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崩壊の兆候

 蓮が生まれてから数か月が過ぎ、外の空気に触れる機会も増えてきた。すばるは蓮を連れて散歩に出かけることが日課となり、それが彼にとって心の安らぎになっていた。


 ある日、沙月と一緒に近況報告と蓮の紹介を兼ねて、遥香とゆうきの家を訪れることになった。玄関を開けた瞬間、遥香が明るい笑顔で二人を迎えた。


「いらっしゃい!蓮くん、可愛いわね!さあ、どうぞ入って。」


 リビングに入ると、ゆうきがソファに座りながら手を振った。


「おー、ちびすけ連れてきたか!可愛いな、蓮。」


 蓮は知らない場所に少し緊張した様子だったが、すぐに遥香の優しい声に反応して笑みを浮かべた。


「すばる、なんでもできるんだよ。」


 沙月が嬉しそうに話し始めた。


「お風呂も寝かしつけも、ミルクも全部!私なんてほとんど何もしてなくて。」


 その言葉に、遥香は少し目を細めた。


「それはすごいけど、すばる、大丈夫なの?」


「いやいや、大丈夫だよ。ぼくができることをしているだけだから。」


 すばるは笑顔でそう返したが、その声には少し疲れが滲んでいた。遥香とゆうきは顔を見合わせ、小さく頷き合った。


 蓮が泣き出すと、ゆうきが立ち上がり、あやし始めた。


「おーよしよし、蓮くん。どうした、オムツか?」


 慣れた手つきで蓮を抱き上げるゆうきを見て、すばるは少し驚いた表情を浮かべた。


「ゆうき、子ども得意なんだな。」


「まあ、こう見えても妹の面倒をよく見てたからな。俺に任せておけ!」


 遥香も笑いながら、蓮のおもちゃを用意してくれた。


「赤ちゃんって、こうやって遊ぶとすぐ笑うのよね。」


 蓮が楽しそうに笑う様子に、すばるは安心したように肩の力を抜いた。


「ありがとう、助かるよ。」


「いいのよ。それより、すばる、大丈夫?最近無理してない?」


 遥香の言葉に、すばるは少し戸惑いながら首を振った。


「大丈夫だよ。沙月も頑張ってるし、ぼくがやるべきことをしてるだけだから。」


 遥香はその言葉に微かな違和感を覚えながらも、深くは追及しなかった。


 しばらくすると、すばるはリビングのソファで蓮を抱いたままうとうとし始めた。その姿を見たゆうきが小声で言った。


「よっぽど疲れてるんだな。」


「うん…でも、沙月の方が楽してる気がする。」


 遥香がぽつりとつぶやくと、ゆうきも少し考えるように頷いた。


「まあ、赤ちゃんがいる家ってどっちかが負担大きくなるよな。でも、すばるが全部抱え込むのは違う気がする。」


「だよね…。後で話してみた方がいいのかな。」


 遥香とゆうきは、すばるが無意識に自分を追い込んでいるのではないかと心配を募らせていた。


 すばるが深い眠りについている間、沙月はスマートフォンをいじりながらリラックスした表情を浮かべていた。


「すばるって、本当に頼りになるよね。」


 その言葉に、遥香の胸には小さな違和感が残ったままだった。

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