手料理
最近誤字脱字多発。気がついたら直しますので、スルー頂く方向でよろしくお願いいたします。
それまで徒然なるままに、昔のことを思い返してはげんなりしていた俺だったが、いい加減腹が減ってきた。
そろそろ朝食の時間でおかしくないはずだが。
俺は1階まで下りてみた。
そこには。
「………………く」
「………………う」
口と胸を抑えて蹲って呻いている姉と弟の姿があった。
なんの惨状だこれは。
ふたりに水を差しだして、落ち着いたところで話を聞き出すと、非常に馬鹿げた話だった。
「つまり、美沙姉が朝食を作って、その味見をふたりでしたところ気分が悪くなった、と」
「姉さんがどうしても朝食を作ると言って聞かなくて」
「……たまにの帰省の時くらい、祐史に楽をさせてあげたくて」
「余計手間が増えるんだよ。だけど、まあ一度くらいは、と思ったんだけど」
「……ちょっとどう間違ったか……怪しいものに成り果てまして」
「そんなものを兄さんへ出すわけにもいかないので」
「……祐史と味見してみましたら、ちょっと」
「かなり気分が悪くなってしまって。兄さん、ごめんね、心配かけたよね」
「……そうですね、びっくりさせてしまってすみませんでした、雅紀」
「だからやめるよう言ったのに」
「……でも、可愛い弟達にとっておきの手料理を振る舞いたかったんです」
「それは振る舞う腕が出来てから実行して」
「………………」
と、経緯がわかってみればそんなこと。
が、姉よ。味見しただけで気分激悪って、進化してないか、駄目な方向へ。
「じゃあ、今日の朝飯は……」
「ごめん、兄さん。もうちょっとたったら作れると思うから待っててもらえる? まだちょっと……」
「いや、おまえはそのまま待ってろ」
言うと、俺は立ち上がりキッチンへ入った。
あの様子じゃどうせ凝ったもんや匂いの強いもんは食えねーだろーから、と。
俺はまずどんぶりにご飯を、その上に梅干しを細かく千切って置いた。
それからわさびを少しだけ乗せる。
海苔は軽く火で炙り、これまた細かく千切ってご飯の上に散らす。
最後に濃く淹れた緑茶を上から注ぐと……。
「ほい、お茶漬けの出来上がり。これくらいなら食えるか?」
梅とわさびですっきりするだろうしな。
「に…兄さんの手作り……。もちろん、食べるよ! 兄さんが作ったものなら例え食べた瞬間に気を失うようなものであっても必ず!」
そんなもん作らねーよ、つか作れねーよ。
そう思った俺に、弟の読心術が発揮され、祐史は軽く首を振って言った。
「いや、今朝の姉さんの料理がまさにそれだったから」
まじか。
「ま…雅紀の手作り……」
姉はふらふらと箸をとると、ずずっとお茶漬けを啜った。
「お、美味しい。そうですか、わたしは、祐史にはともかく雅紀にもかなわないのですね、料理」
いやいやいやいやいやいや、姉よ。
大体の人類は姉より料理の腕は上だと思うぞ。
普通の人間は、口に入れた瞬間気を失うような劇物は作らないから。
ふたりは、一心に俺の作ったお茶漬けを食っている。
俺も、腹が減っていたのを思い出し、食べ始める。
別に食えるってだけで特段美味いわけではないが。
別に感動されたり驚かれる要素はまったくない。
祐史にとっては俺が作ったってとこがポイントで、美沙姉にとっては普通に食えるってとこがポイントなんだろーがな。
あー、それにしても料理作ったの久々だよなー。
まあ簡単すぎるので、これを料理に入れるのなら、の話ではあるが。
なにより、普段は祐史が完璧にこなしてるので必要性まったくないし。
それに、面倒くさいし。
しかし、喜んでる様子の姉と弟を見てると、ちょっとだけ思った。
たまには、こんな日があってもいいかもな、と。
さてはて、姉はいったいどんな料理を作ったんでしょうか。
それは……、皆様のご想像におまかせします。




