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第20話 決心、キリマンジャロ再挑戦

 お昼ごろ、少々気落ちしたままキボハウスでコーヒーを飲んで帰る途中、でかい黒人のオッサンに声を掛けられた。昨日耳にしたのと同じホテル名を口にしている。ホテルニューキャッスルで働いているそうで、キリマンジャロ登山を安価にアレンジしているとの事である。

 前回の登山で大淵・美智子カップルの利用したのと同じ、個人運営のツアーであろう。こういう類のものには注意が必要である。彼等カップルのツアーでは終了後、運営者と一部の客の間でもめ事があり警察が出動したようだった。何でも運営者が返すべき金を返さず、持ち逃げしたとカップルから聞いていた。


「キリマンジャロには登るつもりだった。しかし、天気が良くないので諦める事にした」

「天気はそんなに悪くはない。昨日下山してきた登山者の話では、山中は天気は良かったそうだ」


「……、そうなん?」

「町では雨でも、キリマンジャロでは晴れている場合もある」


「ふうん…」

「夕方、下山者に訊いてみると良いと思う。こちらでも訊いておくので、夕方にホテルへ来てくれないか」


 彼の言う事は尤もだと思った。モハメッド・アリとハナ肇をミックスしたようなでかいオッサンで、いかにも『気はやさしくて力持ち』という雰囲気を持っている。夕方までに天気を見て判断する旨告げて別れた。


 15時頃、部屋の窓から空を見上げてみた。何と晴れているではないか。ワ~オ、行けるぞ! 飛び上がりたくなった。

 キリマンジャロは変わらず白い雲に覆われているが、空全体ではかなり青空が広がっている。

 16時頃、ホテルニューキャッスルを訪ねてみた。受付で訊いてみる。


「すみません。キリマンジャロ登山をアレンジしている黒人紳士にお会いしたいんですが」

「でかい男ですか?」


「そうです」

「彼は外出中です。あなた、どこのホテルにお泊りですか?」


「YMCAです」

「お名前とルームナンバーを書いて貰って良いですか?」


 出されたメモ用紙に書いて、YMCAに戻った。

 もう躊躇する事はない。下山者の話を聞く必要もなかった。はっきりと決心した。明日出発だ。大雨なら無理だが、少々の雨なら出発しよう。

 やがて、彼が訪ねてきた。下山者の話では、キリマンジャロの天気は良いそうだ(ホントかな?)。

 決心した旨、彼に告げた。


 明朝9時にYMCAまで車で迎えに来ると言う。ツアー代金は285USドルで、その中からマラングゲートで私が165USドルを入山料として支払うようにとの説明を受けた。前回のYMCAのツアーでは全てYMCAでやっていてくれていた。


 彼の方から一つ質問があった。日本人の友達で他に登山する人は居ないか、居るなら一緒に参加してくれれば、1人あたり275USドル、265USドルと、安くなるそうだ。残念ながら、今回は自分だけだった。

 大淵・美智子カップルが275USドルと言ってたのは、彼等が2人だったからであろう。どうやらこれが個人運営ツアーの相場のようだ。

 

 話し合っているうち、大問題に気付いてしまった。TCで285USドルを支払えばOKだと思ってたら、然に非ず。TCは入山料以外は受け付けられないという。

 入山料は国に入るが、彼の取り分はブラックマーケットを利用する事で利益を得るそうである。どうやら個人運営ツアーのカラクリが解った。

 ブラックマーケットを利用できるのはキャッシュのみであるのは先刻承知の事。TCが換金できるのは Head Quarter(本店)のみなのも先刻承知である。モシのような小さな町に有るはずがない。


 双方とも頭を抱えたが、こちらからの提案で30USドルアップの315USドルで一発で折り合った。少しずつ双方が歩み寄る取引は好きではない。これでもYMCAよりはずっと安い。

 彼はどこで換金するのであろう。ザンジバルの日本大使館では、タンザニアでは一切できないと言われたがそんなはずはない。


 一度は諦めようとしたキリマンジャロ登山であったが、これで心残りは一切無くなった。果たして頂上に立てるであろうか。兎に角、悔いを残さぬよう精一杯やるだけだ。


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