テーマパークに着いたけど
たつみん初っ端から疲れてます。
テーマパークへ着いた。
混んでいる。
人が腐るほどいる。
面倒くさい。
だるい。
帰りたい。
「もー、たつみん、そんなぼーとしてないで。逸れちゃうからしゃんとして」
「大丈夫ですよ、幸広さん。兄さんは僕が一瞬たりとも目を離しませんから。そう、片時も」
「あら、わたくしだって。他の人と逸れても雅紀とだけは離れませんわ。いっそふたりだけになってしまいたいくらい」
「おー、愛が重いね、たつみーん」
「み、みんなでいないと駄目ですよ? 逸れちゃ駄目ですよ? ね?」
そしてうざい。
こいつらがうざいのもそうだが、俺を囲むようにしているこいつらが集める視線もかなりうざい。
学校では慣れがあって、ここまでの視線はこなかった。
「えー、なにあれ? 芸能人?」
「ちょ、なにあの集団」
「ひとり地味なの混じってない?」
「うわー、綺麗な子だなー」
「マジやばいんだけど~」
「はー、かわいいー」
等々ひそひそと囁かれる、時には主張した大声が聞こえてくる。
が、当人たちは慣れっこなのか、御加賀見も幸広も祐史もスルーだ。
萌田はたぶん今の状況がいっぱいいっぱいなのか、まわりがまったく視界に入っていない様子。
はあ、だりい……。
俺は溜め息をついた。
「あら、雅紀お疲れですの? 休みます?」
「休憩所さがそうか、兄さん」
「ぐ、具合悪いのですか? 辰巳君」
「はっはー、これがたつみんの通常運転じゃないかー。さ、いこー、まずなにから乗るー?」
一番気遣いのない幸広が正解なのがなにか嫌だ。
「本当に大丈夫ですの? 雅紀?」
「ああ」
今までずっと電車に座ってたから、別にまだ座りたくはないし。
「じゃあ、兄さん。無理はしないでなにかあったらすぐ言ってね」
「じゃ、じゃあ最初はあまり激しくない乗り物がいいんじゃないでしょうか」
「うーん、そうだねー。全部は無理だよねー。並ばないといけないしー。……うーん、乗れてアトラクションは5~10くらいかな? みんなー、何か乗りたいのある?」
幸広が仕切るようだ。
こいつ、何気に仕切りうまいな。
「わたくしは雅紀と一緒でしたら別に」
「僕も兄さんと一緒なら何でも」
「うん、却下」
幸広はにこにこと笑顔でバッサリ切った。
「ここでーたつみんがこれとそれとと言うタイプならそれもいいけどさ、違うからー。たつみんも面倒だから勝手に決めていいからっていうタイプだから。僕が全部決めてもいいけどー、それじゃつまんないし。だから、ひとりひとつは必ずあげてねー、絶対」
こいつ、本当に俺のことよくわかってる。
……なんか嫌だ。
「さあ、なんにする?」
ゆっきーの仕切り、次回に続きます。




