待ち合わせ
集合一人目は天使ちゃんです。
待ち合わせは駅前の噴水があるところ、で決まっていた。
御加賀見は今日は家には迎えにこないそうだ。
理由のひとつには祐史にバレるのを防ぐためだとか。
うん、無駄だったな。
そしてもうひとつがその方がデートっぽいとのこと。
Date=人とあう約束。
ああ、間違いはない。
待ち合わせ時間ギリで着くように、家を出た。
祐史は隣りで鼻歌混じりだ。
「……やけに楽しそうだな」
「うん? 楽しいよ。兄さんとの久しぶりの外出だしね」
「……そうか」
「うん」
もうなにも言うまい……。
待ち合わせ場所に着くと、そこにはもう萌田が立っていた。
花柄のワンピースに淡い色合いのカーディガンを羽織っている姿だ。
「おす」
声をかけると、ばっと萌田は顔をあげた。
「あ、あ、あの、おはようございます! 辰巳君、今日はいい天気でよかった、ですね」
「ああ」
「おはようございます」
少しキョドリ気味な萌田に、祐史はさわやかな笑顔で挨拶した。
「え、は、はい、あの、おはようございます……?」
俺の横にいる知らない相手から挨拶された萌田は、説明を求めるように俺を見た。
面倒くせえ、説明すんの。
「ああ、すみません、突然。僕は雅紀の弟で辰巳祐史といいます。あの、萌田もえさんですよね? 今日は、兄がみなさんとお出かけすると聞いて、それと萌田さんの用意しているチケットが5名定員のものと言ったのを聞いて、無理についてきちゃいました。……迷惑でしたよね。ただ、僕も兄とはずいぶん一緒に遊びに行っていなかったもので、羨ましくてつい……」
と、思ってたら祐史は自分でそれをクリアした。
それと絶対腹では思ってないだろう申し訳なささを表情に出すその演技力。
おまえ役者になればいい。
「まあ、そうだったんですね……。辰巳君の弟さん、ですか?」
「祐史と呼んでください」
「はい、祐史君。ではわたしのことはもえ、と。それとあの、大丈夫です。だからそんな顔しないで、一緒に行きましょう。確かにチケットあとひとり大丈夫なんです。無駄にならなくて、かえってよかったくらい。だから、あの、ね……?」
萌田、騙されてる騙されてる。
「本当ですか、よかった。ありがとうございます、もえさん。もえさんが優しい人でよかった。これからも兄ともどもよろしくお願いします」
「は、はい……! こちらこそ」
祐史とと萌田、にこにこと笑みを交わす。
俺はいつまでこの三文芝居を見てりゃいいんですかね?
二人目はゆっきー。




