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『塔』の掃除人  作者:
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スイナの日常

朝。窓から届く太陽の光を浴び、スイナは目覚める。

簡単に身支度を整えると伯父の宿屋へ向かう。


宿屋に泊まる客の多くは商人であり、狩猟者はたまにいるかどうか、といったところだ。そのため日が昇ると早々に食事を済ませ、トニシ村へ出掛けていく。

掃除をするのはそのようにすでに部屋を出て、鍵を開けてある部屋だけだ。連泊する部屋は掃除もしない。貸している間はその人が管理する空間となるからだ。昼間でも寝ていることもあるし、盗難騒ぎがおこるのを防ぐ目的もある。

さらにどの部屋も一部屋に6人寝るのが限界といった広さで、寝具や机は貸し出しのため物は何もない。ごみをまとめて換気をし、部屋を隅々まで雑巾がけすれば掃除は終わる。

食堂にいる伯父に報告し、報酬と朝食をもらう。


にっこりとご飯をくれるのは、伯父さんの奥さん。料理上手なところに惚れこみ、伯父さんがくどきおとしたそうだ。スイナもしっかりと胃袋を捕まれている。

「7部屋分だね、おつかれさま。今日はスイナが好きな、川魚の香草焼きだよ」

そんな言葉とともに、木の盆に乗った食事と報酬の黄札3枚と橙札5枚を受けとる。札は紙で出来たこのあたりの通貨で、黄札5枚で大体食事一回分といったところだ。赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の順に、10枚ごとに色が変わっていく。それ以上は宝石でやりとりされるらしい。


「ありがとう、伯母さん」

緑札一枚で塔が村の建物内でやっている基礎学舎に一回入れる。前回は動物の習性を書いた本を半分ほど読めて、帰ってから全て紙に書き写した。そろそろもう一度行けるかもしれない。完成したら村の周辺にいる動物に関する部分を詳しくまとめなおして、狩猟者に売ることもできる。もう一度読み込んで父が研究していた薬草の分布との関連を調べてもいい。貯まってきた札を思い浮かべ、スイナはご機嫌だ。

「スイナ、ずいぶん楽しそうだね」

「うん。ご飯は美味しいし、札が貯まったから今日は学舎に行けるの!」

「そりゃよかった。でもスイナ、また日が暮れるまで居座るんじゃないよ。前は帰りに酒呑みに絡まれたんでしょ?」

「大丈夫よ、伯母さん。もうあんな失敗はしないわ。あの時はつい、きりのいいところまでって夢中になっちゃって。それに簡単に撃退できたって言ったでしょう?父さんから薬の扱いや巨獣との戦いかたを学んでたから、私、結構強いんだから」

ポケットにいつもしまってある催眠剤や巨獣用の長針をみせる。村に獣は出ないが、時々巨鳥が畑の野菜を狙いに来るため持ち歩いているのだ。


父が死んでからずいぶんと心配性になった伯母に、スイナは笑いかける。

「夜に食堂が混み出すまでには帰ってくるから」

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