乖離
初日の緊張が少しずつほぐれていく中、星宮すばるは熱意を胸に授業に取り組み始めた。生徒たちの前に立つたびに、教師としての責任を感じながらも、彼らに伝えたいことが山ほどある自分に気づいていた。
「えっと、ここがポイントだから、しっかり覚えておこう。これができれば、次のステップが楽になるからね」
教壇の前に立つすばるは、黒板に次々と文字を書き込みながら、丁寧に説明を続ける。目を輝かせて話すその姿に、生徒たちは最初こそ興味を示していた。しかし、授業が進むにつれ、いくつかの机に肘をつき始める生徒たちの姿が目に入った。
「……あれ?」
(手ごたえを感じられない。)
すばるは一瞬動揺しながらも、平静を装った。話し方が早すぎたのか、それとも内容が難しかったのか。何が原因かはわからなかったが、彼の心には小さな不安が芽生えた。
休み時間、教室で授業の感想を聞こうと生徒たちに近づいたすばるだったが、返ってきたのはそっけない言葉だった。
「うん、まあ、普通……」 「ちょっと内容が難しかったかも」
その言葉に、すばるは小さく肩を落とした。授業を熱心に行えば生徒たちも同じ熱意で応えてくれると思っていた。熱意を持って伝えたことは必ず届くと信じていた。しかし、その期待は少しずつ裏切られていくように感じられた。
放課後、指導担当の松尾先生からのフィードバックを受けたすばるは、自分の授業に改善の余地があることを実感していた。
「星宮、今日は頑張ったな。だがな、授業はただ教えるだけじゃないんだ。生徒たちが主体的に動くための仕掛けを作ることも重要だ。お前が一生懸命教えようとしているのは伝わるが、生徒たちが学びたいと思う環境をどう作るか、そこを考える必要がある」
「……生徒が主体的に動く、か」
その言葉が、すばるの頭の中にこびりついた。




