表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/85

届かない手

 夕方、すばると沙月はカフェの奥の席に座っていた。約束の時間を少し過ぎたころ、ゆうきと遥香が店内に現れる。二人の姿を見つけたゆうきが軽く手を振りながら近づいてきた。


「よお、待ったか?」


「ううん、大丈夫。」


 沙月が笑顔で答えると、ゆうきと遥香は向かいの席に腰を下ろした。遥香は少し真剣な表情をしており、すばるはその雰囲気にわずかに緊張を覚えた。


「で、今日は何の話?」


 ゆうきがリラックスした様子で尋ねると、すばるは深呼吸をしてから口を開いた。


「実は…沙月との間に子どもができて、これから結婚することになった。」


 その言葉に、ゆうきは目を丸くし、一方の遥香は驚きながらも冷静に二人を見つめた。


「え、マジかよ!」


 ゆうきが声を上げると、遥香が手で制するように合図をする。


「落ち着いて、ゆうき。やっぱりそうだったのね。いつから分かってたの?」


 遥香の問いに、沙月が少し躊躇しながら答えた。


「最初は変だなと思って…検査をしたのはもっと前だけど。」


「沙月?いつすばるに話したの?」


「…安定期に入ったころだから、少し前。」


 その言葉に、遥香の眉がわずかに動く。


「あの時、私がすばるには早く伝えるように言ったの、覚えてる?」


 沙月は俯き、小さな声で「うん…」と答える。


「どうしてそれなのに、すぐに言わなかったの?」


 遥香の言葉に、沙月は顔を上げると、少し震える声で答えた。


「すばるが忙しいのを知ってたし、迷惑をかけたくなかったの。それに、どう受け止められるか不安で…。」


 遥香は少し息をつきながら言葉を選んだ。


「そんなにすばるを信用していなかったってこと?すばるは責任を感じて、人生までかけてくれているんだから、もっと誠実に向き合うべきじゃないの。」


 その言葉に沙月は沈黙し、肩を落とした。ゆうきが軽く笑って場を和ませるように口を開く。


「まあまあ、遥香。そんなに追い詰めんなって。沙月もちゃんと反省してるみたいだしさ。」


「それは分かってるけど。」


 遥香は短く答え、再び視線を沙月に向けたが、それ以上は何も言わなかった。


「とりあえず、俺たちもできる限りサポートするからさ。なんか困ったことがあったら遠慮なく言えよ。」


 ゆうきがニカッと笑いながら言うと、すばるは少しだけ表情を緩めた。


「ありがとう。でも、できる限りのことは自分でなんとかするよ。周りに迷惑をかけるわけにはいかない。」


 すばるのその言葉に、ゆうきは少し驚いたように眉を上げた。


「まあ、そういうとこは相変わらず真面目だな。でもな、たまには頼るのも悪くないぜ。」


 すばるは小さく頷いたものの、その心の中では別の感情が渦巻いていた。


(今回の出来事は僕がまいた種だ。自分でうまくしなくちゃいけない。周りに迷惑ばかりかけていられない。)


 そう強く心に誓いながら、すばるは手元のカップをじっと見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
是非こちらもご覧ください!

砕けた昴登場人物

「砕けた昴」と「この道を歩む」は、関わり合う物語です。

それぞれのキャラクターが織り成すストーリーが、互いに新たな視点を与えてくれます。

それぞれの視点で紡がれるストーリーを、ぜひご覧ください!

この道を歩む

心がほどける時間

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