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『塔』の掃除人  作者:
19/31

「塔で掃除人になろうと思う」

スイナは伯父さんと伯母さんの前でそう宣言した。


「このまま父さんのようにこの村で生きていくことも考えたんだけど。今日一日、父さんの真似をした暮らしをして、今後ずっと同じ生活を続けたいかと言うと…つまらない、と思っちゃった。薬を作るのは好きだけど、やっぱり私は、もっと色々なものが見たいの。塔ならそれがかなう」


伯父夫婦は寂しそうな顔をしつつも黙って微笑んでくれた。二人でも話し合ってくれていたのだろう。


「掃除の腕を認められるかわからないし、人数が多くてもう締め切られちゃってるかもしれない。でも明日、挑戦しに行くよ」


伯母さんがスイナを抱き締める。


「スイナちゃんはお掃除が上手だし、気配りもできるからきっと何処でも気に入られるよ。頑張ってね。募集が終わってたらちゃんと戻ってきてね。」


泣きそうな伯母さんに、スイナも抱きつく。その横で、伯父さんが髪飾りを差し出した。


「これはお前の母さんが、スイナが嫁に行くときに渡してくれって残したものだよ。嫁に行くわけではないが、旅立つという意味では同じだろう。これをつけて、頑張っておいで」


それは銀細工で作られた、綺麗な花の形をしていた。綺麗な石がいくつも飾られていて、日に当たってキラキラと輝いている。


「お前の父さんが、結婚の記念にと贈ったものだそうだ。想い出の花で、東方では『幸せを呼ぶ花』と言われているそうだ。スイナが幸せになるよう、皆が祈っているよ」

「ありがとう、伯父さん、伯母さん。頑張るね!」


スイナは胸まである髪を紐でまとめ、髪飾りをつける。世界がどこまでも広がっていく気がした。



明日。塔で働けるかもしれない。人数が締め切られていないかが心配だが、スイナの前に呼ばれた人は皆塔から出ていった。あの時点で合格者がいなかったなら、まだ大丈夫だろう。


不安がよぎる胸をなんとか落ち着かせながら家に帰り、スイナは眠った。


再び見た塔の夢で、父も笑顔で笑っていた。

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