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38 明けない夜

やっと更新できましたー

最近猛烈に慌ただしくしていましたが、

1つ大きなイベントが終わり

ちょっと余裕…できてないかもしれないけど!


お待ちいただいた皆さん

ありがとうございます!


作者今日の話好き!!


終わらない。

終わらない。

終わらない。



夜が、



――明けない。






――ガクン。


「――はっ…」


ルイは、睡魔と戦っていた。


「……くっそ。」


眠い目をこする。

目の前にはいつものパソコン。

いつもの文机に座って、

いつの間にか寝ていたらしい。





――何時だよ…?





ここ一ヶ月ほど、

愛禍(アモロス)が立て続けに発生している。

ひと月前の比ではない。


そして、

大体が二十一時から零時の間に発生する。

なんだかんだで、帰宅が明け方になり、

日の出とともに眠りにつく。


それで夜まで寝られればいいが、

この十日くらいは、昼間にも発生したりして、

寝ている暇もない。




「……流石に眠い…か…」




何も考えられない頭で呟く。

そもそも時間の感覚がなくなってきている。


寝ている時に部屋を訪ねる人がいないのは

ありがたい。

きっと松木女史あたりが差配してくれているのだろう。


食事もいつの間にか部屋の前に準備されている。




「――ここ最近愛禍(アモロス)以外と

話してないな……。」




家の人間とも、誰とも顔を合わせていない。

声も聞いていない。


たまに編集担当から着信があるが

かけなおす気力もない……。




「――でも、二カ月すっ飛ばすはマズイよなぁ…。」




そうなのだ。


ルイだって、ちゃんと社会人しているので

締め切りを守らないのがだめなことはわかる。


それなのに、

一度破ってしまい、大層怒られて、

次回は必ず!!と宣言しての今。


『流石に書かないとマズイ……』と思って

机に向かったのだが……。

この有様である。


ドサッと後ろに倒れ込む。






「――あーもう……。」


――ライナに会いたい。声が聞きたい。






そう思ってしまう時点で

ライナは自分にとって特別なのだと思う。


それをミツキに言い当てられたのが

悔しいけれども……。


天井を見つめても、

話の続きは降ってこない。

その代わりに、ライナの笑った顔ばかり思い浮かぶ。


ルイはギュッと丸まって


「――クソッ…。」


とまた呟いた。








=============







――リリン……。


導魂時計(レヴナイト・クロノ)が泣いている。


――ああ、また寝てたのか……。

赤くひかる導魂時計(レヴナイト・クロノ)

見つめて思う。





――さあ、今日も終わらない夜が始まった……と。





ひたすら愛禍(アモロス)と話す日々。


その愛禍(アモロス)たちは

ルイに同じことを語る。


『急に――』

『糸のような紋様が――』

『刻まれた途端――』



――我を忘れた、と。



明らかに《誰かの意図》が働いている。


そして、先日の黒猫と少年の声。

まず彼奴等が仕掛けていると見て間違いない。


しかも、想鎮士(ソメンター)について

知識があるということは、

十中八九、《藤凪家》の関係者である。



「――なぜ、藤凪が俺を…?」


そこだけが解けない。


ライナが関係しているのだとぼんやり想像するが、

そもそも今の時点では、

ルイとライナは雇い主と使用人としか

見えないはずだ。


ライナと藤凪家の関係は深すぎるぐらい深い。

できれば掘り出したくないほどに。


「……とにかく《陣》をミツキに見てもらうか…。」


話を聞いているうちに、

形がぼんやり見えてきたのと、

目に見える場所に刻まれた愛禍(アモロス)がいたため、

なにかわかることはないか、

ミツキに分析してもらう手はずになっている。



今日も重い体を引きずりながら、

自宅に戻る。


最期の気力を振り絞り、

なぐり書きの画像をミツキにメールする。


ルイは、そこで――力尽きた。



===========



同じ頃。



『昼夜を問わず出かけているから、

部屋には近づかないように。

貴重な睡眠を妨害しないように。』


そんなお達しが出て、早一ヶ月。


季節もすっかり、冬の様相だ。

ライナは毎日、防寒対策として

機能的な薄手のダウンジャケットをはおり

桐ケ崎家の業務に従事していた。


――あんなお達しがあると、

全然声もかけられない……。


そりゃ、大変なのは分かるから、

しっかり寝てほしい。


でも、自分の話も聞いてほしい。

先日、途中でほっぽりだしたのは、

ルイの方ではないか。




――こういうとこ、子供っぽいよなあ……。




結局自分が一番になってしまう。

あっちは十歳も上の立派なオトナなのだ。


声が聞きたい。

話したい。






――会いたい。






そんな事を考えているのが

モロバレだったのか、

ルイの部屋の前まで、

食事を持っていく役割を

松木女史から突然任された。

棚ぼたである。


ただ忙しかっただけかもしれないが……。





――起きてそうだったら、少しのぞいてもいいかな?





