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再会

 秋晴れの週末、すばるは文化祭の喧騒の中を歩いていた。生徒たちの活気あふれる声と、教室から聞こえる笑い声が、教師としての彼の日常に溶け込んでいる。毎年変わらない光景。しかし、この日、すばるは予想もしなかった再会を果たすことになる。


「如月さん?」


 ふと、見覚えのある姿が目に入った。数年ぶりに見る懐かしい顔。それが誰かを認識するのに、すばるは一瞬の間を要した。


「久しぶりだね。」


 すばるが声をかけると、振り向いた女性――あゆみの目が驚きに見開かれる。


「星宮先生……!」


 彼女の表情には驚きと、どこか懐かしさが混ざっていた。


「ここで会うなんて偶然だね。」


「先生、まだこの学校にいらしたんですね。」


「うん、ずっとここで教えてるよ。」


 その何気ない会話の中で、すばるの脳裏にある記憶がよみがえってきた。


 ――あの教室での出来事。


 学園祭の実行委員長として奔走していたあゆみ。真面目で、頑張り屋で、いつも周囲の期待に応えようとする姿勢が印象的だった。だが、すべてを完璧にこなそうとする彼女は、当日、予想外のトラブルに直面し、沈んでいた。


 「どうして私がリーダーなんかやっちゃったんだろう…。みんなの期待に応えられなかった。もっとできたはずなのに…。」


 教室の片隅で落ち込む彼女を見つけたとき、すばるは少し困ったように声をかけた。


 「あれ?下校時刻過ぎてるよ。暗くなってるし、おうちの人も待ってるだろ?待ちすぎてミイラになっちゃうかもしれないよ?」


 軽い冗談だったが、あゆみは一瞬驚いた後、小さく笑った。その笑顔を見て、すばるは少し安心した。


 「そんなに落ち込まなくても良いんじゃないかな? 行動を起こさなければ失敗は起きない。逆に言えば、行動を起こすことができたっていうこと自体が、如月さんの頑張りだよ。」


 彼女は目を丸くしていた。


 「行動できたってだけですごいことだよ。何もせずに後悔するより、何かを試してみる方がよっぽど価値があると思う。」


 その言葉に、あゆみはゆっくりと頷いた。


 ――教師として、生徒の背中を押せた瞬間だった。


 そして今、数年ぶりに再会したあゆみは、あの頃と変わらない笑顔を見せていた。


「先生がいらっしゃるって知ってたら、もっと早く遊びに来ればよかったです。」


「うちのクラスが体育館で演劇をやるんだ。良かったら見ていってくれないか?」


「もちろんです!」


 あゆみの返事を聞きながら、すばるは胸の奥にわずかな安堵を覚えた。彼女はあの頃と同じように、明るく、そして強く生きている。


 教師としての自分が、少しでも彼女の人生に影響を与えられたのなら、それは誇るべきことなのかもしれない。


 だが、彼はまだ気づいていなかった。この再会が、彼自身の人生を大きく変えていくことになることに――。


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