタイトルの話は定期的に投稿していきますので、お休みの間はよければそちらをお楽しみくださいませ。
ではまた、次のお話しで……。




