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再会の予感と過去の影

約束の日、すばるは指定されたカフェに向かった。穏やかな音楽が流れる店内で、先に到着していた遥香とゆうきが手を振る。すばるは心の動揺を隠しながら、二人のテーブルに向かった。




「すばるくん、こっち。」




 席に着くと、ゆうきが深刻な表情で話し始めた。




「沙月、ちょっとやばいかもな。話を聞いていて、俺たちだけじゃ無理な気がする。」




 遥香が続けた。




「昨日、沙月と食事したんだけど……腕にたくさん傷があって……。」




 すばるは目を見開き、胸が締め付けられる感覚に襲われた。沙月の腕に無数の傷があるという遥香の言葉が、耳に痛いほど響く。




「傷……?」




 遥香が頷く。




「それだけじゃないの。沙月、最近職場の同僚と……その、あまり良くない関係にあるみたい。話を聞く限り、彼女が本当に求めてるわけじゃないのに、ただ流されてる感じなの。まるで、自分が必要とされてるって思い込むためだけに……。」




 その言葉に、すばるの中で大学時代の沙月の姿が鮮明に蘇った。沙月が自分の存在意義を感じるために、すばるへ過剰に愛情を注ぎ込んでいた頃の記憶だ。彼女が夢を諦めたのも、その時期だった。




 


(あの頃の沙月も、きっと同じだったんだ……。)




 すばるは遥香の話を聞きながら、大学時代の記憶を反芻していた。




 沙月がすばるのアパートに通い詰め、夜な夜な彼を求め続けた日々。すばるが彼女に応えることで、ふたりの間に一時的な安らぎが生まれていたが、それが決して「解決」ではなかったことに気づいていた。




(あの時、沙月はいつも言っていた。「私だけがすばるを満足させられるんだよね?」って……。)




 その一言に隠されていたのは、沙月の強烈な不安と、自分を保つための必死な努力だった。すばるがその不安に応えるために過剰な時間を費やし、成績を落としてしまったのも事実だ。




(結局、ぼくたちの関係が沙月を追い詰めていたんだ。)




 すばるの胸に後悔の念が広がる。彼女が夢を諦めたのは、すばるに全てを注いでしまったからではないのか。あの頃の「甘え合い」の関係が、沙月をさらに弱くしてしまったのではないか。




 


 遥香の声で、すばるは我に返る。




「すばるくん、どうする?沙月に会ってみる?」




 隣でゆうきも静かに頷いた。




「お前に負担をかけたくはないけど……俺らだけじゃ無理だと思う。すばる、お前が一番近かったんだから。」




 すばるは深く息をつき、力強く頷いた。




「……わかったよ。もう一度、沙月と向き合ってみる。」




 その言葉に、遥香はほっとした表情を浮かべた。




「ありがとう……。沙月、きっと救われると思う。」




 


 その夜、すばるは一人でアパートのベッドに座り、暗闇の中で考え込んでいた。沙月が自分にとってどれほど大きな存在だったか、そして自分が彼女にどれだけ依存されていたかを再認識する。




(ぼくがあの時、もっと大人でいられたら、沙月にあんな負担をかけなくて済んだのかもしれない。でも、今はもう過去を戻せない。だから、今度こそ……。)




 すばるは小さくつぶやいた。




「沙月、また君に何かしてあげられるだろうか……。」

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