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15 再会の二人

いつも読んてくださりありがとうございます!

皆様のおかげで、私続けられておりますっ!

その日は、突然やってきた。


いつものように門の横の潜戸をくぐろうとしたライナ、

いま、まさに潜戸をくぐっていたルイ。





「あ。」





二人の声が重なる。

そして、――沈黙。





あったら言いたいことが色々あったはずなのに

全く声にならない。


門をくぐったルイがライナの前に立った。



「なんだか久しぶりだな。」

「――そうですね。」



外出するからだろうか、

深海の青のような濃紺のスーツは

長身のルイによく似合っていた。

本当に憎たらしいくらい見目がいい男だ。


「お出かけですか?」


「ああ、二、三日留守にする」


カバンを持ったお付の男を従えて

さっさと歩いていこうとするルイ。




――えっ!!それだけ!?



「――ちょっ!」





しばらく行き過ぎてから立ち止まり、

ゆっくりとこちらを向く。




「――なんだ?」




ライナはハッと我に返り、


「――い、いえ。

気をつけて行ってらっしゃいませ。」


と、お辞儀をしながら何とか口にする。


「ああ、行ってくる。」


頭を下げていたライナには見えなかったが、

ルイはその時、慈しむような笑みを浮かべていた。





頭を下げたまま、しばらく――。





もう、さすがに見えなくなっただろうと

顔を上げると、そこにはもう、ルイの姿はなく、

いつもの通り道だけが夕暮れに照らされていた。






「……うれしいのは、私だけ、だよね…。」



つくん、と胸の奥が痛んだ。





==========





――何やってんだ、俺……。




久しぶりにライナの顔を見た瞬間、

その時、頭の中にあったことが

全部吹き飛んでしまった。


不意打ちとはこうも

自分がみっともないものになるのか。




ライナも

いい大人が何やってんだ、

と思っただろう。

慌てて、取り繕ったが、

あれで良かっただろうか……。





葉子から、ライナの生い立ちを聞いて以来、

ライナと、どう接するのが正解なのか、

ルイはずっと考えていた。




――ましてや、

葉子の『結婚発言』のこともある。




考えたくないが、考えなくては、

いいように丸め込まれる。


そこで、ルイはルイで、

葉子の話を一つずつ確かめていた。

葉子ほどではないが、

ルイにも動かせる耳や目はある。


かなりライナの肩を持つ葉子だから、

冷静に判断できていない情報も

あるかもしれない。




そう思い、情報を集め始めた。




――それに加えて、

最近、愛禍(アモロス)がよく発生している。

ルイは、毎日のように、

想鎮士(ソメンター)として、戦っていた。


多くは、(あるじ)を愛しすぎたがゆえの

過ちから生まれたものであり、

茶会(ティータイム)を催せば、天へと昇っていった。


サキのような悪に落ちた愛禍(アモロス)は、

ほぼいないが、

――それにしても数が多い。





昨今、モノがあふれる社会で

愛禍(アモロス)の数も増えたのか、

と言われるが、実はそうではない。





逆に、モノの数に対する比率でいくと、減っている。

使い捨てのモノ、その場しのぎのモノが増え、

本当に大切に扱うものが減ってきたのだ。




――だからこそ、




最近の愛禍(アモロス)の動向は

違和感を覚える。




「嫌な予感が、当たらなければいいが――。」




ルイは、藤凪家とともに

愛禍(アモロス)についても調べることにした。

二つに因果関係があるのかどうかは、分からないが……。





そんなこんなで、忙しくしていたら、

あの変な質問をライナにぶつけて以来、

ライナと顔を合わせていなかった。





半分は偶然に、

半分は故意に――。





ルイは、ライナから逃げて、

結論を先延ばしにしていた。




「いい大人だからって、

なんでもサクサク解決できるわけではない……よな。」




――そう、ルイは開き直っていた。







=========






ライナは怒っていた。





誰にでもなく、――自分自身に。



久しぶりに会ったルイは、いつも通りだった。

――腹が立つくらいに。


そうだった、初めて会った時も

あんなふうに顔だけは極上なのに、

なんだかそっけなくて、

掴み所がなくて、鼻持ちならないやつだった。


だから、

りんとのことや、サキや母のことがあって

自分が特別(・・)と勘違いしていただけなのだ。


無意識に胸に手をあてる。

パキンと心臓がひび割れる音が聞こえてくるようだった。





――みっともない。





相手は二十八歳の大人だ。

十八歳の小娘なんて、ただのガキだ。

そうに違いないのに、

そうじゃないって勘違いしたのは自分だ。




――恥ずかしい。




久しぶりに会って、

どんな言葉がもらえると思っていたんだろう。




『会いたかった……?』




バカじゃないのか……!!

