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第18話 再びダルエスサラームへ

 バレリーさんと連れ立って、翌日の奴隷船の乗船券を買ってきた。2時間ぐらいは覚悟して行ったが1分で買えた。前日までに買うのであればすぐ買えるのに、ダルエスサラームでは、なんで当日券しか買えないのだろう? よく解らん国だ。

 一人で昼食後、近くの広場でムシカキを食べてみた。東アフリカの料理で、牛肉を串に刺して焼いたものである。観光客をターゲットにしていると見えて意外と高い。味はまずまずではあるが。


 ゲストハウスに戻ったら,カップルの2人が日本の味噌汁の用意をして待っていてくれた。久しぶりの日本の味、アフリカのいかなる料理よりも美味しかった。味噌汁こそ日本の味である。

 夕食は昼と同じザンジバル唯一の高級レストラン ”Buwawaji" に3人で行ってみた。味は今一つだが、意外と安いので有難い。


 翌朝、バレリーさんも入れて4人で奴隷船に乗り込んだ。所要5時間と聞いていたので、昼過ぎには到着すると思っていたがとんでもない。波がかなりあったので、大混雑の中、船は大揺れ、久しぶりに船酔いの苦しさを味わってしまった。

 美智子さんは初めからずっと気分が悪そうだった。大淵さんは8時間ずっと立ったままだ。細く見えるが意外と体力は有るのかも。バレリーさんはかなり波をかぶっていた。私は2度、吐いてしまった。


 日本では考えられない事があった。私は吐き気に耐えながら、膝を立てて座り込んでいた。1m半ぐらい前方に黒人の大男が無表情で立っていた。その時ふいに突風が吹き、彼の囚人服のようなグレイっぽいワンピースを捲り上げた。下着丸見えと思いきや、彼は何も着けていなかった。美智子さん、バレリーさんが気が付いてなければ良いが。

 はしけの分も含めて、9時間の船旅、正に奴隷になったような気分だった。自分史上、最悪の船旅だった。


 ダルエスサラームでは、前に泊まったYMCAが、予約しているにも関わらず泊めてもらえなかった。前日に確認が必要との事である。無理を承知で、バレリーさんの泊まっている YWCA に行ってみた。こちらはカップルのみ宿泊可であった。

 諦めて一人で近くのホテルを訪ねてみた。ダブルしか空いてなく一泊30ドルと、ちょっと高過ぎ。一旦 YWCA に戻ってみると、私も泊まれる事になっていた。大淵さんの機転で私を自分の父親にしたそうだ。23歳の息子の父親か! ケニヤ・マサイマラ動物保護区での27歳の息子の父親よりはマシではあるが。

 夕食は先ほど訪ねたホテルのレストランで摂ったが、船酔いがまだ残っていてノドに通らなかった。


 翌朝、バレリーさんと話していたら、 YWCA のおばさんに呼ばれた。何か話があるようだが、さては、父親でないのがバレたかな⁉ 何の事はない。朝食券をくれただけだった。やがて、カップルの2人が走ってやって来た。2人の話によると、おばさんから朝食券を受け取るとき、我々3人は朝食後すぐに日本大使館に行くようにと言われたそうだ。何でも日曜日に大使館員らしい人がやってきて、日本人の宿泊客があれば大使館に来るように告げたそうである。


 チェックアウトして、3人で行ってみる。歩いて1時間ぐらいかかる筈が5分で到着した。日本大使館で用件を訪ねてみたが、全く心当たりはないと言う。狐につままれたような気分である。YWCA に戻って、大淵さんに再度確認してもらったら、ラフな格好の日本人からのメッセージとの事だった。


 夫々の英会話力がイマイチの為、日本人X氏のメッセージが正しく伝わらなかったようだ。恐らく一人旅の日本人男子が、


『情報を得たければ日本大使館に行くと良い。自分も会えれば、情報交換がしたい』


という事だったのではないかと言う事で落ち着いた。人騒がせな話であった。

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