ライナはソワソワしながら部屋へ向かう。



最近、こちらにも全然来ていない。

久しぶりの場所から見る庭の景色に、


「すごいお庭だよなぁ…。」


とつぶやきが漏れた。




そうこうするうちに、

ルイの部屋の前に着く。


物音はしない。

帰ってきてはいるとのことだったから、

寝ているのだろう。





――そうかぁ。ねてるかぁ。





ライナはがっかりする気持ちを抑えられなかった。


「……一目だけなら、いいかな?」


オトナなら、なんて言ってみても、

私は私なのだ。

顔ぐらい見ても罰はあたらないだろう。


そんなこんなで、

盛大に言い訳をしながら

ライナは静かに襖を引く。




……あれ?

寝てない?




布団は敷いていないようだ。

どこにいるのかと見渡せば

机に突っ伏している人がいる。






――ルイだ。





いる。

そこにいる。


――生きてる?寝てる?

遠すぎてよくわからない。


ちょっとだけ。

ライナはちらっと見たら、

すぐ出ていくから、と何度も自分に言い聞かせて

そろりそろりと部屋の中に入る。


相変わらず生活感のない部屋の隅にある

唯一人の気配を感じさせる文机の上、

ルイは、パソコンに突っ伏して眠っている。




……少し痩せた?

ライナはルイの顔を覗き込む。




シャツ一枚で、着替えもしないまま

眠っているようだ。


さすがに風邪をひく、

と薄手の毛布を持ってくる。


そっと、起こさないように、

そっと、ルイの肩にかける。


ふうーと息を吐き、

話せないのは残念だったけど、

顔が見れてよかった。








そう思った時――。


「――えっ!」








ルイの顔をのぞき込んでいたライナは

急にぐいっと肩をかかえられ、


次の瞬間、畳の上に転がっていた。






そして、――ルイの胸の中にいた。






――!!!!????





声にならない声が出る。

慌てて胸の中から逃げ出そうとするが、

抱きしめられた腕から全然逃げられない。


ライナの心臓は大音量で打ち鳴らされ、

屋敷中に聞こえてしまうのではないかと思った。


そう思ったら、

身体中の血液が沸騰したみたいに熱くなって

身体がマグマのように熱かった。


ルイを見上げると、

――寝ている。

完全に寝ている。

今の状況なんて1ミリも理解しないまま、

穏やかな顔で眠っている。


ライナのことを抱き枕とでも

思っているのだろうか。




――どうしよう、どうしよう!!




起こしたいけど起こしたくない。

こんなに起きないのだから疲れているのだろう。

抱き枕扱いでも、ルイの疲れが取れるなら……。


――って、ライナの心臓が持たない!!


起こしたくないけど、

自分の身を守るためにルイを呼ぶ。


「ルイ様!ルイ様!

ちょっと…ちょっと!」


振りほどこうにも全然力が入らない。

ルイの胸の中が心地良い自分もいる。

頭の中がぐしゃぐしゃだ。


抵抗になっているのかわからない力で

ルイの胸をたたく。


「ルイ様…起きて…!」


ライナの目からは涙もあふれていた。

悲しいわけじゃなくて、

もう自分の感情の制御方法が見つからない。






――その時

ルイがゆっくりと意識を取り戻した。






「……ルイ様、離してください!」


ライナは必死に告げる。


ルイは、寝ぼけ眼で、声のする方を見た。

抱き心地がいいのか、

ライナを抱きしめる腕は、緩まない。


しかし、

ルイの焦点の合わない目が

ライナの目と合った瞬間、

パチっと見開かれた。





「うわああっ!!」





やっと状況を察したルイは

弾けるように離れた。





「――え?なんで?え?

俺……何して…?」




ぐちゃぐちゃのライナの顔を見て、

必死にルイは状況を把握しようとした。


ルイの身体から解放されて、

ライナは深呼吸した。

そうすると少し落ち着いた。



今回は、私にも落ち度がある。

謝ってとりあえず部屋を出よう。

ちょっとこのまま部屋に一緒にいるなんて

耐えられない……!!!


ライナは、まだまだ状況が飲み込めない

ルイに向かって早口で告げた。




「……す、すみません。

私が言いつけを破って、

お部屋に入ってしまいました。


寒そうだったので、毛布をかけようとしたら……

多分抱き枕とでも勘違いされたんだと

思います。


お邪魔してすみませんでした!」





そう言って――逃げた。

華麗な敵前逃亡である。


この顔のままみんなの前にも戻れない。

ライナは本館までの廊下の途中で、

何度も深呼吸して、気持ちを落ち着かせた。




============





そうは言われても……。





ルイは全く状況が読み込めていなかった。

ライナは言いたいことを言って

部屋を出ていってしまった。


机の上を見ると、

昨日の記憶の最後の断片を見つけた。


「……あのまま寝てたのか。」


ミツキにメールしたことまでは覚えている。


身体のあちこちも痛い。

そのまま机で寝てしまったのだろう。


「……ライナが気づいて毛布をかけてくれた…と。」

畳の上の毛布を見る。

自分を見るとシャツ一枚のまま、

着替えも上着も着ていない。


確かに体が冷えているようだ。


――夢の中でライナの香りがした気がした。

香水とかそういうのではなくて、

ライナの雰囲気…

想鎮律(ソーチュネート)の色というか…

うまく言い表せない。


それにすごく安心して。


その香りを捕まえた。

そこは覚えている。







だがまさか――。



「本人なんて思わないだろう……。」







ルイは両手で顔を覆い、

先ほどの自分に

飛び蹴りを食らわせたい気分になっていた。

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