急転直下
高校教師としての生活が始まってから1年。星宮すばるは、授業だけでなく部活動の顧問としても充実した日々を送っていた。バスケットボール部を担当することになり、生徒たちと汗を流す毎日が続いていた。
ある日、体育館ではバスケ部の練習試合が行われていた。部員たちが熱気に満ちた声を上げながら試合に臨む姿を見守るすばるは、時折アドバイスを飛ばす。
「今のプレー、いいぞ!でも次はもっと冷静にパスコースを見てみよう!」
タイムアウト中、生徒たちが汗だくで駆け寄ってきた。
「先生!次の作戦、どうします?」
「リバウンドの意識をもっと高めよう。それから、ボールを持ったときは焦らずに周りをよく見て。」
生徒たちは頷きながら再びコートへ向かい、試合が再開された。そんな彼らの姿を見て、すばるの胸には深い感動が広がった。
(この子たちが成長していくのを間近で見られる。それがこんなに嬉しいなんて思わなかった。)
試合後、生徒たちが笑顔で集まり「先生、次もお願いします!」と声を揃えた。その言葉に、すばるは自分の選んだ道が間違っていなかったと確信する。
文化祭の準備期間には、生徒たちが自ら企画を立て、主体的に行動する姿が見られた。すばるの「自分たちで考え、行動する力を伸ばす」という教育方針が徐々に成果を上げていた。
「星宮先生のクラス、本当に団結力がありますね。」
同僚教師の言葉に、すばるは謙虚に笑った。
「いえ、生徒たちが自分で頑張ってくれているだけです。」
教室では、ある生徒が声を上げた。
「先生!文化祭の企画、大成功しましたよ!ありがとう!」
その笑顔に、すばるは心の中で感謝を返した。
そんな充実した日々の中、すばるは自分が教師としての責任を全うできていることに満足感を覚え始めていた。だが、そんな矢先に、スマートフォンが震えた。
「ゆうき?どうしたんだ?」
電話越しのゆうきの声は、いつもの明るさとは少し違った。
「すばる、ちょっと話がある。さっき遥香から沙月の話を聞いたんだけど……。」
その名前を聞いた瞬間、すばるの胸がざわめいた。
「沙月がどうした?」
「詳しくは直接話した方がいいかもな。ただ、あんまり良くない感じらしい。」
すばるは沈黙したまま、ゆうきの言葉を待った。
「お前、別れた相手のことだから無理にとは言わない。でも、あいつのことを知らないのはお前だけってのもさ……少しショックかもな、って思ってさ。」
「わかった。話を聞いてみるよ。」
電話を切った後、すばるは窓の外を見つめた。充実した教師生活を送る中で、過去からの影が再び自分に迫ってきたような感覚が彼を包み込んでいた。




