第7話 アンボセリ・サファリ
朝起きてすぐ空を見上げたら、曇り空だった。朝一番で秀峰キリマンジャロに挨拶をしたかったが残念。
午前中はずっとサファリカーで周る。わずかの間に、象、ライオン、チータが何度か見られた。一番感動的だったのは象の家族である。父親らしい一番でかいのを筆頭に5頭ほどが1家族を形成している。行儀よく一列に真っすぐゆっくり歩いていた。
ここアンボセリでは、秀峰キリマンジャロをバックにこの景色が一番映える。
それにしてもすごい埃だ。窓ガラスにあたる埃がすごい勢いで落ちている。又至る所で小さな竜巻が発生している。今は乾季であるが、この時期いつも風が有り竜巻が多いのか、それともたまたまここ数日の事なのか?
午後から、わりと近くにあるロッジに行く。目的はプール。埃だらけだったので実に有難い。レーンの張られてないフリー遊泳のプールだ。プールの後は近辺でのんびり過ごす。1時間ほどの滞在だったが庭が広く散歩にはもってこいだ。
午後からは好天に恵まれ、キリマンジャロもその美しい姿を惜しげもなく見せてくれた。
ロッジからの帰り路、キャンプ場からも観られる小高い丘の上に登ってみる。キリマンジャロは言うまでもないが、大草原の景観が素晴らしい。ビデオカメラのバッテリーが切れたのが惜しまれる。あと数分分有れば大草原のサンセットが撮れたのに。
サンセットに堪能した後、下山しようとした時、数名のメンバーに呼び止められた。日本人と見込んでの依頼だった。案内された場所で彼等の一人が指さす位置に日本人の碑があった。このように書かれていた。
”故香川美民 ここに眠る。 昭和62年1月”
質問を受けた。
"Is this Japanese?"
”Yeah.”
”What does it say?"
"Ah,... Mitami Kagawa is sleeping here."
それから、指さしながら
"This is Syowa 62. It means 1987. This means January."
"62 years ago?"
"Oh, no. it means 1987."
"Japanese Calendar?"
"Yes."
この『香川美民』という日本人は何者なんだろう?
初めて目にする名である。アンボセリ動物保護区とどのような繋がりがあるのか? 探検家とか、動物カメラマンとか?
今回のサファリツアーは2拍3日で、サファリは今日1日のみであった。前回のマサイマラ・サファリと比較するとキリンが少なく象が多いようだ。象は全て家族で比較的近くで見られた。バッファローは今回1頭だけ見られた。集団からはぐれたのかな?
(本エピソードの執筆にあたって『香川美民』さんの事を検索してみました。昭和30年に、日本で飼育すべく動物を2か月かけて船で運んだ人のようです。名前(姓)と出身県が一致しているのは偶然だろう。
香川県高松市の栗林動物園の副園長だった当時の一大イヴェントだったようです。恐らく、アンボセリ動物保護区の動物が日本へ渡ったのでしょうね。
『海をわたる動物園』(アリス館)にその時の様子が書かれているようです。
FBで肉食動物が草食動物を襲う動画がよく見られます。
肉食動物が生きていく為にやむを得ない事ですが、どうしても理屈は無視して草食動物を応援したくなります。シマウマやヌーではどうにもなりませんが、バッファローならライオンごときに負けないだろうと思うのですが大概やられますね。知能とチームワークの差だと思います。
その点、象はビクともしません。あの巨体と鼻と牙は無敵です。
マサイマラでもアンボセリでも、動物保護区では一度もハンティングは見られませんでした。FBの動画のようなシーンはそう簡単には見られないようです。
『小さな竜巻が至る所で発生している』と書きましたが、正しくは『つむじ風』です。積乱雲によって発生するのが竜巻であり、乾燥地帯で発生するのはつむじ風ですね)