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姉と弟

弟のブラコンパワー炸裂です。

 俺と祐史は姉の指し示すまま、おとなしくソファへ坐った。


 姉は俺達とは反対側のソファへ腰かけた。


「どうしたの、姉さん。こんなあらたまって」


 にこやかにそう姉に尋ねる祐史。


 弟、空気読め。


「そうですね、なにから話したものか……。祐史、最近学校の方はどうですか」


「姉さんに心配をかけるようなことはなにもないよ」


「成績の方ははなから心配してません。友達とかの付き合いはどうですか」


「まあ、それなりに」


「雅紀の世話ばかりで、友人関係を疎かにはしていませんか」


「兄さんの世話が負担になるはずないよ。それなりに、だよ、姉さん。それに誘いにすべて乗っていたら兄さんのこととはまた別に時間なんか足りないから」


 そりゃそうだ、人気者は大変だ。 


 姉はいったんそこで弟から俺の方へ向き直ると言った。


「雅紀はどうですか。最近、変な相手にはつきまとわれてはいませんか」


 俺への問いかけはそれ限定ですか。


「まあ、別に」


「本当ですか?」


 姉に再度そう言われて、最近の出来事を頭の中で回想してみる。


 毎日アレな弟の世話を受けながら、アレなお隣さんの誘いで毎日学校へ行き、学校へつくとアレなクラスメイトが抱きついてくるのでそれを避けつつ、最近懐かれたアレなクラスメイトそ2の相手をし、いきなり現れたアレな小学校の時の同級生から一方的に誓われる……。


 考えてみればつきまとわれまくってるが、これを姉に言ってもどうしようもない気がする……。


「……まあ、別に」


 のでそうとしか答えようがない。


 そんな俺を姉はしばらく見つめていると溜め息をついた。


「……変わらずのようですね。まあいいでしょう。もし犯罪ごとまで状況が進展するようならいつでも連絡をしてください」


 姉はすべてお見通しというわけですか、なんか嫌だ。


「姉さん、それこそ心配しないで。兄さんには僕がついているんだから。なにかあったら、兄さんは僕が守るよ」


「……わたしはあなたの方が心配です、祐史」


「僕の方が?」


 ああ、姉よ。ついにそこにつっこみいれる気ですか。


 きっと、無駄なのに……。


「あなた、いつまで雅紀にべったりしているつもりですか?」


「べったり? そうかな。そんなにでもない気がするけど」


 祐史は心からそう思ってるように首を傾げた。


「だって、僕は兄さんとは学校も違うし。そもそも同じ学校でも学年違うからずっと一緒にいられるわけでもないし」


 俺はこの時、祐史が1学年下であることを深々感謝した。


 もしも双子だった場合なんか考えると、…………恐ろしすぎる。


「そういうことではなくて。……では、今は置いといてこれからの話です。進学は、就職したらどうするのですか」


「え、嫌だな姉さん。もちろん僕だってそれくらいのことは考えてるよ」


「どう考えているのです?」


「途中、離れてしまうことはしょうがないよね。でも極力兄さんの生活の助けになることはしたいと思ってるし、別の場所に住むことになったら出来るだけ顔を見に行きたいとは思ってる。どうせ兄さん、普通の会社勤めは向いてないでしょう? たぶん、在宅か出て行くにしろ極力人とは接しない仕事をきっと考えてるよね? でももし生活していけなくても大丈夫。僕が兄さんを養っていくくらいの稼ぎがある職業に就く予定だから。その職についてはまだいくつかの候補を検討中かな」


 迷うことなく一気に言い切りおった。


 ということは普段から考えていたということで。


 こいつまだ中3なのに、1つ上の兄を養うことまで想定にいれてるんかい。


 下手すると介護のことまで考えてそうだ。


 兄は弟が不気味で仕方ないです。


「……祐史、もし雅紀が結婚したらどうするのですか? それともそれは認めないつもりですか?」


「そんな。もし兄さんが本当に結婚したいというなら祝福するよ。相手の人に生活能力がなければそれを僕が補足するのになんら異存もない」


「本当ですか?」


「ただし、その結婚相手にはなによりも兄さんを第一優先に考えて、なによりも兄さんを一番に想ってもらうということが前提だけどね。もちろん、自分の親よりも将来的に生まれてくる子供よりもなによりも。当然、自分のことよりも。もしなにかあったら一番に兄さんを助ける・守る気概のある人なら、僕は喜んで」


 そんな重たい相手は俺が嫌だ……。


 姉も痛む頭を抑えるように手を当てた。


「では、あなたは自身の結婚はどう考えているのですか」


「僕? 僕は別に結婚願望特にないけど。でも、僕が兄さんを一番に考えて行動するのを許容できる人とならしてもいいかな」


 条件それだけかい。


「あ、あと僕よりの兄さんのことを思い遣ってくれる人ならなおいいけど」


 それはおまえと結婚する意味あんのか?


 姉も同じことを思ったらしい。


「祐史のことよりも雅紀を優先とは、それは、雅紀と結婚したい相手ということになるのではないのですか」


「そうとも限らないよ? だって姉さん僕達のこととても大切に思ってくれてるけど、結婚したいとは思わないよね?」


「あたりまえです。姉弟なのだから。……それにしても、雅紀のことをなによりも思って、雅紀の為の行動を許容する人物ですか……」


 あ、嫌な予感。


 姉よ、その先は言っては……。


「でしたら、祐史。その条件にぴったりくる、お隣の千草さんと結婚されたらいいでしょう」


「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?」






 俺は今まで生きてきて一番恐ろしい悪夢のような笑顔を、見ることと相成りました。

怒ると笑うって人いますよね。


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