新たな日常
新しい家に引っ越し、家族を迎える準備が整い始めた頃、沙月の体調に小さな変化が見られ始めた。お腹の張りが頻繁になり、すばるも彼女の体を気遣う日々を過ごしていた。
そんなある日、夜中に沙月が急にお腹を押さえて苦しみ出した。
「痛い…すばる、お腹が…。」
沙月の顔は青ざめ、すばるは驚きで一瞬動きを止めたが、すぐに病院に電話をかけた。
「大丈夫だ、すぐに病院に行こう。」
震える声でそう言いながら、すばるは沙月を車に乗せ、急いで産院へと向かった。冷たい夜風の中、車内に漂う緊張感にすばるは手汗を握りしめるほどだった。
病院に着くと、すぐに助産師が沙月を診察室へ連れて行った。すばるは待合室でただひたすら祈るように座っていた。
「星宮さん、ご家族の方、どうぞ。」
名前を呼ばれた瞬間、すばるは立ち上がり診察室へ向かった。沙月はベッドに横たわりながらも、穏やかな表情をしていた。
「順調にお産が進んでいます。このままお産に入ります。」
医師の言葉に、すばるはほっと胸をなでおろした。沙月の手を握りしめながら、彼女に優しく声をかけた。
「大丈夫だよ、沙月。一緒に頑張ろう。」
「うん…ありがとう、すばる。」
数時間後、病室に元気な産声が響いた。
「星宮さん、元気な男の子ですよ。」
医師が微笑みながら赤ちゃんを抱えて見せた。小さな命を目の当たりにした瞬間、すばるの目には涙が浮かんだ。
「蓮…ぼくたちの子だね。」
沙月も疲れきった顔で微笑み、「蓮…これからよろしくね。」とそっと名前を口にした。
赤ちゃんを抱きしめる沙月の姿を見て、すばるは胸に温かいものを感じると同時に、背中にずっしりと責任の重みがのしかかるのを感じた。
(これからは、この子のために…ぼくが支えていかなきゃいけない。)
静かにそう誓うすばるの隣で、沙月は安堵と喜びが入り混じった表情を浮かべていた。新しい命とともに、二人は新たな日常を歩み始めるのだった。




