平和への誓い
かつて武烈王と呼ばれた名君も、長い平和の中で心身が退廃していきます。そんな時、愚かな詐欺師との出会いをきっかけに、彼は己の在り方を問い直し、決意を新たにするのです。
昔々、東方の地に「武烈王」と呼ばれた王がいました。かつて戦乱の時代、この王は自ら先陣に立ち、幾多の敵を撃破し、地方を平定した勇ましい英雄でした。鍛え抜かれたその肉体は「ヘラクレスの再来」と称され、名声は遠く西方の国々にまで響き渡っていました。
しかし、長く続いた戦乱も終わり、国に平和が訪れると、王の心と体は次第に穏やかになり、戦士としての鋭さを失っていきました。平和な日常に慣れた王の体はたるみ、かつての雄姿は見る影もありませんでした。
そんなある日、西方の国から仕立て屋を名乗る詐欺師たちがやってきました。「透明な服を作る」と謳う彼らは、王に会わせてほしいと申し出ました。少し退屈していた王は、面白半分で彼らに会うことにしました。
案の定、詐欺師たちの話はくだらないものでした。王はその場で彼らの嘘に気づきましたが、予想外の事態が起こります。仕立てのために鏡を見た王は、そこに映る自分のだらしない体を目の当たりにし、衝撃を受けたのです。
「これがかつて武烈王と恐れられた私の姿なのか…!」
王は深く恥じ入り、一念発起しました。詐欺師に向き直ると、毅然とした態度で言いました。
「大切なことに気付かせてくれた礼として、その透明な服とやらを一着買ってやろう。だが、この国には詐欺師の居場所などない。金を持ってとっとと立ち去るが良い!」
詐欺師たちは訳も分からぬまま、大金を受け取るとそそくさと国を後にしました。
詐欺師を追い払った王は、パンツ一丁で街に繰り出しました。突然の王の登場に、街は騒然となります。王はある程度人々が集まると、堂々と宣言しました。
「見よ、このだらしない身体を!これがかつて武烈王、ヘラクレスの生き写しとまで言われた男の肉体だ。実に無様だ!」
王は声を張り上げ、続けました。
「私はかつてお主らと共に戦い、この地に平和をもたらした。この醜い姿を平和の証だと自分に言い聞かせていた。しかしそれは違う。このだらしない身体は精神の退廃の表れに他ならぬ。我々が平和を勝ち取るために流した血を思い出せ!
今の私は、この国の王に相応しくない。ここに宣言する。再び、精神と肉体を鍛え直し、王として相応しい姿を取り戻すと!戒めとして、私はこの姿を晒し続ける。皆の者、これを見て笑うがいい!だが、私は必ずこの国を率いるに相応しい身体を取り戻す!」
王はその日から、想像を絶するほどのハードトレーニングを開始しました。その姿に感銘を受けた兵士や国民たちも、次第に王と共にトレーニングを始めました。
1年後、王の肉体はかつてのように鍛え直され、国中の誰もがその姿に驚嘆しました。もう王を笑う者は一人もいませんでした。
ある日、町を歩いていた王は、子供から声をかけられました。
「王様、どうして裸なんですか?」
王は微笑みながら答えました。
「再びだらしない身体にならないよう、自らを戒めるためだよ。」
「寒くないの?」
「筋肉という分厚い鎧を着ているから、大丈夫なんだよ。」
そう言うと、王は笑いながらその場を立ち去りました。
王様の影響で、兵士や多くの国民もトレーニングを行うようになりました。その結果、兵はさらに強くなり、国民たちの絆も強まって、国は以前よりも安全で豊かになりました。
こうして、武烈王は再び「英雄」として国民たちに慕われる存在となり、平和な時代を築き上げたのです。