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ロマンティック大観覧車

意外とシリアスになりました。

 残りはひとつ、大観覧車のみとなった。


 時間も夕暮時になり、頃合いもいい。


 今回は祐史・萌田・幸広が先に乗り込み、俺と御加賀見が後になる。


 係員の誘導に従って観覧車の中に乗り込むと、俺と御加賀見は向かい合って腰を下ろした。


 窓から外を眺めると、だんだん高くなっていく視界が面白い。


 うん、意外と今回のアトラクションの中では一番いいかもしれない。


「……雅紀」


 御加賀見に名を呼ばれ、俺は顔を上げた。


 御加賀見は、外も見ないで俺を微笑みながら見ていた。


「やっと、ふたりになれましたわね」


 ああ、そう言えば。


 御加賀見のこんな穏やかな顔を見るのはずいぶん久しぶりなような気がする。


 最近は大抵祐史か幸広か萌田かが一緒のことが多かったし、祐史や幸広と一緒の時の御加賀見は大抵何かで怒っている。


「ふふ、何だか照れてしまいますわ。そんなにじっと見ないでくださいませ」


 御加賀見は口元に手をやってくすくすと笑う。


 相変わらず恐ろしいほどの美少女っぷりだ。


 別にそんなつもりはなかったんだが、と俺は再び外へと視線を向ける。


 すると、御加賀見も同じように顔を外へと向けた。


「…………綺麗ですわね」


「ああ」


 薄暗くなっていく空模様に、ライトアップされた地上。


 宝石箱を眺めているような気分だ。


「わたくし、これからも、もっとずっと、雅紀とこうして過ごしていきたいですわ」


「ああ」


「いろんなところへ行って、いろんなものを見て、いろんな体験をして、一緒に時を過ごしていきたい」


「……ああ」


「雅紀」


 名を呼ばれ、再度俺は御加賀見を見た。


 御加賀見は、今まで見た中で一番透きとおるような美しさを放っていた。


「わたくし、雅紀のことが好きですわ」


 今まで何度も向けられてきた好意の言葉。


 そのたびに、受け流してきた御加賀見の想い。


「俺は……」


「今はまだ、お返事はいりません。答えはわかりきっていますもの」


 御加賀見は苦笑した。


「変な雅紀。今まではどんなに申し上げても流してしまわれたのに。今日は真面目に返そうとされるんですもの、焦ってしまいますわ」


 そしてまた、御加賀見はつっと外に目を向けた。


「きっと、いろんな方との出会いが雅紀を変えていったのでしょうね。そして、これからも……」


「……俺が、変わる?」


「あら、気がつかれていませんの? 雅紀は変わりましたわ。今日のこのお出かけだって、中学生の頃でしたら、決して頷きはしませんでしたでしょう」


 それは確かに、と思う。


 実際、御加賀見と出かけるのもこれが初めてなのだから。


「不思議なものですわね。人と人との出会いとは。これだけたくさんいる人間の中で、心惹かれる相手と出会えるというのは、とても価値ある偶然。それにより、変わっていけること、きっと、それは良いことなのだと思いますわ。……少し、寂しい気もいたしますけれど」


 それは、雅紀には狭い世界の中にいてほしいというわたくしのわがままなのですわ、と御加賀見は呟くように言って、自嘲気味の笑みを浮かべる。


 観覧車は、いつの間にか一番上の位置まで来ていた。


「雅紀」


「……ああ」


「わたくしは、雅紀と出会えて、本当によかった」


 明かりで輝く地上の光景が、とても綺麗だった。


 微笑む御加賀見もまた、それに負けることがないくらい綺麗だと感じた。



 ああ、面倒臭い。


 だから、人と深く関わっていくことは嫌なんだ。


 だって。


 人と深く関わるということは、自身が揺さぶられるということ。


 俺は、俺のままでいたいのに。


 誰に煩わされることもなく、変わることなく、俺のままでずっと。


 だからもう。


 どうか。






 …………俺を、このままでいさせてくれ。

おかしいな、今回もラストは、はあ疲れた、で〆るつもりだったのに。

とてもじゃないけど、そんな流れになりませんでした。

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