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それぞれの道

 真夏の太陽が降り注ぐ中、キャンパスは夏休みにもかかわらず、受験生たちや就活生で賑わっていた。星宮すばるは図書館の自習室に座り、手元の教採一次試験の問題集に集中していた。汗が額ににじむが、それに気づく暇もないほど問題に没頭している。


「これ、難しいな……。」


 問題を解く手が止まり、すばるは軽くため息をついた。隣で勉強していた遥香が、静かに顔を上げる。


「すばるくん、休憩しない?お茶でも買ってこようか?」


「ありがとう。でも、あと少しやってからにするよ。ここで踏ん張らないと、次がないからね。」


 すばるの返事に遥香は微笑み、再び自分のノートに目を落とした。二人は教採一次試験が間近に迫っているため、毎日のように図書館に通い詰めている。


 一方、沙月は大学のキャリアセンターで相談を終えたばかりだった。手元には塾や予備校の求人情報が載った資料が数枚。外に出ると、熱風が顔に当たり、思わず立ち止まる。


「こんな暑い日に、就活なんてやってられないよ……。」


 ぼそりと呟いた沙月は、近くのカフェに入って席を確保した。冷たいドリンクを一口飲み、就活資料に目を通す。


(教育学部だから塾講師っていうのは、自然な流れかもしれない。でも、これが自分のやりたいことなのか、よく分からない。)


 資料を見つめる沙月の表情には曇りが浮かんでいた。ふとスマホを見ると、すばるからのメッセージが届いていた。


「試験の準備で忙しいけど、元気にしてる?」


 それを見た沙月は、軽く微笑む。


「元気だよ。そっちは頑張ってる?」


 そう返事を打ちながら、沙月の心には少しの孤独感が広がっていた。


 その日の夕方、すばる、遥香、ゆうきの3人がキャンパスの木陰で待ち合わせをしていた。


「おい、そろそろ行こうぜ。せっかくの夏だし、リフレッシュも必要だろ?」


 ゆうきが大きな声で呼びかける。試験準備で張り詰めた日々を過ごしていた3人は、ささやかな息抜きとして近くのファミレスで夕食を取る予定だった。


 席について話題が次々と飛び交う中、ふと沙月の話が出る。


「沙月、どうしてるかな?」


 遥香が言う。


「就活でいろいろ大変みたいだよ。たまにメッセージくれるけど、あんまり元気がなさそうでさ。」


 すばるは答えた。


「そっか……沙月、大学ではみんなと一緒に昼ご飯食べたりするけど、それ以外はどこか遠くにいる感じがするよね。」


 遥香が少し寂しそうに言うと、ゆうきがフォローするように言葉を挟む。


「まあ、あいつはあいつでちゃんとやるだろ。塾講師とか、結構向いてると思うけどな。意外と面倒見いいし。」


「そうだね。でも、彼女が本当にやりたいことを見つけられるといいんだけど。」


 すばるは静かに呟いた。


 その夜、すばるは沙月に電話をかけた。


「もしもし、すばるくん?どうしたの?」


「いや、特に用事があったわけじゃないけど、声が聞きたいなって。」


 沙月の声は少し元気がないように聞こえた。


「就活、うまくいってる?」


「まあまあ、って感じかな。でも、すばるくんたちみたいに目標が明確じゃないから、正直焦ってる。」


「沙月は沙月らしくやればいいよ。ぼくもまだ夢に向かって頑張ってる途中だしさ。」


 その言葉に、沙月は小さく笑った。


「ありがとう。でも、すばるくんは自分の夢があるから、羨ましいよ。」


 電話を切った後、すばるはしばらく空を見上げていた。夜空に輝く星が彼の目に映る。


(沙月も、いつか自分の星を見つけられるといいな。)


 心の中でそう願いながら、すばるは再び試験の準備に戻った。

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