残念な男
更新遅れてすみません。
後、すぐに戻しましたが前回投稿時違って完結にしてしまいました。その時間にご覧になった方、申し訳ありませんでした。
俺はその男をじっくりと見てみた。
長身でスラリとした体躯。
髪は清潔に整えられている。
洋服も靴も手にしている腕時計も、値が張るブランドものであろうが上品なデザインのものでセンスもいい。
容貌も、いわゆる正統派の美形だろう。
俺を睨めつけていても、それは崩れない、ノーブルな雰囲気の男。
だがしかし。
どうしてだろうか。
なんだかとてつもなく、中身が残念な予感がする……。
それはそれとして、こいつは誰だ?
と、思ったところで。
「お……お兄ちゃん……!」
萌田がひどく困ったような顔で、その男の袖をつかんだ。
あ、なんか状況わかった。
そしてまた面倒な……。
その男は、萌田に俺に対してとは異なるやわらかい笑みを浮かべて見せた。
「もえ、わかっているよ。お兄ちゃんは全部。もえはこの小僧に騙されているだけだって。だから、安心なさい。お兄ちゃんがきっちり話をつけてあげるから」
貴様の次は小僧呼ばわりか。
「だから違うのー! お兄ちゃんの勘違いなの! 騙されてなんかいないのよっ。辰巳君はいいお友達なの! 優しくて、とってもいい人なの!」
「わかってる、わかってるよ、もえ。お兄ちゃんに任せなさい」
いや確実にわかってないだろう。
「違うのー! 全然わかってないもの! お願い話を、ちゃんとわたしの話聞いてー!」
いつになく必死な萌田に萌田兄(予測)が人の話をまったく聞かない思い込みの激しいシスコンであることがわかる。
萌田、おまえも兄弟には悩まされてる奴だったんだな。
親近感わいちまうじゃないか。
しかし、この状況はなんだ。
萌田にお兄ちゃんと呼ばれたその男は、再度俺に向き直ると睨みつけてきた。
「まったく、こんなにもえを困らせるとは、本当に許しがたい奴だ」
そのセリフはそっくりそのままあんたに返す。
「どうやって、妹を誑かしたかは知らないが、貴様程度の奴に大事な妹はやれん」
いらんわ。
「今のうちに身を引くというなら、見逃してやろう。しかし、諦めないというのなら……」
「……どうなさる、というおつもりなのかしら?」
は、背後から恐ろしい殺気が。
恐る恐る振り返ると、そこには今まで生きてきた中で二番目に恐ろしい笑顔があった。
一番目はつい先日自宅で見たあの弟の笑顔だが。
ほんとこいつら怖え……。
「いきなり現れて、雅紀が萌田さんを誑かしただのわけのわからない妄言、雅紀に対して貴様だの小僧だのその程度呼ばわりの暴言……。それに、初対面だというのに、名乗りもせずに話をはじめるのはいかがなものなのかしら?」
「ああ、これは失礼。僕はもえの兄で萌田玲一と言います。ところで、あなたは……」
「わたくしは御加賀見千草と申します。ここの生徒会長を務めておりますわ。萌田さんとはクラスメイトでもありますの」
「ほう、もえの」
「そして雅紀の婚約者ですわ」
「違う」
「貴様、婚約者がいて妹にも手を出したのか!」
「だからお兄ちゃん、わたしは別に手なんか出されてないのー!」
意思の疎通がまったくできてない混戦ここに極まれり。
誰か、ヘルプ。
残念兄回、まだ続きます。




