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二人だけの世界

 星宮すばると白石沙月が恋人同士になってから数週間が経った。


 二人の距離は一層近づき、大学内でも自然と一緒にいる時間が増えていった。


 キャンパスのあちこちで顔を合わせるたびに、二人は微笑みを交わし合い、学生たちの間ではすでに「お似合いのカップル」として知られるようになっていた。


 授業が終わると、すばると沙月、そして友人の遥香とゆうきの4人で行動することが多かった。しかし、大学を出た後はいつの間にかすばると沙月の二人だけになるのが常だった。


 ある日の昼休み、4人で学食のいつものテーブルに座っていた時のこと。遥香が楽しそうに声を上げた。


「ねえ、みんな!今日は講義が終わったらラーメン行こうよ!この前、新しいお店がオープンしたらしいよ!」


「いいな、それ。俺、超乗り気!」

 ゆうきが即答する。


 沙月がすばるの顔をちらりと見た。「どうする、すばる?」


 すばるは少し考え込むように眉を寄せた。

「今日は……ちょっと課題を進めたいから遠慮しておくよ。」


 その言葉に、沙月も「じゃあ私も遠慮しようかな」と続ける。


 遥香は目を細めながらすばると沙月を見比べて、わざとらしくため息をついた。

「あれー?二人だけでどっか行くつもりじゃないでしょうね?」


「そんなんじゃないよ!」

 すばるは慌てて否定するが、その反応を見たゆうきが肩をすくめながら笑った。


「まあまあ、いちいち否定しなくてもいいって。どうせ二人でいたいんだろ?最近、そんな感じばっかりだしな。」


 ゆうきの言葉に、すばるは何も言い返せなかった。


 夕方、ラーメン屋へ向かう遥香とゆうきは、二人の背中を見送る形になった。

「沙月もすばるも、いつの間にあんなにくっつくようになったんだろうね。」

 遥香が苦笑しながらそう呟くと、ゆうきは軽くため息をついた。


「今まで、あいつが誰かとあんなにべったりしてるの、見たことなかったんだけどな。」


「さみしんぼちゃんしてる?」

 遥香がからかうように言うと、ゆうきは肩をすくめた。


「おれら、置いてけぼり組ってとこだな。」


 遥香はその言葉にくすっと笑ったが、どこか寂しさを感じていた。沙月ともこれほど距離を感じたことはなかったのに、と思う。



 一方、沙月とすばるは二人だけの時間を過ごすようになっていった。二人きりになると、すばるは沙月の笑顔に安心感を覚え、沙月はすばるの優しさに深く癒されるようだった。


 しかし、二人の関係が深まるにつれて、他の人との関わりは次第に薄れていった。ある日、講義の時間になっても二人はキャンパスを出て、電車に乗り遊園地へと向かった。


「本当にサボっちゃってよかったのかな……」

 すばるが申し訳なさそうに呟くと、沙月はにっこりと笑って答えた。


「たまにはいいでしょ?それに、星宮くんと一緒にいる方が楽しいもん。」


 その一言に、すばるの胸はまた大きく波打った。沙月の存在は、すばるにとってかけがえのないものとなっていた。



 しかし、その依存は次第に二人を追い詰めるものとなっていった。




 ある夜、すばるのスマートフォンにグループチャットの通知が届いた。画面には「学園祭、一緒に回ろうよ!」という遥香のメッセージが表示されていた。


「ゆうきと遥香、もう何回も誘ってくれてるよな……」

 すばるはそう思いつつも、既読をつけずに通知をスワイプで消した。


 その時、沙月が後ろから声をかける。

「誰から?」


「ゆうきと遥香のグループチャット。明日の学園祭、一緒に回ろうってさ。」

 すばるは答えながら、少し気まずそうに視線を逸らした。


「ふーん。でも、明日はデートでしょ?私たちだけでゆっくり過ごしたいな。」

 沙月の言葉は軽やかだったが、その視線には何かを求めるような色が混じっていた。


「……そうだね。明日は沙月と一緒にいるよ。」

 すばるはスマートフォンをテーブルに伏せながら答えた。


 沙月は満足げに微笑み、すばるの隣に座る。その瞬間、すばるの胸に小さな罪悪感がよぎったが、沙月の笑顔がそれを打ち消してしまった。


 沙月の言葉に、すばるは少し考え込んだが、最終的にスマートフォンをテーブルに置いた。


「うん、そうだね。明日は沙月と一緒にいたい。」


 沙月は満足げに微笑み、すばるの隣に座った。すばるは小さな罪悪感を抱えながらも、沙月の笑顔を見てその感情を押し殺した。



 その後二人は互いの存在を確かめ合うように激しく身体を重ねた。背徳感や罪悪感に蓋をするように、二人は互いに溺れていった。


 こうして、すばると沙月の関係は深まる一方で、周囲との距離はますます広がっていった。

 それは純粋な愛情の形ではなく、互いの不安や孤独を埋めるための依存とも言えた。

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