お詫び
萌田もえちゃん頑張る回。
君だけですよ、名前なんだっけと確認しないですんでるのは……。
「た、辰巳君、幸広君、御加賀見さん、せ、先日は、う、うちの兄が大変ご迷惑をおかけし、しました」
萌田はそう言って、ぺこり、と頭を下げた。
「まったくですわ」
「んー、べつにー。それにしても天使ちゃんのお兄ちゃん、おもしろいねー」
対する御加賀見と幸広の態度は真逆だ。
御加賀見はもっと言葉つくろった方がいいと思う。
幸広は寛容なのかチャラいのかどっちだ。
「でー、あの後はお兄ちゃんどー?」
「は、はい。みなさんのおかげで、わたしの話もきちんと聞いてくれるようになりました。……前よりは」
前がどんだけだ。
「それに」
萌田はちらりと俺を見た。
「お兄ちゃん、辰巳君のこと、以前が嘘のように気にいってしまって……。さすがは、辰巳君です」
「……」
「わたしの、こ、ここここここここここ恋人、と、言うのは違うとわかってくれたんですが、わかってくれたと思うのですが、ものすごく、なんだか、気にいってしまって」
「……」
「将来的には、ぜひ義弟になって、ほ、欲しいと」
「まあ、それは雅紀が萌田さんと婚姻されるのがお望みということかしら?」
御加賀見怖い。
「い、いいいいいいいええ! そんな滅相もない。た、たたたただ、お兄ちゃんは、そ、そそそそれか、わ、わたしの希望じゃ、はっ、いえ、辰巳君がどどどどどどどどどう、どうとかではなくて! わ、わわわわわわわわわたしごときでは、たたたたたたたた辰巳君には、つつつつつつ、つり、つりあわないといいいいい、言うか……」
萌田……、パニくって言葉につまるのはわかるが、逆にすごいな。
「天使ちゃん、聞き取りにくいから落ち着いてー、はい、スーハースーハー深呼吸しようかー」
「は、はい。すみません。えと、それで、兄は、まあ、その、その選択肢もひとつ、で……」
御加賀見は笑顔が怖い。
幸広はその笑顔なに考えてるかわからん。
なぜ同じ笑顔でここまで違うのか。
背筋が寒い。
「も、もしくは、あの、辰巳君、お姉さんいらっしゃる、んですよね?」
「ああ」
「実は、辰巳君のお姉さん、わたしの兄の大学の後輩だったらしく、お姉さんと結婚すれば、自動的に義弟になるな、とか」
「えー、たつみんのお姉ちゃんとー? たつみん聞いたことあるー?」
俺は首を横に振った。
聞いたことはない。
が、萌田兄は確実に姉が嫌うタイプの人間だ。
姉は感情で動くタイプの人間はNGなはず。
萌田兄はまさにそのタイプだった。
致命的に話が通じん。
結婚は無理じゃないか。
「もしくは、えと、養子に入ってもらって、本当の義兄弟に、とか」
「謹んで断る」
「で、ですよね。もちろんです。兄の戯れの言葉なので、き、気にしないでください」
「いやいや、天使ちゃんのお兄ちゃん、けっこー本気でしょー」
「両親が健在の雅紀を養子に? 本気なら正気の沙汰とは思えませんわ」
「えと、その、あの……」
萌田は涙目だ。
おかしな兄を持つと、大変だな。
少し同情してしまう。
「で、あの、その、それはそうとして」
萌田はいったん気持ちを切り替えるように俯くと、顔をあげて言った。
「この間のお詫びとして、あの、よかったら、その、テーマパーク、へ一緒に、えと、行きませんか? わたし、招待チケット、持ってるんです。5名様までの、無料パス、です。あの、ぜ……ぜひ!」
お詫びなら、逆に俺のことは放っておいてほしい……。
今後の予定:この後2話(予定)入れた後、今回のフリであるテーマパーク編(予定)に突入予定。こちらは今までのように細切れではなく複数回(予定)続ける予定。ただすべて予定なので結果は気の向くまま手がキーボードを打つがまま、の予定、です。ありゃ、予定だらけだ。




