狐狗狸さんじゃありません!
僕は高校一年生。入学してはや数か月、ようやく学校にも慣れてきた。入学当初、友達ができるか不安だったがそんな不安はすぐになくなった。話しかけてくれた。クラスメイトの田中君が!嬉しかった。「部活何にするか決めた?」という他愛もない会話だったが忘れられない出来事だ。明日から夏休み。高校生活初めての夏休み。クラスメイトは部活、バイト、勉強など予定がぎっしり詰まっている。しかし僕は何も予定がない!クラスで話す程度の友達はいるが、わざわざ休日に遊ぶほどの関係でもない。という友達といえるか怪しいラインの人しかいない。かといって部活は入ってないし、バイトもしていない、勉強もやりたくないのでダラダラ過ごそう。
学校も終わり家に帰った。明日から夏休みだというのに楽しくなれない。気分も最悪。スマホを片手に最近気になっている『妖』や『妖怪』について調べた。コックリさんは有名だったので知っていたが、やり方までは知らなかったので調べることにした。
「コックリさんか。やってみようかな。」
刺激が欲しかった。夏休みは長いからダラダラ過ごすのはいくらなんでも飽きる。紙とペンを用意した。深呼吸をしたそのときだった。
「コックリさん。コックリさん、おいでください」
どこからともなく声が聞こえてきた。僕は怖くなり部屋から出ようとした。だが、ドアは開かない。
「パチッ」
電気が消えた。僕は急いで電気をつけなおそうとした。しかしつかない。仕方ないのでブレーカーを確認しようと扉を開けたら『見たことのない人』『見たことのない部屋』が広がっていた。後ろを振り向いても扉は消えている。
「すごい!すごい!コックリさん本当に来たよ!」
「ほんとだね。この本借りてよかったね!」
「あ、質問しなきゃ。コックリさんに失礼だよね。コックリさん、コックリさん、あなたの好きな食べ物は何ですか?」
僕は焦った。状況が理解できない。
「僕はコックリさんじゃない!違うんだ!ここがどこかもわからない!扉を開けたらここにいたんだ!僕が質問したいくらいだよ!ここはどこ?あなたたちは誰?どうして僕はここに?ねえ!答えて!」
「は?あなたがコックリさんじゃない?そんなのあるわけないじゃん。だって今出てきたじゃん。そうだよね?メイ?」
「フヨの言う通りです。あなたはコックリさんです。」
「違う違う!俺はコックリさんじゃない!」
「じゃああんたは説明できんの?自分がコックリさんじゃないってこと。」
僕は落ち着いて考えた。
「思い出した!コックリさんは漢字で書くと『狐』『狗』『狸』の漢字を合わせて狐狗狸さんと読むんです。出てくるのは漢字の通りの霊です。人型なんて出ません。失敗したのではないでしょうか?」
「私たちは失敗していない。しかもこの本には人型の霊が出るって書いてある。ねえメイ?」
「うん。」
「人型?そんなわけない!俺はスマホでちゃんと調べたんだ!」
「すまほ?なにそれ。」
「ほんとに知らないの?」
「うん。」
もしかしたら僕はとんでもないところに来てしまったのかもしれない。
「地球ってわかる?」
「ちきゅう?すまほと関係があるの?」
確信に変わった。今いるのは異世界であるということが。
「もしかしたらコックリさんはこの世界の住民じゃないのですか?」
「ちょっとメイ、何を言っているの?」
「コックリさんが異世界の住人ということにすればすべての辻褄が合うから。」
「コックリさんは霊じゃん!それだけでも辻褄は合うでしょ?」
「それはそうだけど。」
「騙されちゃだめよ、メイ。コックリさんは霊の中でも悪霊なんだからきっと私たちを騙してるの。」
「フヨ、コックリさんを見て。」
「見てるよ。」
「悪霊に見える?少なくとも私は悪霊に見えない。信じてみない?コックリさんの事。」
「メイがそこまで言うなら私も信じてみる。けどコックリさんはどうするの?このまま放置するの?」
「コックリさん、私たちの寮に来ますか?」
「寮?」
「ちょっとメイそれはやめて。」
「別に変なことをしようとは思っていません。ただあなたも住む家がないと困りますよね?」
「はい!ぜひ住ませてください。」
「分かりました。じゃあ片付けが終わったら私たちに着いてきてください。フヨ。変なことしないでね。」
「分かってるよ…」