笛吹けど踊らず
「裸の王様 VS ハーメルンの笛吹き」
果たしてどちらが勝つのか・・・
魔法使い騒動が落ち着き、国に平和が戻ったしばらく後、街でネズミ被害が報告されるようになりました。被害は次第に増え、王にとって新たな悩みの種となっていました。
そんなある日、一人の奇妙な男が街に現れました。派手な服装に細長い笛を持った不気味なその男は、街中でこう触れ回っていました。
「みなさん、ネズミ被害にお困りのようですね。報酬さえいただければ、この私が、見事に全てのネズミを退治して差し上げましょう!」
その話は王宮にも伝わり、王は男を呼びつけました。笛吹きと名乗る男は王の前で自信たっぷりに自らの能力を語り、提案を持ちかけましたが、王は断固として拒否しました。
「折角の提案だが断らせてもらう。仮にお主に頼れば、いずれお主がいなくなったとき、この国はネズミを駆除できなくなる。そんな弱い国であってはならぬ。」
すると笛吹きは笑いながら答えました。
「ならばまた私にお任せいただければ良いでしょう。」
しかし王は毅然とした態度で言い放ちました。
「それでは国としての誇りを失うことになる。自国で処理できぬ問題を抱える国を、王として受け入れるわけにはいかない。」
王は笛吹きを退けると街へ出て、民たちに呼びかけました。
「ネズミは不浄な場所を好むと聞く。街を清潔に保てば、奴らは居場所を失うだろう。さあ、みんなで徹底的に街を掃除しよう!」
王の号令で民たちは一斉に大掃除を始めました。結果、街は塵一つ落ちていないほど美しくなり、行き場を失ったネズミたちは姿を消しました。その様子を丘の上から見ていた笛吹きは、激昂します。
数日後、笛吹きは再び街に現れました。怒りに満ちた顔でこう叫びました。
「大人しく金を払っておけば良かったものを!よく聞け、この街の者ども。私はこの笛でネズミたちを自由に操れるのだ。ネズミに襲われたくなければ金を出せ!」
再び王は笛吹きを呼びつけましたが、笛吹きは王の前でも臆することなく金銭を要求しました。
「お前のような脅迫者に金を渡すために、この国の民は汗水を流しているのではない!」
王は断固として要求を拒否しました。その言葉に激怒した笛吹きは笛を吹き始めました。すると、どこからともなく大量のネズミが街に現れ、荒らし回り始めました。
民たちは恐怖に陥りましたが、王は冷静に対策を講じました。
「安心せよ、私には策がある。ネズミは汚れた場所を好む。街が美しい今、奴らは行き場を失っている。だからこれから城をわざと汚す。ネズミを城に誘き寄せるのだ。」
「城が食い荒らされてしまいます!」と驚く民に、王は笑顔で答えました。
「心配は要らぬ。全て私に任せてくれ。」
民たちは王の言葉に従い、一斉に城を汚し始めました。すると、ネズミたちは本能的に城へ向かい、街から姿を消しました。
笛吹きは計画が失敗したことに激怒し、再び街に現れました。
「お前たちが私を怒らせたこと、後悔させてやる!笛の音で子供たちを操り、この街から奪い去ってやる!」
笛吹きが笛を吹くと、子供たちは一瞬その音に惹きつけられたように見えましたが、すぐに親の元へ戻りました。笛吹きは驚愕します。
「なぜだ!?なぜ笛の力が効かない!」
王は冷静に答えました。
「この国の親たちは、何よりも子供を大切にしている。子供たちもその愛情を知り、深い絆で結ばれている。お前の術ごときで、その絆を断ち切れるはずがない。」
追い詰められた笛吹きは、最後の手段として再び笛を吹き、ネズミたちに命令しました。
「ネズミたちよ、王を襲え!」
しかし、ネズミたちは全く動こうとしませんでした。実は笛吹きが子供たちを誘拐しようとしている間、王はネズミたちに大量のチーズを与え、彼らを懐柔していたのです。
王はネズミたちに静かに語りかけていました。
「お前たちも生きるために苦労しているのだろう。だが、笛吹きのために人々を苦しめる必要はない。私と共に平和に暮らそう。」
笛吹きに雑に扱われてきたネズミたちは王の言葉に心を動かされ、完全に王に心酔していました。一方、笛吹きは言うことを聞かないネズミたちに罵声を浴びせる始末です。罵声に怒ったネズミたちはついに笛吹きを襲い出します。そして笛吹きは逃げ惑い、追い詰められた末に川に転落し、そのまま流されていきました。
笛吹きが姿を消すと、街は再び平和を取り戻しました。王は民に語りかけました。
「この街を守ったのはお前たちの力だ。助け合い、愛情と知恵で困難を乗り越えた。これからも共にこの国を守ろう!」
民は王に大きな歓声を送りました。そして、ネズミたちは王の友として、街の片隅で静かに暮らすようになりました。こうして王と民、そしてネズミたちの絆がさらに深まり、国はより一層強く、豊かに成長していきました。