お出かけ前夜:幸広雪路の場合
ゆっきー、暗いです。
ザーと温かいシャワーを頭から浴びる。
ざっと手早く頭や身体を洗うと浴室を出て、タオルで濡れた頭を拭いながらリビングに入りテレビをつけた。
テレビから流れるのは、何てことのないいつものニュース。
事件事故は異なれど、自分と関わり合いのないものであれば、そう大差はない日常のこと。
よく冷えた炭酸水を流し込み、ふーっと一息つく。
これがあと数年もすれば、手にするのはアルコールになるんだろうか。
ぼんやりと、そう思う。
食欲は、あまりない。
食に興味もあまりない。
と言うより、あまり関心事がないというべきか。
世界は灰色に満ちている。
もしくは白黒。
色がないのだ。
別に色覚異常というわけではない。
それが、生まれ持った性質、なのか。
感情の起伏がほぼない。
熱くなることも、腹が立つことも、歓喜に湧くことも、悔しさに打ち震えることも、哀しみに囚われることも、ない。
普段の自分を知ってる人間が見たら驚く違いだろう。
あれは、自身でつくりあげたもの。
社会の中に身を置くのに、そう偽装したもう一人の自分。
警戒されないよう、常に浮かべた人好きのする笑顔。
やわらかく見せるために、語尾を延ばした口調。
感情豊かに見せるための、オーバーリアクション。
すべて、偽り。
すべて、嘘。
……どう、思うだろうか。
真実を知ったなら。
あの、無垢の塊のような、天使のような子は。
あの、真っ直ぐな瞳を持つ、お姫様のような子は。
あの、自分とは真逆の、だからこそ眩しくて仕方がない彼は。
……まだ、知られなくていい。
まだ、このままでいい。
今は、まだ。
飲み干した炭酸水のペットボトルをゴミ箱に放りこむと、テレビの電源を切った。
室内が静寂に包まれる。
明日はみんなで出かける。
今日はもう休もう。
今はまだ、このままで。
他3人と違い、ゆっきーだけは何も展開考えず書き出したらこーなりました。
ゆっきー、先が読めません。
今後もさっぱりわかりません(予告)!




