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ふりかえり 2

今回も短めです。

 結論・姉の料理はいつまでたっても上手にはなりませんでした。


 姉よ、見込なしと思ったらさっさと放棄するのも良案のひとつかと。


 努力の人の姉が恨めしい。 


 努力が美徳とは限らないことも間々あるんだよこの世には。 


 料理ってのもセンスだわ、まじで。


 味覚障害でもあんのかとまじ疑ったが、姉自身自分の料理に首を傾げているところを見ると、腕の問題だったようだが。


 代わりに、祐史が料理をしだしたのは早かった。


 まずい料理を口にしたくないだけだったからだとは思うが。


 俺? 俺はなんもしなかった。


 だって面倒くさい。


 まずい料理で死ぬわけでもなし。


 気が遠くなりかけることは多々あったが。


 祐史は料理の才能があったらしい。


 当然まだ小さな子供だったので手の込んだ料理など作れはしなかったが、姉のものと比べると天地ほどの差があった。


 いっそ、努力していた分だけ本当に姉が憐れだな。


 そのころ、祐史は一次反抗期を迎えていたのか、よく「お姉ちゃんはもう」とか「お兄ちゃんはどーしてそーなの」とか言っていた気がする。


 そのうち露骨に無視してみたりとか、そのクセこっちの反応気にしてみたりとか。


 あのころは普通の弟だった。ずっとあのままだったらよかったのに、まじで。


 俺は反抗期とかなかったな、面倒くさくて。


 人によっては俺のこのやる気の無さを反抗期と言う奴はいるが、これは素だ。


 まあいい。


 そんなこんなであまり大人の手を借りずに(金銭面は別として)、子供達だけで育ってきた感がある。


 姉と俺は基本幼いころからそのままの気質で。


 祐史はなにを間違ったのか、途中から異様に俺へ執着し始め、優等生コースへ。


 そういえばそのころだった。


 御加賀見が越してきたのは。


 まわりの家が取り壊されていって、整地され、見る間に豪邸に早変わり。


 あれよあれよと周囲の景色が変わっていったあのころ。


 ドアホンが鳴り、玄関の扉を開けるとそこにはひとりの見たこともないような美少女が立っていた。


 白い肌、真っ黒な長い艶やかな黒髪は風になびかれサラサラと揺れていた。


 淡くピンクに色づく唇は笑みの形をつくり、見たこともないようなザ・お嬢様ハットを被っていた。


 真っ白なワンピースは、着る人間を間違うと、痛いことこの上ないデザインで、それがまた嫌味なく似合っていた。


 その少女は俺を見ると、頬を染めながらにっこりとほほ笑んだ。


「はじめまして、辰巳雅紀様。わたくし、御加賀見千草と申します。隣に越してまいりました。建築中は、うるさくしてしまって申し訳ございませんでしたわ。わたくしと、雅紀様は同学年になりますの。これからは、親しみを込めて雅紀と呼んでもよろしくて? そのかわり、どうかわたくしのことは千草とお呼びくださいませ。では雅紀、どうぞこれから末長く、……よろしくお願い致しますわね」


 はじめての挨拶にしてはなんか色々間違った感のある、御加賀見のその言葉を聞いた俺は。






 凍りついた芋虫が背中でマラソン大会を開いているような、背筋に嫌な悪寒が走ったのだった。

凍った芋虫=冷たい+キモい感じってことで。

以前お姫様は雅紀は誰も嫌わないと評しましたがそれは本当です。

が、苦手な相手は溢れかえっていてそのベスト1が……です。憐れ。

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