ファンタジックラブリーメリーゴーランド
せめてアトラクション回はそのアトラクション名をサブタイトルにします。
「いや無理これ、ないから」
ソレを一目見た瞬間、全力で拒否をした。
ソレは、なんと言うか、うん、恥ずい、の一言だ。
ごてごての装飾。
乙女チックな色彩。
メリーゴーランドと言えばそんなものかもしれないが、甘く見ていた。
それに客層、低年齢層の子供かバカップルしかいやがらねえ。
うん、無理。
「えええ~、そんなあ」
「たつみーん、ここまで来て却下は天使ちゃんがかわいそうだよー?」
「いやだから、俺はここで待ってるから乗ってくればいい」
「兄さんがそうなら僕も」
「雅紀が乗らないならわたくしも待ってますわ」
「あうう、みなさんが乗らないなら、別にわたし……」
「ノンノンノンノン! 駄目だよー、一度決めたことはレッツゴー! れっきとしたアトラクションなんだから別に恥ずかしくなんかないし、それも含めて楽しまなきゃね。全員参加は決定でーす。さあ行くよー」
と、何故かより楽しげな幸広に引きずられ、強制参加させられることになった。
嫌がったらより楽しそうにするなんて、絶対こいつSだ。
萌田はそんな俺達を見て、なんだか申し訳なさそうにしている。
まあ、最初の提案時に否と言わなかった俺が悪いか。
諦めて参加するか……。
「じゃあどっちにするー。馬か馬車かー」
順番を待っている間にどちらに乗るかと幸広が質問を投げかけた。
「わ、わたしはお馬さんがいいです……!」
「あ、僕もですね」
「じゃあ、俺も」
「わたくしは、馬車の方にしようかしら」
「じゃあ僕も、馬車にしてお姫様と相席でー」
「やはり馬に致しますわ」
「ええー、お姫様それはどーゆー理由ー? いいもーん、僕ひとりで馬車にするからー」
「勝手になされば」
「え、あ、あの、幸広君、よければわたしがご一緒に……」
御加賀見と幸広のやりとりにおろおろと萌田がそう言い出した。
いやお前、一番に馬がいいと言ってただろう。
「んー、いいよ。天使ちゃんはお馬さんがいいんだよねー? 大丈夫大丈夫、僕はひとりで。でもありがとう、優しいね、天使ちゃん。どっかのお姫様と違ってー」
「え、いえ、そんな……」
「萌田さん、そんなのに優しくするとつけあがるだけですから、おやめになった方がよろしいですわ」
「はえ、あの、そんな……」
「みなさん楽しそうですね。いつもこうなんですか?」
「ふふーん、そうだよー? 弟君も混じりたいー?」
「いえ、御遠慮します」
そんなこんなで順番はあっという間にやってきて、羞恥心とのせめぎあいタイムは終了した。
やたら視線を浴びていたのは、あいつらの無駄な美貌とド阿呆なやりとりのせいだと、そう思うことにする。
……はあ、疲れた。
しかしこのサブタイトル名、ないわー。




