第16話 ザンジバル島2日目
昨夜は蚊帳が穴だらけだった。蚊が気になり、あまり眠れなかった。
今朝目覚めたら、小さな蜂のような、形ばかりの羽のある虫が数匹、蚊帳の中で走り高跳びをしている。いや助走はしていないのでトランポリンと言うべきか。よく見ると太った蚊のようだ。すぐに状況が把握できた。
穴から侵入して私の両手打ちを掻い潜った4匹程の蚊が、眠りに落ちた私の血を飛行不能になるまで吸ったのである。血ぶくれしたのだ。
再び私の怒りの両手打ちが炸裂した。彼らは全て旅立った。私の両掌は自分の血で真っ赤に染まった。
(今考えても、何故初日は問題なかったのに、2日目の蚊帳が穴だらけだったのか思い出せません。恐らく宿の都合で、部屋を代わったのではないかと思います)
植物見学ツアーに大淵さん、美智子さんと3人で参加する事にした。ガイド付きタクシーである。
私は本来、ツアーはあまり好きではないが、現地で日帰りの場合は満足できるモノもある。一人のようにじっくりとはいかないが。
現地の人しか知らない場所、数か所に案内されて説明付きで効率よく周る。英語の説明ながら、3人で補い合ってだいたいの事は理解できた。
今まで知らなかった珍しい植物の説明も受けた。果実、石鹸として使える植物、香料、染料、薬草、コーヒーetc.いろいろである。
ガイドの説明にはなかったが、樹の幹に自分の背丈よりも低い位置に黄色い大きな実が一つだけ成っているのが眼に留まった。何だ、これは? しかし、ガイドは興味無さそうだったので、訊かない事にした。
(帰国後、調べてみた。ジャックフルーツというようだ)
ガイドさんは最後に夫々の場所で採ってきた植物を、タクシーのボンネットに並べてくれた。そこで、美智子さんをモデルに記念撮影をした。
(3人で撮れば良かった)
町から少し離れた場所なので周囲の自然が美しい。近所の子供たちもみんな、明朗で愛想よく生き生きしている。その点では、キリマンジャロの麓の子供たちと似ているが、こちらの方が暮らし向きは良いのであろう。
納得のミニツアーだった。大淵さん、美智子さんも満足のようだ。
今日の植物見学ツアーですっかり2人と親しくなり、ザンジバル島ではその後も一緒に行動する事になった。パリジェンヌのバレリーさんは東海岸のツアーに参加するし、大学生の戸田さんは大型船に乗船できれば、明日はタンザニア本土に戻るようだ。
我々3人は明日は一先ずチェックアウトして、東海岸のツアーに参加するか、それとも奴隷収容の島・プリズン島に行くか決めなければならない。
穴だらけの蚊帳は美智子さんに借りた洗濯バサミで全て塞いだ。これでゆっくり眠れそう。
翌朝一番で、3人でリヴィングストンハウスを訪ねてみた。ここはタンザニア観光局のザンジバル本部で、島の情報が得られる。早速訊ねてみる。タンザニアではよくある事だが、ツアー用のミニバスの手配が上手くいってないようだ。それではと、プリズン島に1泊2日で行く事にした。再び、観光案内所に戻り手続き完了。
明日再び宿泊すべく予約の為、フラミンゴゲストハウスに立ち寄ってみる。戸田さんは大型船に乗れる事になったとみえて出かけたまま帰ってない。バレリーさんは他の人と部屋をシェアーする事になったようだ。熱望している東海岸のツアーはどうなるのだろうか? バスの手配が上手くいくと良いが。
我々は明日のトリプルの部屋の予約をして、プリズン島に向かうべくゲストハウスを後にした。
(今になってネット検索してみると、ザンジバル島には探検家リヴィングストンの縁の地etc.、歴史のある魅力的な場所がいくつもあるようだ。自分は元々、歴史的建造物や古代の遺跡よりも山や海の大自然がが好きだったので、見落としたようである。
ケニヤでもタンザニアでも自転車を見かけた記憶がない。ヤギを自転車に括りつけて運んでいるのを見た記憶はあるが、あれはどこの国だったのか? 旅人用のレンタバイシクルなどは有る筈もないが、有れば利用していたであろう)