あの人は雇い主、私は使用人。




そこは覆らないのだから。






ライナはそこまで考えて、

何かを振り払うように動かしていた手を

一瞬止めた。



特別な人なんて言わないから、

せめて、使用人、という立場から

抜けだせないだろうか…



「――あ。」


――いいことを思いついた。



これならば、ルイも無視できない。

しかも、今よりも対等ではないか?

あの(・・)異世界の話もきちんと教えてくれるのでは

ないだろうか…?




――よしっ!




無視されたら、葉子さんに告げ口しよう。

そうすれば、絶対断れないはずだ。


ライナは、ニヤける顔を何とか根性で取り繕いながら

いつもの仕事を進めていった。






=========





三日後の夜――。





ルイが時計の針がてっぺんに近い頃、帰宅すると、

松木が、慌てて駆け寄ってきた。

この冷静な松木が珍しい。



何事かと思い、


「どうした?」


と声をかけて、

失敗した――、と思った。





「ライナさんが、お待ちです。

何時まででも、またせてくださいとのことで、

ルイ様のお帰りをお待ち申し上げておりました。」



――やられた。




計画的にライナから逃げていたのに、

あっさり捕まってしまった。

詰めが甘すぎる自分に、げんなりする……


もうここまで来たら、

覚悟を決めるしかない。


そう思い、自室に向かう。

襖を開けると、

いつものセーラー服姿のライナが

こちらに背中を向けて

部屋の真ん中に正座して待っていた。


ルイは、ふうーと息を深くはいた。



「――何か用か…?」


「おかえりなさいませ、ルイ様。」



襖を開けた音で、ルイの戻りに気づき、

振り返り挨拶をするライナ。

その目は、らんらんと輝き、ルイを見つめている。





――嫌な予感しかしない。





ルイは、嫌な考えを振り払うように、

後ろへ撫でつけていた髪を左手でぐしゃぐしゃと乱し、

ライナの前にどかっとあぐらをかいて座った。

上着をその辺に放り投げ、ネクタイを外し、

シャツの首元のボタンを乱雑に外した。


そして、両手を挙げて背伸びをし、

その手をそのまま後ろについた。


威厳なんて何もない。

ただ、仕事で疲れた男の出来上がりだ。





――俺だって、疲れた。





もう気を張り詰めて、

真面目に話を聴くほどの余力がない。

今回の遠出もやることが多すぎてヘトヘトである。


それに、ライナなら……


特段小言も言うわけでもなく、

笑ってくれそうな気がしていた。




――どっちが年上だよ。




ライナに甘えている自分を見つけて、

ルイは、自分に突っ込んだ。




ライナは、ルイの仕草に、

きょとんと目を丸くしていたが、



「……いつものきちんと感はどちらへ?

一応使用人の前ですが…。」


「……俺は疲れてる」


「それは失礼しました。」



などとあっさりスルーした。

もう少し突っ込んでくれてもいいのに……




「……でも、お話を聞いていただけるのですね?」




そう言ってライナはうれしそうに笑った。



――っ…!



ルイはその笑顔に、

少しだけ心臓が揺れたのに

気づかないふりをした。


コホンと咳払いして、

ルイは言った。




「――で、話したいこととは?」




覚悟はできている、

どんな話でも受け止めれる。


ライナは満面の笑みで答えた。





「私を――弟子にしてください!」


「……ひゃえ?」




――全く受け止められなかった。

それどころか、変な声が出た。

かっこいいくせにかっこよすぎない、

むしろ、仕事はできるけどなんか抜けている

そんなルイのような人大好物です。

賛同の方是非コメントを(笑)

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