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第28話 寝坊

 眼が覚めたら、6時だった。ケニヤ・モンバサへの長距離バスは6時出発である。 朝食後、その後の便はないか尋ねてみたが、ないとの事。やむを得ない。もう一泊する事にしよう。今日は1日ノンビリ過ごそう。


 キリマンジャロ方面へ、ゆっくり歩いてみる。YMCAからいくらも行かないうちに、フィットネスクラブを見つけた。設備を見せて貰ったが、大した機種は置いてないようだ。1日1.5ドル(210円)なので久しぶりに少し筋肉を動かしてみる事にした。2ドル出したが釣銭を返そうとしない。YMCAの売店でも、『今、細かいのが無いので』と言って、返そうとはしなかった。

 モシの町では釣銭を返さないのを、暗黙のルールにしているようだ。大した額ではないとは言え、あまり良い気分ではない。ヨーロッパのような計画的な釣銭ゴマカシよりは、ずっとマシではあるが。


 インストラクターらしい美人姉妹の妹は母親が帰ってくると、見つからないようにどっかへ行ってしまった。姉が指導をしてくれた。途中から30歳近い変な女性も指導に加わった。

 終わってから変な女性が、『姉妹の姉が空腹です』と言う。知った事か。使用料は払ったのだから、指導を受けたぐらいで食事はおごれない。とぼけていたら、今度は『私、喉が渇いた』と言う。図々しい女だが、『郷にいては郷に従え』か。まあドリンクぐらいは良いだろう。傍に居た小さな少女も入れて、3人分おごる事にした。


 それにしても、このフィットネスクラブは素晴らしい環境にある。キリマンジャロ山麓に近く、周囲は全て緑である。機種はろくなものが無いが、ここでは汗をかくだけで十分であろう。


 YMCAに戻ると若い日本人男子がチェックインをしている。キリマンジャロに登ると言うので、先日お世話になった登山アレンジャー(MR.SWAI)を推薦しておいたが、結局どちらにしても高いので諦めるそうである。ガイド料はともかく、入山料165USドルは日本の山しか登った事のない人にとっては『無駄な出費』に感じられても不思議ではない。日本では入山料を徴収する話は聞いた事がない。


(今現在は、富士山では4000円の入山料を徴収している)


 昼食後、YMCAに戻る途中、キリマンジャロ登山で世話になった不愛想なガイドの姿を見かけた。ガイドをしてないときは何もすることが無いのか暇そうである。その直後に今度はその時のポーターの1人にいきなり声を掛けられて、腕を取られた。


「父親が病気で、アリューシャにいるので、3000シリングくれませんか?」

と言う。


 もう少しマシな嘘が言えないものか。真面目な少年だと思っていたが。

 この話は日本のガイドブック(地球の歩き方)で目にしていた。お人よしの日本人登山客からお金を騙し取る一番多い手口だそうである。


『父親あるいは母親が病気で遠くに入院している。見舞いに行きたいので交通費を出してくれませんか?』

と言って、騙し取るそうである。


「今そこで、ガイドの姿を見かけた。彼に相談すると良い」

と言って、別れた。



(帰国してから、少し気になった。あれはほんとに騙すつもりだったのか? もしかしたら、ほんとに病気だった可能性はないか? 勿論、病気が本当だとしても、お金をあげる義務はないのであるが)


 夕方、下山中のホロンボハットで遇ったマラウイで海外青年協力隊員として活動していた日本人男子に再会した。見事、ウフルピーク登頂に成功したそうである。

 自分がモシで遇った日本人に関する限りでは、自分に次いで2人目である。おめでとう!


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