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泣く男

前回のモブ男君の電話相手登場です。

「辰巳!」


 一日が終わり、学校を出た所でいきなりそう呼ばれたと思ったら、がばっと見知らぬ奴に抱きつかれた。


 質問。


 帰りにいきなり自分より体格のいい男に抱きつかれたらどうしますか。


 正解。

 

 蹴り飛ばす。


 反射でそいつの腹を蹴ると、吹っ飛びはしなかったがその代わり衝撃を受けたようでうずくまって呻いている。


「う…うおおお、ってぇ……っ」


「ってか、おまえ誰だよ」


 俺は当然の質問を投げかける。


 抱きつく前に挨拶くらいしろ。


 つうかどいつもこいつも外人でもあるまいし、過度なスキンシップはやめろ。


 いちど、日本人の奥ゆかしさの美点について学びなおしてこい。


 しかしそいつは、逆に俺を非難するような目をして言った。


「ひ、ひでえ。約束破ったばかりか、俺のことも覚えてねえの? ……辰巳」


「約束?」


 俺は眉をしかめてそいつの顔をよく見た。


 俺より少し背の高い、黒の短髪。 


 少し強面こわもてよりの、けっこう整った顔立ち。


 目の下にはうっすらと傷のある。


 痛みで涙目になってはいるが、なんかどっかで……。


「たつみーん、こんなところでどーしたのー?」


 考えてたら後ろからいきなりがばっと抱きつかれた。


 のでそのまま裏拳を入れる。


 が、予測をしていたのか、幸広は俺からさっと離れた。 


 ……っち、避けやがった。


「で、こいつ、誰ー? ……もしかして、喧嘩でも、売られたの?」


 瞬間、いつもぽかぽか温帯気候の幸広の声に冷気が帯びた。


 俺が意外に思って幸広を見ると、その冷気を浴びせかけられた相手は慌て弁明した。


「ち、ちげーよ。俺はただ、辰巳がこの高校にいるって聞いて会いにきただけだ。なあ、辰巳。本当に俺のこと覚えてないのか? 一緒の高校へ行こうって約束、忘れちまったのか……?」


「あ……?」


 そもそも一緒に高校へ行く、なんて約束した相手がいる覚えはまったくないが。ん……? ただこの目の下の傷。


 それにこいつの着てる制服。


 松高の制服である。


 御加賀見に邪魔をされなければ、もともと俺が進学するつもりだった高校の。


 ふと、脳裏に浮かびあがった相手。


「……もしかして、松江か?」


「辰巳!」


 ぱっと歓喜の表情を浮かべたそいつが再度抱きついてこようとしたので、俺はまた蹴りを入れた。


「ぐおっ」


 そいつは再びうずくまる。


「だから抱きついてくんなよ」


「そーだよー。たつみんに抱きつく権利があるのは僕だけなんだからー。ねー? たつみーん」


「ふざけんな。それに、ややこしくなるからおまえは話に入ってくんな」


「えー、親友の僕には遠慮はなしだよ。ねえ、マイフレンド?」


「誰が親友だ」


「親友……」


 やや存在を忘れかけてたそいつ(たぶん松江)は呆然とそうつぶやくと、いきなりぼたぼたと涙をこぼしはじめた。


「…………なぜ泣く」


「ありゃりゃー。たつみん、これ、どういう展開ー? もしかして修羅場だったりするー?」


「俺に聞くなよ……」


 今は下校時間だ。


 他校の制服を着た男子に、もともと目立つ幸広の存在。


 しかもその見知らぬ男子は人目もはばからず泣き出したときたもんだ。


 そろそろ周囲の注目が集まりだして嫌な展開になってきた。


 ああ、頭痛てぇ……。


 隣が自分の家だからさっさとそこまでいけばいいのかもしれないが、相手の動向がわかるまでは家バレは極力避けたいし、巻き込めば面倒な人間おとうとも関わらせたくはない。


 さてどうするか、と思案していたところに、幸広が提案してきた。


「ねーたつみん。僕この近くにいいところ知ってるけど移動しない? お茶もできるし、人目も気にせず話せるよ。……たつみん、目立ちたくないでしょう?」


 俺は、仕方なく幸広の提案にのった。






 ああ、面倒な予感しかしねえ……。

最初はゆっきー出す予定はなかったのに勝手にわいてきました。

ので1回で終わらなくなりました。

次回に続きます。

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